看板や広告が映っている|消した方がいい?
更新日:7 日前
街中で撮影すると、店舗の看板、企業ロゴ、駅の広告、ビルの大型ビジョンなど、さまざまなものが画面に入ります。
こうした看板や広告が映ったからといって、すべてをぼかしたり消したりする必要があるわけではありません。
街の風景や人物を撮影した結果として、看板や広告が背景の一部として付随して映っている場合には、著作権法第30条の2の「付随対象著作物」として、許可なく利用できることがあります。
文化庁も、街角の風景を撮影・収録した際に、看板やポスターなどに描かれた著作物が入り込む場合を、写り込みの例として挙げています。
一方で、広告そのものを大きく見せたり、特定の企業やブランドを作品の演出として積極的に利用したりする場合は、単なる背景への写り込みとは事情が変わります。
この記事では、街中の看板・広告・企業ロゴなどの映り込みについて、著作権や商標権の考え方と、撮影現場での実務的な対応を整理します。
この記事で分かること
街中の看板や広告が映ったら消す必要があるのか
看板や広告を「写り込み」として利用できる場合
広告そのものを積極的に使う場合の考え方
企業ロゴと商標権の関係
実在企業と作品の内容が結び付く場合の注意点
「消した方が安心」と「消さなければ違法」の違い
撮影前・撮影後の実務的な対応
街の背景に看板や広告が映った場合
街中で人物を撮影したり、道路を歩くシーンを撮影したりすれば、
道路沿いの店舗看板
コンビニや飲食店のロゴ
ビルに掲げられた企業名
駅やバス停の広告
街頭広告
大型ビジョン
などが画面に入ることがあります。
看板や広告には、写真、イラスト、デザインなど、著作物に当たるものが含まれていることがあります。
ただし、それらが映像の本来の撮影対象ではなく、
街の風景や人物に付随して映り
画面内で軽微な構成部分といえ
利用が正当な範囲内であれば
著作権法第30条の2によって利用できる場合があります。
そのため、「広告が一つでも映ったら、必ずぼかさなければならない」というわけではありません。
写り込みの基本的な考え方については、関連記事「店内のポスターや写真が映り込んだ|著作権の問題はある?」で詳しく整理しています。
広告そのものを見せる場合は事情が変わる
背景に広告が映る場合と、広告そのものを撮影対象として利用する場合では事情が異なります。
たとえば、
広告を画面いっぱいに映す
カメラを広告へ寄せる
ポスターの写真やイラストをはっきり見せる
広告のコピーを読ませる
広告をきっかけに物語を展開させる
といった場合です。
背景に広告が小さく映り込んでいるケースと、広告そのものを作品の表現やストーリー展開として利用するケースでは、その使われ方が違います。
後者のような使い方では、単なる背景への写り込みとして扱うのが難しくなることがあります。
広告を演出に組み込む場合の注意点
たとえば、「この広告を見て登場人物が何かに気づく」という場面で広告をアップにする場合、その広告自体が演出の一部になります。
単なる背景への写り込みとは言いにくくなるため、必要に応じて広告に含まれる著作物の権利関係を確認します。
企業ロゴが映ったら商標権侵害になる?
