撮影延期・中止になったら出演料はどうする?
更新日:9月16日
結論からいうと、撮影が延期・中止になったときに出演料をどうするかは、一律には決まりません。
大切なのは、
誰の都合で延期・中止になったのか
いつ決まったのか
出演者がすでにどこまで仕事をしていたのか
別日に振り替えるのか
契約でどう決めていたのか
を分けて考えることです。
映画制作では、
撮影しなかったのだから出演料はゼロ
とも、
スケジュールを押さえたのだから必ず全額
とも、一律にはいえません。
だからこそ、撮影前の出演契約で、延期・中止・キャンセル時の扱いまで決めておくことが重要です。
この記事で分かること
撮影中止なら出演料を払わなくていいのか
延期して別日に撮る場合はどう考えるか
直前キャンセルと早い段階の中止の違い
リハーサルや衣装合わせ済みの場合の考え方
天候や災害などで撮れなくなった場合
出演契約で何を決めておけばいいか
まず「延期」と「中止」を分けて考える
最初に分けたいのが、
撮影そのものがなくなる「中止」
と、
別の日に撮影する「延期」
です。
たとえば、撮影日の前日に雨予報が出て、
来週に変更します。
となるなら延期です。
一方、
この企画そのものを取りやめます。
となれば中止です。
延期なら、出演者には別の日にもスケジュールを空けてもらう必要があります。
中止なら、すでに押さえてもらっていた日程や、それまでに行った準備をどう扱うのかが問題になります。
同じ「撮影できなかった」でも、実務上はかなり違います。
撮影しなかったから出演料ゼロ、とは限らない
出演料を、
撮影当日に演技をした対価
だけと考えると、
撮影しなかったのだから支払わなくていい。
となりそうです。
でも出演者は、撮影日のために、
スケジュールを空ける
台本を読む
役作りをする
リハーサルに参加する
衣装合わせをする
他の仕事を入れない
といった準備をしていることがあります。
すでにリハーサルや衣装合わせを終えているなら、その分の仕事までなかったことにはできません。
反対に、かなり早い段階で撮影が中止になり、出演者がまだ何も準備していない場合もあります。
そのため、中止になったという事実だけで出演料がゼロか全額かを決めるのではなく、契約内容や実際の履行状況を確認する必要があります。
いつ中止になったかでも状況は変わる
キャンセルの時期も重要です。
たとえば、
1か月前に中止
まだ出演者が大きな準備を始めておらず、別の仕事を入れられる可能性があります。
前日に中止
すでにその日は空けてもらっていて、他の仕事を入れることは難しいでしょう。
当日に中止
出演者が現場まで来ていたり、移動費が発生していたりすることもあります。
この3つをすべて同じ条件で扱う必要はありません。
契約では、
何日前までならキャンセル料なし
何日前から一定額
当日は全額または一定割合
など、段階的に決める方法もあります。
ただし、これは法律で一律の割合が決まっているわけではありません。
作品の規模や拘束の程度に合わせて、事前に条件を決めます。
延期なら「最初の日」と「振替日」の両方を考える
撮影を延期する場合は、
別日に撮るから問題ない。
とは限りません。
出演者から見ると、最初の撮影日も空けたうえで、さらに別の日も空けることになります。
たとえば、
9月10日の撮影を予定していた
↓
前日に延期
↓
9月20日に振替
となれば、出演者は結果的に2日分のスケジュールを拘束されたことになります。
そのため、
延期の場合は出演料をそのまま振替日に充当するのか
最初の日のキャンセル分を別途支払うのか
追加拘束として追加報酬を払うのか
などを決めておくと分かりやすくなります。
延期時の扱いを何も決めていないと、
撮影日は1日だから出演料も1日分
という制作側と、
2日とも空けたのだから同じではない
という出演者側で認識がずれることがあります。
リハーサルや衣装合わせが終わっていたら?
