絵画や美術作品が映ってしまった|許可は必要?
更新日:7 日前
店内、ホテル、オフィス、個人宅などで撮影していると、壁に飾られた絵画や写真作品、彫刻などが画面に入ることがあります。
こうした美術作品に著作権がある場合でも、背景の一部として付随的に映り込んだだけなら、必ずしも著作権者の許可が必要になるわけではありません。
著作権法には、撮影の本来の対象ではない著作物が付随して映り込む場合について、一定の範囲で許諾なく利用できる規定があります。
一方で、絵画や美術作品そのものを見せるために撮影する場合は、単なる「写り込み」とは考えにくくなります。
この記事では、絵画や写真作品、彫刻などが映像に入った場合の考え方と、撮影前後に確認したいポイントを整理します。
この記事で分かること
絵画や美術作品が映った場合に許可が必要になるのか
背景への「写り込み」として扱われるのはどんな場合か
絵画や彫刻を作品の演出として使う場合の注意点
美術館やギャラリーで撮影する場合に考えること
著作権の保護期間が切れている作品はどう扱うのか
屋外にある彫刻や美術作品の扱い
撮影後に美術作品の映り込みに気づいた場合の対応
ロケハンで確認しておきたいポイント
結局どうすればいいのか
背景に小さく映っただけなら「写り込み」になることがある
たとえば、ホテルのロビーで人物を撮影したところ、後ろの壁に絵画が掛かっていた場合。
撮影したかったのは人物やロビーで、絵画は背景の一部として付随して映っているだけであれば、著作権法第30条の2の「付随対象著作物」に当たる可能性があります。
文化庁も、写真や映像の撮影時に、本来の撮影対象ではない絵画などが背景に映り込む場合を「写り込み」の例として説明しています。
そのため、
壁の絵が画面の端に小さく入る
背景に彫刻が少し映る
店内の写真作品が人物の後ろに見える
といったケースなら、直ちに権利者の許可が必要になるとは限りません。
写り込みの基本的な考え方については、他記事「店内のポスターや写真が映り込んだ|著作権の問題はある?」で詳しく整理しています。
美術作品そのものを見せる場合は別
一方で、
絵画を画面いっぱいに映す
カメラを作品へ寄せる
彫刻を長時間見せる
登場人物が作品を鑑賞する演出で、その作品をはっきり映す
美術作品の内容自体がストーリー上重要になる
といった場合は、単なる背景への写り込みとは事情が変わります。
この場合は、その美術作品自体を作品の中で利用していると考える必要があります。
特に、現代美術や写真作品など、著作権の保護期間が続いている作品を積極的に映す場合は、権利者への確認が必要になることがあります。
店やホテルから撮影許可をもらっていても、作品の著作権は別
たとえば、ホテルから館内撮影の許可をもらったとしても、館内に飾られている絵画や写真の著作権までホテルが持っているとは限りません。
作品によっては、
作家本人
写真家
作家の相続人
著作権管理団体
権利を譲り受けた法人
などが著作権を持っていることがあります。
つまり、施設内で撮影してよいという許可と、そこにある美術作品を映像で利用してよいという許可は別です。
ただし、背景に軽微に映る程度で写り込みの範囲に収まるのであれば、個別の許諾が不要になる場合があります。
美術館やギャラリーでは、著作権以外のルールもある
美術館やギャラリーで撮影する場合は、著作権だけ見ればよいわけではありません。
施設によって、
館内撮影禁止
一部作品のみ撮影可
フラッシュ禁止
三脚禁止
動画撮影禁止
商用撮影は別途許可が必要
など、独自のルールがあります。
これは著作権とは別の、施設管理上のルールです。
そのため、作品の著作権が切れていたとしても、「古い作品だから自由に撮影できる」とは限りません。
まず、その施設で撮影自体が認められているかを確認する必要があります。
著作権が切れている作品なら自由に使える?
