映画・動画制作で生成AIを使うときの著作権チェックリスト
更新日:9月19日
生成AIを映画や動画制作で使うときは、「AIで作ったものだから使える」「商用利用可だから大丈夫」だけでは判断できません。
確認したいのは、大きく分けると、
利用したAIサービスの規約
既存作品との類似
元画像・元音源など入力素材の権利
AI生成物そのものの著作権
実在人物・ロゴ・キャラクターなど第三者の権利
外注や共同制作での権利関係
映画本編・宣伝・配信・商品化まで含めた利用範囲
です。
ただし、毎回すべてを同じ重さで確認する必要はありません。
本編の遠景として一瞬使う背景画像と、映画ポスターのメインビジュアルでは重要度が違います。
何を生成したのか、どこで使うのか、どのくらい目立つのか。
この3点を見ながら、必要な確認をしていくと整理しやすくなります。
この記事で分かること
映画・動画制作で生成AIを使うとき何を確認するのか
AI画像・音楽・脚本で共通するチェックポイント
利用規約はどこを見るのか
既存作品に似ていたらどうするのか
他人の写真や素材をAIへ入力するときの注意点
AI生成物の著作権は誰にあるのか
外注先が生成AIを使った場合どう整理するのか
本編・ポスター・SNS・グッズで確認内容は変わるのか
まず、「何をAIで作ったのか」を整理する
生成AIといっても、映画制作では使い方がかなり違います。
たとえば、
背景画像
コンセプトアート
キャラクター
タイトルロゴ
映画ポスター
YouTubeサムネイル
劇伴・BGM
歌詞
脚本
ナレーション原稿
宣伝文
実写素材の加工
などがあります。
まず、何をAIで作ったのかをはっきりさせます。
そのうえで、どこで使うのかを見ます。
同じAI画像でも、
編集時の参考資料だけに使う
本編の背景に使う
作品のメインキャラクターに使う
映画ポスターに大きく使う
グッズとして販売する
では、確認したい内容が変わります。
1.AIサービスの利用規約を確認する
最初に見るのは、利用したAIサービスの規約です。
最低限確認したいのは、
商用利用できるか
映画・動画に使えるか
広告・宣伝に使えるか
SNSに掲載できるか
編集・加工できるか
第三者へ納品できるか
商品化できるか
生成物についてどのような権利が定められているか
プランによって条件が違わないか
です。
特に注意したいのが、「商用利用可」の一言だけで終わらせないことです。
映画では、
映画祭
劇場公開
配信
YouTube
SNS
広告
DVD・Blu-ray
グッズ
などへ展開することがあります。
本編で使えても、広告・商品化について別の条件がある場合もあります。
また、無料プランと有料プランで条件が違うサービスもあります。
重要な素材なら、
使用したサービス
プラン
生成日
その時点の利用規約
を残しておくと後から確認しやすくなります。
2.既存作品に似すぎていないかを見る
AI生成物を使うときに、実務上かなり重要なのが既存作品との類似です。
たとえば、
有名キャラクターに似た人物
映画ポスターに似た構図
ゲームの背景に似た街
既存曲に似たメロディ
有名作品のセリフに近い文章
特定作家の作品を強く再現した画像
などです。
単に、
ホラー風
SF風
ゴシック風
昭和風
ジャズ風
刑事ドラマ風
といった一般的な雰囲気が似ているだけで、直ちに著作権侵害になるわけではありません。
問題になるのは、既存作品の具体的な表現にかなり近くなっていないかです。
生成結果を見て、既存作品の具体的な表現にかなり近い部分があるなら、そのまま使わず、
再生成する
構図を変える
デザインを変える
メロディを作り直す
セリフを書き直す
などで離す方が実務的です。
3.特定作品を直接参考にしていないか確認する
生成結果だけでなく、生成した過程も見ます。
たとえば、
〇〇という映画のポスターと同じ構図で
〇〇というキャラクターみたいに
〇〇という曲のようなメロディで
といった形で、特定作品を直接指定していた場合。
生成物がその作品に近くなる可能性も高くなります。
欲しい雰囲気があるなら、
時代
色
光
構図
テンポ
楽器
建築様式
衣装
世界観
などへ分解して指示した方が、特定作品から離しやすくなります。
「参考にした」こと自体だけで直ちに問題になるわけではありません。
ただし、具体的な表現まで再現する方向へ進んでいないかを確認します。
4.他人の写真・画像・音源をAIへ入力するなら元素材を見る
AIで新しく生成する場合と、既存素材をAIへ入力して加工する場合は分けて考えます。
たとえば、
SNSの写真をAI加工する
他人が撮った風景写真を背景にする
素材サイトの画像をAIへ入力する
既存曲をAIで編曲する
他人の文章をAIで書き換える
といった場合です。
このときは、AIへ入れた後の生成物だけでなく、元素材を使ってよいかを先に確認します。
見るのは、
元素材を利用できるか
AIへ入力してよいか
加工してよいか
加工後のものを商用利用できるか
です。
特に素材サイトでは、通常の加工はOKでも、生成AIへの入力は別ルールということがあります。
「商用利用可」だけで判断しない方がよいでしょう。
5.AI生成物そのものに著作権があるかを見る
AI生成物だから、自動的に著作権が発生するわけではありません。
AI生成物に著作権が認められるかは、人に創作意図があり、完成した表現に人の創作的な寄与が認められるかによって考えます。
たとえば、
夜の街の画像を作って