街中の看板には、企業名やブランドロゴが表示されていることがあります。
しかし、登録商標が映像に映ったというだけで、直ちに商標権侵害になるわけではありません。
商標権は、登録されたマークが映ること自体を禁止する権利ではありません。
商標法では、その表示が商品やサービスの出所を示すものとして使われているかという点も重要になります。
そのため、街の風景を撮影した結果として、店舗や企業のロゴが背景に映っているだけであれば、それだけで直ちに商標権侵害になるとは限りません。
一方で、
その企業が作品を公式に支援しているように見せる
実際には関係がないのにスポンサーであるように見せる
ブランド名やロゴを作品の宣伝に積極的に使う
といった利用は、単純な背景への映り込みとは別に考える必要があります。
このような使い方では、著作権や商標権だけでなく、実在企業との関係について別の法的問題が生じることもあります。
実在する企業と作品の内容が結び付く場合
著作権や商標権とは別に、映像の文脈も考えておきたいところです。
たとえば、
犯罪シーンや暴力的な場面
薬物を扱う場面
不衛生な場所としての描写
実在企業に不正や問題行為があるように見える演出
などで、特定企業の看板やロゴが大きく映っている場合です。
これは、「企業ロゴが映ったから著作権侵害」という話ではありません。
作品の内容と実在企業が結び付いて見えることで、その企業について事実と異なる印象を与えたり、別のトラブルにつながったりする可能性があるためです。
そのため制作現場では、法律上の写り込みとは別のリスク管理として、
ロゴを避ける
ぼかす
架空の店舗名へ変更する
といった判断をすることがあります。
「現場で実在ロゴを消すことがある=映っただけで違法」という意味ではありません。
「消した方が安心」と「消さなければ違法」は別
映像制作では、「念のためロゴを消しておこう」という判断をすることがあります。
それ自体は一つの制作判断です。
しかし、「消した方がトラブルを減らせること」と「消さなければ違法であること」は別です。
街中の引きの画から、看板や企業ロゴをすべて消そうとすると、かなりの編集作業になることがあります。
まず、
背景の一部として映っているだけか
どれくらい大きく映っているか
内容まではっきり読めるか
広告自体を演出に利用しているか
特定企業と作品の内容が強く結び付いて見えないか
を確認してから処理を考える方が実務的です。
撮影前後の実務フロー
撮影前
撮影前には、画角の中に入る看板や広告を確認しておきます。
特に、
ビル一面の大型広告
駅前の巨大ビジョン
大型店舗のロゴ
商業施設の壁面広告
作品上重要な位置にある広告
などは、撮影当日に避けようとしても難しいことがあります。
確認したいのは、
背景として映るだけか
広告をアップにする予定があるか
登場人物と広告を絡めた演出があるか
実在企業と作品の内容が強く結び付かないか
画角を少し変えれば避けられるか
です。
なお、ロケハン時にはなかった広告が撮影当日に掲出されていることもあります。
重要な画角に入る場所は、撮影当日にも再確認しておくと後処理を減らせます。
撮影後
編集時に、「この看板、消した方がいいかな?」となった場合は、実際のカットを確認します。
画面の端に小さく映っているだけか
広告の内容まではっきり読めるか
アップや長時間の映り込みになっているか
広告自体に演出的な意味があるか
特定企業と作品の内容が強く結び付いて見えるか
背景に付随して軽微に映っているだけなら、そのまま利用できる場合があります。
一方、写り込みとして扱うのが難しそうなら、
別のカットを使う
トリミングする
ぼかす
広告部分を差し替える
架空の看板へ変更する
必要に応じて権利関係を確認する
といった方法を検討します。
まとめ
街中の看板や広告は、映っただけですべて消す必要はありません。
人物や街の風景を撮影した結果として付随して映る程度であれば、著作権法第30条の2の「写り込み」として利用できる場合があります。
また、企業ロゴが背景に映っただけで、直ちに商標権侵害になるわけでもありません。
判断のポイントは、「何が映っているか」だけではなく、「作品の中でそれをどう使っているか」です。
街の風景の一部として映っている → 写り込みとして利用できる可能性がある
広告そのものを積極的に見せている → 単なる写り込みとして扱うのは難しくなり、権利関係を確認する
実在企業と作品の内容が強く結び付く → 著作権や商標権とは別の観点からも、必要に応じてロゴを避けたり表示を変更したりする
法律上利用できる範囲まで何でもぼかす必要はありません。
一方、撮影前に簡単に避けられるものや、作品上必要のない表示については、事前に画角を調整しておくことで編集の手間を減らせます。
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参考
※映画・動画制作で映り込む看板・広告・企業ロゴなどについて個別に確認したい場合は、お問い合わせからご相談ください。
