出演者が途中で降板したらどうなる?
更新日:9月16日
結論からいうと、出演者が途中で降板した場合は、「降板した」という事実だけで一律に処理することはできません。
確認したいのは、
どの段階で降板したのか
すでに撮影した映像があるのか
降板の理由は何か
代役を立てるのか
撮り直しが必要なのか
すでに支払った出演料をどうするのか
撮影済み映像をそのまま使えるのか
契約でどう決めていたのか
です。
映画制作では、出演者が途中で降板すると、単に「別の俳優に替えれば終わり」では済まないことがあります。
撮影済みのシーン、追加撮影、ロケ地、スタッフの日程、衣装、美術、宣伝素材まで影響することがあります。
だからこそ出演契約では、出演者が途中で出演できなくなった場合にどうするのかも、ある程度決めておくことが大切です。
この記事で分かること
出演者が途中で降板したら何を確認するのか
撮影済みの映像はそのまま使えるのか
代役を立てる場合に何が問題になるのか
撮り直し費用を出演者へ請求できるのか
すでに支払った出演料はどうするのか
出演契約で決めておきたいこと
まず、どの段階で降板したのかを確認する
同じ「降板」でも、タイミングによって影響は大きく変わります。
たとえば、
撮影前
リハーサル後
撮影初日後
撮影の途中
主要シーン撮影後
撮影終了後、追加撮影だけ残っている
では状況が違います。
撮影前なら、代役を探してスケジュールを組み直せば済むこともあります。
一方、すでに多くのシーンを撮影している場合は、
このまま撮影済み映像を使うのか
すべて撮り直すのか
一部だけ代役にするのか
といった判断が必要になります。
まずは、どこまで仕事が進んでいたのかを確認することが出発点です。
降板の理由も分けて考える
降板には、いろいろな理由があります。
たとえば、
出演者本人の都合
スケジュールの重複
体調不良
家庭の事情
制作内容の変更
制作側との意見の相違
契約条件についてのトラブル
制作側からの降板要請
などです。
出演者本人の一方的な都合で降板する場合と、制作側が役を変更した場合では、同じ扱いにはなりません。
また、事故や災害など、本人にも制作側にも原因がない場合もあります。
そのため、「誰が悪いか」を先に決めるより、まず降板の理由と契約内容を整理することが大切です。
撮影済みの映像はそのまま使える?
途中まで撮影したあとに降板した場合、制作側としてまず気になるのが、
すでに撮った映像を使っていいのか
という点です。
これは、出演契約でどこまで利用を認めてもらっていたかを確認します。
出演者が降板したからといって、それまでに撮影した映像が自動的に使えなくなるとは限りません。
一方で、
降板したら撮影済み映像も使わない
という約束があれば、その契約内容が問題になります。
また、撮影済み映像を、
本編に使う
予告編に使う
SNSに使う
静止画として使う
場合では、確認する利用範囲も変わります。
出演映像全体の利用範囲については、別記事「出演映像はどこまで使える?」で詳しく解説しています。
降板しただけで「映像を全部消して」と言える?
出演者から、
もう作品から降りるので、自分が映っている映像は全部削除してください。
と言われる可能性もあります。
ただ、降板したという理由だけで、すでに契約に基づいて撮影した映像の利用を当然に止められるとは限りません。
どこまで利用できるかは、
出演契約の内容
撮影時の合意
利用範囲
降板の経緯
実演家の権利
などを確認して考えます。
逆に制作側も、
契約したんだから何があっても使える。
と決めつけない方がいいでしょう。
降板に至った事情によっては、公開方法や使用シーンを調整した方がよいこともあります。
代役を立てる場合は、撮り直しがどこまで必要かを考える
主要な役の出演者が途中で降板すると、代役を立てることがあります。
その場合、
すでに撮ったシーンを全部撮り直す
顔が分かるシーンだけ撮り直す
後ろ姿や手元などは既存映像を使う
脚本を変更する
登場シーン自体を減らす
など、作品によって対応はさまざまです。
ここは法務だけではなく、制作上の判断も大きい部分です。
すべて撮り直すと、
出演料
スタッフ費
ロケ地代
機材費
衣装・美術費
交通費
編集費
などが追加で発生することがあります。
そのため、出演者の降板は制作全体に大きな影響を与えることがあります。
撮り直し費用を出演者に全部請求できる?