と入力して、そのまま採用した場合。
具体的な構図、色、建物などの多くをAIが決めていれば、人の著作権がどこまで認められるかは慎重に考える必要があります。
一方で、
構図を具体的に設計する
複数案から素材を組み合わせる
何度も創作的な修正を加える
Photoshopなどで描き直す
音楽を人が編曲・編集する
AIの文章を大きく書き直す
など、人が完成した表現へ創作的に関わっていれば、その人が加えた表現について著作権が認められる可能性があります。
ただし、
著作権があるか
と、
映画で使ってよいか
は別の問題です。
著作権が認められないAI生成物でも、利用規約上使える場合はあります。
6.実在人物・ロゴ・キャラクターが入っていないか見る
AI生成画像には、意図していなくても、
実在人物に似た顔
有名人に似た人物
既存キャラクターに似たデザイン
企業ロゴに似たマーク
実在商品のようなパッケージ
有名建築物に似た建物
などが出ることがあります。
この場合は著作権だけでなく、
肖像権
パブリシティ権
商標
名誉やプライバシー
誤認を招く表現
なども関係することがあります。
背景に一瞬映る小さなものと、ポスター中央に大きく表示されるものでは、制作上の重要度も違います。
必要のないものなら、消す・描き直す・再生成する方が簡単です。
7.本編と宣伝物は分けて考える
同じAI生成物でも、どこで使うかによって確認の重さは変わります。
たとえば、本編の遠景として一瞬映る背景画像。
一方で、
映画ポスター
サムネイル
キービジュアル
タイトルロゴ
メインキャラクター
は、作品の顔として長く使われます。
さらに、
グッズ
商品パッケージ
続編
広告
へ広がることもあります。
そのため、重要なビジュアルほど、
利用規約
類似
商標
著作権
元データ
将来の利用範囲
まで丁寧に確認する意味があります。
全部を同じ厳しさで見るのではなく、その素材が作品の中でどれくらい重要なのかも考える。
これが実務では大切です。
8.外注先が生成AIを使う場合は契約で整理する
映画制作では、自分たちが直接AIを使うとは限りません。
たとえば、
イラストレーター
デザイナー
作曲家
編集者
脚本家
などが生成AIを使うことがあります。
制作側としては、
生成AIを使ったか
どのAIサービスを使ったか
どの部分に使ったか
他人の素材を入力していないか
既存作品を直接参考にしていないか
商用利用できる条件だったか
完成物の著作権をどうするか
利用範囲をどうするか
を確認しておくと整理しやすくなります。
制作費を支払っただけで、著作権が自動的に制作側へ移るわけではありません。
必要に応じて、
著作権譲渡
利用許諾
改変
SNS利用
配信
広告
商品化
続編利用
などを契約で決めます。
9.制作過程を残しておく
重要なAI生成物については、制作記録を残しておくと後から確認しやすくなります。
たとえば、
使用したAIサービス
使用プラン
生成日
プロンプト
入力した元画像
生成された途中案
人が加えた修正
最終データ
利用規約
外注先との契約
などです。
すべての生成物について大量の記録を残す必要はありません。
ただし、
メインキャラクター
タイトルロゴ
映画ポスター
主題歌
劇伴
脚本
商品化する素材
など、後から権利関係を確認する可能性が高いものは、記録を残しておく意味があります。
映画・動画制作で使うときのチェックリスト
AI生成物を採用する前に、必要な項目を確認します。
利用規約
商用利用できるか
映画・動画で使えるか
広告・宣伝に使えるか
SNSで使えるか
加工できるか
第三者へ納品できるか
商品化できるか
プランによる違いはないか
生成内容
既存作品に似すぎていないか
特定作品の具体的な表現を再現していないか
有名キャラクターに似ていないか
実在人物に似ていないか
ロゴ・商品・ブランドが入り込んでいないか
元素材
元画像・元音源を使ってよいか
AIへ入力してよいか
加工してよいか
加工後のものを商用利用してよいか
権利関係
人の創作的寄与はどこにあるか
誰が最終的に制作したのか
外注の場合、著作権は誰にあるのか
制作側が必要な範囲で利用できるか
公開・展開
本編で使えるか
予告編で使えるか
SNSで使えるか
映画祭で使えるか
配信できるか
広告に使えるか
グッズに使えるか
続編でも使えるか
全部に「はい」が必要という意味ではありません。
その素材をどこまで使う予定なのかに合わせて、必要な項目を確認するためのチェックリストです。
まとめ
映画・動画制作で生成AIを使うときは、単に、「AI生成だから大丈夫か」を見るのではありません。
確認したいのは、
AIサービスの利用規約
既存作品との類似
入力した元素材の権利
AI生成物の著作権
実在人物・ロゴ・キャラクターなど第三者の権利
外注・共同制作での権利関係
本編・宣伝・配信・商品化まで含めた利用範囲
です。
そのうえで、どこで使うのか、どのくらい目立つのか、どれくらい長く使うのかを見ます。
本編の遠景と、映画ポスターのメインビジュアルを同じように扱う必要はありません。
必要なところはきちんと確認し、簡単に避けられる問題は制作段階で避ける。
生成AIは、権利問題を増やすものとして怖がるだけではなく、制作素材の一つとして管理できる状態にして使うことが大切です。
参考
※映画・動画制作で生成AIを使用する場合の著作権や契約、利用範囲について個別にご相談が必要な場合は、お問い合わせページをご利用ください。