絵画や美術作品には、著作権の保護期間があります。
日本では、原則として著作者の死後70年まで著作権が保護されます。
そのため、かなり古い作品では、すでに著作権の保護期間が終了していることがあります。
著作権が消滅している古典絵画などについては、作品そのものを利用するために著作権者の許可を取る必要は原則としてありません。
ただし、ここでも何を利用しようとしているのかを分けて考える必要があります。
古い絵画そのものの著作権が切れていても、その作品を撮影した写真や画像について、撮影者の創作的な表現が認められる場合には、別の著作権が問題になることがあります。
また、美術館などが提供している画像データには、利用条件が設けられていることもあります。
「古い作品だから何でも自由」と考えるのではなく、作品そのものを利用するのか、誰かが撮影・作成した画像を利用するのかを確認することが大切です。
屋外にある彫刻や美術作品は?
公園や広場など、屋外に彫刻やモニュメントが設置されていることもあります。
一般公衆の見やすい屋外の場所に恒常的に設置されている美術の著作物については、著作権法第46条によって、一定の範囲で利用することができます。
一方、人物や街の風景を撮影した結果として、美術作品が背景に軽微に映り込んだ場合には、著作権法第30条の2の「写り込み」が問題になることもあります。
つまり、
屋外に恒常的に設置されている美術作品を利用する → 第46条
本来の撮影対象に付随して軽微に映り込む → 第30条の2
という異なる規定が関係する場合があります。
なお、第46条にも例外があり、美術作品の複製物を販売することを目的とした利用など、すべての利用が自由になるわけではありません。
映画や動画で屋外の彫刻などを扱う場合も、どの規定によって利用できるのかを分けて考えます。
撮影後に気づいた場合は、まず映り方を見る
編集時に、「壁の絵、かなり映ってるな」と気づくことがあります。
その場合は、まず、
画面のどの程度を占めているか
作品の内容がはっきり分かるか
どのくらい長く映っているか
その作品自体に演出的な意味があるか
作品を見せるためのカットになっていないか
を確認します。
背景として小さく映るだけなら、そのまま利用できる場合があります。
一方で、かなり目立つ場合には、
別のカットを使う
トリミングする
ぼかす
差し替える
権利者へ確認する
といった方法を検討します。
ロケハンでは「壁に何が掛かっているか」も確認する
美術作品は、撮影直前になってから気づきやすいものの一つです。
特に、
ホテル
レストラン
バー
オフィス
ギャラリー
個人宅
高級マンションの共用部
などでは、絵画や写真作品が目立つ場所に飾られていることがあります。
ロケハン時に、カメラを向ける方向の壁に何があるかまで確認しておけば、撮影後の処理を減らせます。
背景への軽微な写り込みなのか、それとも美術作品そのものを演出として使うのか。
ここを撮影前に分けて考えると判断しやすくなります。
結局、絵画や美術作品が映ったらどうすればいい?
まず、その作品が背景に映っただけなのか、美術作品そのものを見せているのかを確認します。
背景に軽微に映るだけなら
人物や店内などを撮影した結果として、壁の絵や彫刻が背景に小さく映る程度なら、「写り込み」としてそのまま利用できる可能性があります。
美術作品をしっかり見せるなら
作品をアップにしたり、鑑賞シーンで長く映したり、その作品自体をストーリーに利用したりする場合は、著作権の保護期間や権利者を確認します。
著作権が存続している場合には、利用許諾が必要になる可能性があります。
古い作品なら
著作者の死後70年が経過するなどして著作権の保護期間が終了していれば、作品そのものについて著作権者の許可は原則不要です。
ただし、別の人が撮影・作成した画像を利用する場合は、その画像について別の著作権や利用条件がないかを確認します。
美術館・ギャラリーなら
著作権とは別に施設の撮影ルールを確認します。
作品の著作権が切れていても、施設が動画撮影や商用撮影を禁止している場合があります。
まとめ
絵画や美術作品が映った場合は、
背景への軽微な写り込みなら、そのまま利用できる場合がある
美術作品そのものを見せる場合は権利関係を確認する
施設から撮影許可を得ても、美術作品の著作権まで許可されたとは限らない
著作権の保護期間が終了している作品もある
屋外に恒常的に設置された美術作品には第46条が適用される場合がある
美術館などでは著作権とは別に施設ルールを確認する
という順番で考えます。
「美術作品が映った=許可が必要」ではなく、何をどの程度作品の中で利用しているのかを確認することがポイントです。
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参考
※映像に映る絵画・写真・彫刻などの扱いや、撮影時の著作権について個別に確認したい場合は、お問い合わせからご相談ください。