出演者が自分の都合で降板した場合、
撮り直しに100万円かかったから、全部払ってください。
と当然に請求できるわけではありません。
損害賠償が問題になる場合でも、
契約違反があったのか
出演者に責任があるのか
実際にどんな損害が発生したのか
その損害と降板に因果関係があるのか
損害を減らすために制作側ができる対応はなかったのか
などを確認する必要があります。
民法上、債務不履行による損害賠償が問題になる場面はありますが、降板したら制作費を全部請求できる、という単純なルールではありません。
特に映画制作では、一つの変更が多くの費用に波及するため、
降板によって発生した費用はすべて出演者が負担する。
という条項を置けばそれで解決、とは考えない方がいいでしょう。
すでに支払った出演料は返してもらえる?
これも一律には決まりません。
たとえば、
撮影前に全額前払いした
撮影済みの日数分だけ仕事をしている
リハーサルは終わっている
一部のシーンは作品でそのまま使う
という場合があります。
すでに仕事をした部分まで含めて、
降板したから全額返してください。
とできるとは限りません。
反対に、撮影前に出演料を前払いして、その後出演者の都合で一度も撮影せず降板した場合は、返金について問題になることがあります。
そのため、出演料が何に対する報酬なのかを契約時に分かるようにしておくことが大切です。
出演料そのものの決め方については、別記事「出演料はいくら・いつ払う?」で詳しく扱っています。
途中まで出演してもらった分の報酬はどうする?
たとえば10日間の撮影予定のうち、5日間撮影したあとに降板した場合です。
出演料が、
全撮影期間で10万円
としか決まっていないと、
5日分として半額なのか
役全体に対する報酬なので単純に日割りしないのか
撮影済み映像を使うなら別の考え方になるのか
が曖昧になります。
撮影日数だけで報酬が決まるとは限りません。
ただ、長期間の撮影や複数日拘束の作品では、
1日あたりの出演料
全体の出演料
リハーサル料
追加撮影料
などを整理しておくと、途中終了時にも計算しやすくなります。
降板後も宣伝素材を使う?
すでに、
予告編
ポスター
SNS投稿
キャラクター紹介
宣材写真
などを公開していることもあります。
降板後にこれらをどうするかも考える必要があります。
本編には出演シーンが残るのか
代役に完全に変更するのか
すでに公開した宣伝物をそのまま残すのか
新しい宣伝では使わないのか
こうした扱いも、出演契約や降板時の合意で整理できると分かりやすくなります。
予告編・SNSなどの宣伝利用については、別記事「予告編・SNS・宣伝にも使っていい?」で詳しく解説しています。
降板が決まったら、その時点の合意を文章に残す
出演契約を結んでいても、途中降板まで最初から細かく想定していないことはあります。
その場合は、降板が決まった時点で、
降板日
撮影済み映像を使うか
未撮影部分をどうするか
出演料をいくら支払うか
返金があるか
交通費等の精算
宣伝素材をどうするか
クレジットを残すか
今後追加の出演を求めないこと
などを確認して、文章に残しておくとよいでしょう。
必ずしも大げさな契約書を新しく作らなければならないわけではありません。
合意内容を覚書などにまとめて、
この条件で出演契約を終了する。
と確認できる形にしておく方法もあります。
最初の出演契約では何を決めておく?
途中降板の可能性まで考えるなら、出演契約では、
出演者が出演できなくなった場合
制作側が出演を取りやめる場合
撮影済み映像の利用
出演料・返金の扱い
追加撮影・再撮影
代役への変更
実費の精算
損害が発生した場合の扱い
契約終了後の宣伝利用
などを作品に応じて考えます。
すべての自主制作で細かい降板条項を何ページも作る必要はありません。
ただ、
出演者が途中でいなくなることは絶対にない。
という前提だけで作るより、途中で続けられなくなった場合の最低限の処理を決めておく方が現実的です。
まとめ
出演者が途中で降板した場合は、
どの段階で降板したのか
降板の理由
撮影済み映像があるか
その映像を使うのか
代役を立てるのか
撮り直しが必要か
出演料をどう精算するか
宣伝素材をどう扱うか
を整理します。
降板したからといって、撮影済み映像が自動的に使えなくなるわけでも、出演者へすべての制作費を請求できるわけでもありません。
重要なのは、最初の出演契約と、降板時点での実際の状況を照らし合わせて処理することです。
そして途中降板が決まったら、
何を使うのか いくら支払うのか これで契約関係をどう終わらせるのか
を文章に残しておくと、その後の認識違いを減らせます。
参考
※映画・動画制作における出演者の途中降板や出演契約の終了について個別にご相談が必要な場合は、お問い合わせページをご利用ください。
