生成AIに既存作品やキャラクターを参考に作らせても大丈夫?
更新日:9月19日
結論からいうと、既存作品を参考にすることと、その作品の具体的な表現を再現することは分けて考えます。
たとえば、
1970年代のホラー映画のような雰囲気
モノクロで強い逆光
古い印刷物のような質感
ゴシック調の衣装
といった一般的な特徴を指定することと、
特定の映画ポスターと同じ構図にする
特定のキャラクターと同じ外見にする
特定のイラストの衣装や小物まで再現する
ことでは、元作品との近さが違います。
生成AIを使うときの境界は、単に「作品名をプロンプトに入れたか」だけでは決まりません。
何を参考にし、最終的にどんなものが生成されたのか。
さらに、他人の画像をAIへ入力した場合は、その入力行為自体についても確認が必要になることがあります。
この記事で分かること
既存作品を参考にすること自体は問題なのか
「〇〇風」はどこまで大丈夫なのか
キャラクターを参考にするときは何を見るのか
他人の画像をAIへ読み込ませてよいのか
映画や動画で使う素材なら、どこで線を引けばよいのか
境界は「参考にしたか」だけでは決まらない
映画やイラストを作るとき、他の作品から影響を受けること自体は珍しくありません。
生成AIでも同じで、
暗いゴシックホラーの雰囲気にしたい
1960年代の映画広告のようなデザインにしたい
といった、ジャンルや時代、雰囲気を参考にする使い方があります。
一方で、
映画『〇〇』のポスターと同じ構図、同じ人物配置、同じ配色で作って
となると、特定作品の具体的な表現へ近づいていきます。
著作権で問題になるのは、単に「何となく似た雰囲気」かどうかではなく、既存作品の具体的な表現との類似性や、その作品に依拠して作られたといえるかです。
生成AIを使った場合でも、この基本的な考え方は変わりません。
そのため、実務では、
一般的な特徴を参考にしているのか、それとも特定作品の具体的な表現を持ち込んでいるのか
を分けて考えると分かりやすくなります。
「〇〇風」はどこから注意が必要?
「〇〇風」と書いたから直ちに著作権侵害になる、というものではありません。
作風、ジャンル、雰囲気、技法などの抽象的な特徴そのものと、著作権で保護される具体的な表現は別です。
たとえば、
水彩画風
1980年代SF映画風
古い怪奇雑誌風
手描きアニメ風
ゴシックホラー風
といった一般的な表現だけなら、特定作品をそのまま再現する指示とは限りません。
ただし、完成した生成物に、
特徴的な人物配置
独自の衣装
特徴的な小物
背景の構成
独特なキャラクターデザイン
特徴的な文字やセリフ
などが入り、特定作品の具体的な表現にかなり近くなっているなら話は別です。
つまり、「〇〇風と入力したから大丈夫」でも、「作品名を入力したから必ずダメ」でもありません。
最終的には生成物そのものを確認します。
映画や動画で実際に使う素材なら、特定作品を直接指定するより、
時代
色
光
構図
質感
ジャンル
衣装
カメラ位置
など、欲しい特徴を一般的な言葉へ分解した方が扱いやすくなります。
キャラクターを参考にするときは?
キャラクターの場合は、さらに分かりやすいです。
たとえば、
10代の少女、黒髪のショートカット、赤いジャケット、近未来都市
という条件からオリジナルキャラクターを作ることと、
〇〇というアニメキャラクターを実写化して
と指示することでは、元作品との関係が違います。
特定キャラクターを指定したうえで、
顔
髪型
衣装
配色
武器
小物
特徴的なポーズ
まで再現されれば、既存作品の具体的な表現との関係を確認する必要があります。
キャラクター名やロゴ、商品展開などでは、著作権だけでなく商標など別の権利が関係する場合もあります。
映画用のオリジナルキャラクターを作るのであれば、「このキャラクターみたいに」ではなく、欲しい特徴を一つずつ自分で決める方が後から使いやすくなります。
他人の画像をAIへ読み込ませてもいい?
ここは、プロンプトに作品名を書くだけの場合とは少し違います。
たとえば、
他人のイラスト
写真
漫画のページ
映画の場面
キャラクター画像
を生成AIへアップロードし、
この画像を元に別バージョンを作って
と指示する場合です。
著作権法30条の4では、情報解析など、著作物に表現された思想・感情を「享受すること」を目的としない利用について、一定の場合に著作権者の許諾なく利用できる仕組みがあります。
生成AIへの著作物の入力についても、この規定が適用される場合があります。
ただし、文化庁は、入力した既存作品と類似する生成物を作らせる目的で著作物を入力する場合には、30条の4が適用されないことがあるという考え方を示しています。
つまり、他人の画像をAIに入れる行為は、何のために入力するのかによって扱いが変わり得ます。
たとえば、
この写真の中に何が写っているか分析して
という使い方と、
このイラストと同じ絵を作って
という使い方は同じではありません。
さらに、AIサービス側が、アップロードできる画像について独自の利用条件を設けている場合もあります。
映画制作で参考画像を使うなら、
自分で撮影した写真
自分で描いたラフ
制作側が権利を持つ素材
利用許可を得た素材
を使う方が整理しやすくなります。
自分で撮った写真でも、人物や美術作品など別の権利が写っている場合は、その点を別に確認します。
映画や動画で使うなら、どこで線を引く?
実際の制作では、法律上の限界を毎回ぎりぎりまで探す必要はありません。
たとえば劇中ポスターをAIで作る場合。
映画『〇〇』のポスターそっくり。人物の位置、配色、タイトル位置も同じ。
と指定するより、
1970年代の低予算ホラー映画。古い紙の質感。中央に一人の女性。背景は暗い森。赤と黒を中心にした配色。手描き風のタイトル文字。
と分解した方が、欲しいイメージを残しながら特定作品から離せます。
生成後も、
特定作品の具体的な表現にかなり近くなっていないか
有名キャラクターそのものが出ていないか
特徴的な構図や衣装を再現していないか
参考画像の表現がそのまま残っていないか
を確認します。
もし制作側でも、「これ、あの作品にかなり近いな」と感じるなら、無理に使うより再生成する方が簡単です。
生成AIの利点は、作り直しが比較的容易なことです。
法律上使えるかをぎりぎりまで争うより、必要な画を残しながら元作品から離す。
映画や動画制作では、この判断の方が実務的です。
まとめ
生成AIで既存作品を参考にするときは、「参考にしたか・していないか」だけで線を引くことはできません。
見るポイントは、
一般的なジャンルや雰囲気を参考にしているのか
特定作品の具体的な表現を再現しているのか
完成した生成物が既存作品にどの程度似ているのか
特定作品へ依拠して作られたといえるか
他人の画像をAIへ入力している場合、その目的は何か
AIサービスの利用規約上、入力や生成が認められているか
です。
「〇〇みたいな雰囲気が欲しい」ことと、「〇〇そのものを作りたい」ことは同じではありません。
既存作品の何を参考にしたいのかを分解し、作品名やキャラクター名に頼らず、自分が欲しい要素として組み直す。
その方が、映画や動画の中で長く使える素材を作りやすくなります。
参考
※生成AIで既存作品を参考にした素材の映画・動画での利用や、著作権について個別にご相談が必要な場合は、お問い合わせページをご利用ください。