本番撮影がなくなっても、それまでに行った仕事は残ります。
たとえば、
本読み
リハーサル
衣装合わせ
ヘアメイクテスト
宣材撮影
アクション練習
などです。
これらを
出演料に含める契約だったのか
別料金だったのか
本番が中止になったときも支払うのか
を確認します。
出演料を一括で、
出演一式 5万円
としていると、中止時にどこまでがすでに発生した報酬なのか分かりにくくなることがあります。
そのため、準備作業が多い作品では、本番撮影以外の拘束や作業をどう扱うかも最初に決めておくと整理しやすくなります。
制作側の都合で中止する場合
たとえば、
企画自体がなくなった
予算が足りなくなった
スタッフが集まらなかった
ロケ地を確保できなかった
制作側のスケジュールが変わった
といった理由で中止する場合です。
こうした場合に出演者へどこまで支払うのかは、契約内容や中止までの経緯によって変わります。
文化庁も、出演契約について、不可抗力による公演等の中止・延期の場合を含め、報酬の取扱いをあらかじめ明確にしておく必要があると案内しています。
映画制作でも同じように、
中止になったらそのとき考える。
ではなく、中止・延期時の報酬を契約時に決めておく方がトラブルを減らせます。
出演者側の都合で出演できなくなった場合
反対に、
出演者本人の都合
スケジュールの重複
無断欠席
出演辞退
などによって撮影できなくなる場合もあります。
この場合は、制作側の都合による中止とは別に考えます。
すでに支払った出演料をどうするのか
代役や撮り直しで発生した費用をどう扱うのか
途中まで撮影した映像を使えるのか
といった別の問題が出てきます。
出演者本人が途中で降板する場合については、別記事「出演者が途中で降板したらどうなる?」で詳しく扱います。
雨や台風など、誰のせいでもない場合
撮影では、
雨
台風
大雪
地震
災害
交通機関の大規模な停止
行政による施設閉鎖
など、制作側にも出演者側にも原因がない事情で撮影できなくなることがあります。
こうした場合を、契約では「不可抗力」として扱うことがあります。
ただし、
不可抗力なら出演料は必ずゼロ
と決まっているわけではありません。
たとえば、
すでにリハーサルをしている
当日現場まで来ている
交通費や宿泊費が発生している
別日に振り替える
といった事情によっても、必要な整理は変わります。
そのため、不可抗力の場合に出演料・交通費・宿泊費・振替撮影をどう扱うのかも契約で決めておくと分かりやすくなります。
交通費・宿泊費は出演料と分けて考える
撮影中止時には、出演料だけでなく実費も問題になります。
たとえば、
新幹線を予約済み
飛行機を購入済み
ホテルを予約済み
当日すでに現場へ移動している
場合です。
出演料を支払うかどうかとは別に、こうした実費が発生していることがあります。
そのため、
交通費
宿泊費
キャンセル料
を誰が負担するのかも決めておくと安心です。
特に遠方から出演者を呼ぶ撮影では、出演料だけ決めて終わらせない方がいいでしょう。
「キャンセル料〇%」だけでは足りないこともある
契約に、
前日キャンセルは出演料の50%
と書いておけば、かなり分かりやすくなります。
ただ、それだけでは、
交通費は別に払うのか
リハーサル分はどうするのか
延期の場合もキャンセル扱いなのか
振替日に追加料金が必要なのか
台風などの不可抗力も同じなのか
が残ることがあります。
そのため中止・延期条項では、「いくら払うか」だけでなく「どんな場合にそのルールを適用するか」まで決めることが大切です。
出演契約では何を決めておく?
撮影延期・中止については、少なくとも、
制作側の都合による中止
出演者側の都合による中止
天候・災害などの不可抗力
何日前に中止した場合から支払いが発生するか
中止時の出演料
延期時の出演料
振替撮影の扱い
リハーサル等の報酬
交通費・宿泊費
すでに発生した実費
などを、作品に応じて考えます。
全部の作品で細かいキャンセル表を作る必要はありません。
小規模な自主制作なら、
制作側の都合で撮影を中止する場合は、〇日前以降は出演料の〇%を支払う。
延期の場合は振替日を協議し、追加の拘束が生じる場合の報酬は別途協議する。
など、その作品に必要な範囲で決める方法もあります。
重要なのは、撮れなくなってから初めてお金の話をする状態を避けることです。
まとめ
撮影が延期・中止になった場合、出演料が自動的にゼロになるわけでも、必ず全額支払うわけでもありません。
確認したいのは、
延期か中止か
誰の都合なのか
いつ決まったのか
すでにどこまで仕事をしているのか
振替撮影をするのか
実費が発生しているか
契約でどう決めていたか
です。
特に映画制作では、天候・ロケ地・出演者・スタッフなど多くの事情で予定が変わります。
だからこそ、出演契約では、「予定どおり撮れた場合」だけでなく、「撮れなかった場合にどうするか」まで決めておくことが大切です。
参考
※映画・動画制作における撮影延期・中止時の出演契約について個別にご相談が必要な場合は、お問い合わせページをご利用ください。
