制作費を複数人で出すときの契約
更新日:9月13日
結論からいうと、制作費を複数人で出すなら、「誰がいくら出すか」だけでなく、そのお金が出資なのか立替なのか貸付なのか、回収や利益分配をどうするかまで決めておくことが大切です。
最低限、
誰がいくら出すか
いつまでに払うか
何に使うか
追加費用が出たら誰が負担するか
売上が入ったらどう精算するか
途中で抜けたらどうするか
制作中止なら残金をどうするか
を文字にしておきます。
複数人でお金を出すときに一番危ないのは、全員が同じ意味で「出資」と言っていると思い込むことです。
この記事で分かること
制作費を複数人で出すとき何を決めるか
出資・貸付・立替の違い
追加予算が出たらどうするか
売上が入ったら誰から回収するか
制作中止時のお金をどう処理するか
まず、誰がいくら出すか決める
たとえば、
Aさん 100万円
Bさん 50万円
制作会社 50万円
という形です。
ここまでは簡単ですが、本当に重要なのはその次です。
この200万円について、
返してもらう前提なのか
売上が出たら回収するのか
完全に制作費として負担するのか
を決めます。
「出資」と「貸付」は同じではない
たとえばAさんが100万円を出す場合でも、
貸付
制作会社へ100万円を貸す。
→ 原則として返済する前提です。
出資
映画の収益から回収する。
→ 映画が売れなければ、全額回収できない可能性があります。
意味が違うので、契約でも分けます。
「立替」も別
たとえば監督が、
ロケ代5万円
車両費2万円
衣装費3万円
を自分のカードで払った場合です。
これは制作費への出資ではなく、制作側の費用を一時的に立て替えているだけということがあります。
その場合は、
月末に精算する
などと決めます。
なぜ立替を混ぜない方がいい?
たとえば、
Aさん 100万円出資+撮影中に30万円立替
の場合。
この30万円まで出資として扱うのか、それとも先に返すのかで大きく違います。
そのため、
出資
立替
貸付
を別々に記録します。
支払時期も決める
全員が同時に払うとは限りません。
たとえば、
契約時 50%
クランクイン前 50%
などに分けることもできます。
制作会社としては、必要な時期までに資金が入らないと撮影できません。
そのため、金額だけでなく支払期限まで決めることが重要です。
制作費の口座はどうする?
共同制作では、個人の口座を行ったり来たりすると収支が分かりにくくなります。
できれば、
制作会社口座
作品専用口座
など、資金をまとめて管理できる形にします。
少なくとも、誰が何を払ったか分かるように記録します。
何に使っていいか決める?
必要に応じて決めます。
たとえば、
出演料
ロケ費
機材費
美術費
編集費
映画祭費
などです。
一方で、
この100万円は宣伝費には使わない
といった条件付きの資金提供もあり得ます。
制限があるなら契約に書きます。
予算を作って共有する
複数人でお金を出すなら、ざっくりでも、
撮影
出演
ロケ
編集
宣伝
にいくら使う予定なのかを共有しておくと分かりやすいです。
そうすると、
そんなことに30万円使うとは聞いていない。
というトラブルを減らせます。
追加予算が出たらどうする?
映画制作では予算オーバーが起きます。
たとえば、
当初200万円→追加で50万円必要
という場合です。
そのとき、
当初割合に応じて負担
希望者だけ追加出資
制作会社が負担
制作規模を縮小
などを決めます。
「出資割合に応じて追加」なら?
たとえば、
A 50%B 25%制作会社 25%
なら、追加50万円も、
A 25万円B 12万5,000円制作会社 12万5,000円
とする方法があります。
ただし、最初からその義務を負わせるなら契約に書いておきます。
追加出資を強制しない方法もある
たとえば、
追加費用が必要になった場合は、その都度協議し、出資者に追加出資義務はない。
という形です。
この方が、当初予算以上の負担を避けたい人には分かりやすいです。
誰か一人だけ追加で出したら?
たとえばAさんだけが追加50万円を出した場合、
単なる追加出資
貸付
優先回収する資金
のどれなのかを決めます。
ここを曖昧にすると、後で利益分配でもめます。
売上が入ったら、まず何を返す?
たとえば映画の売上が300万円入った場合。
最初に、
配信手数料
販売手数料
宣伝費
その他経費
を差し引くのか。
その次に、
出資金
貸付金
立替金
をどの順番で返すのか決めます。
立替金を先に返す方法
たとえば、
未精算の立替金
貸付金
出資金
その後の利益分配
という順番にする方法があります。
この順番も自動的に決まるものではありません。
契約で決めます。
出資金は全員同じ割合で回収する?
たとえばAが100万円、Bが50万円出した場合、
売上が少しずつ入ったら、
A 2 : B 1
の割合で回収する方法があります。
つまり、出資額に比例して回収します。
誰か一人を先に返すこともある?
契約でそう決めれば可能です。
たとえば、
外部出資者へ優先的に出資金を返し、その後に制作会社が回収する。
という設計もあります。
ただし、優先順位を曖昧にすると後で揉めます。
回収後の利益はどうする?
出資金を全額回収した後の利益を、
A 50%
B 30%
制作会社 20%
などで分けることがあります。
出資割合と利益分配割合を同じにする必要はありません。
制作への貢献や役割も含めて別に決められます。
赤字ならどうする?
映画の収益が出なかった場合、出資金が戻らないことがあります。
ここは出資者に明確に伝えておく必要があります。
本出資金について元本の返還を保証しない。
などと整理することがあります。
※実際の資金募集方法によっては、金融商品取引法その他の規制が問題になることがあるため、不特定多数から出資を募る場合は別途確認が必要です。
制作途中で一人が抜けたら?
たとえばBさんが、
もう関わりたくないから50万円返して。
と言った場合です。
すでにその資金を撮影費に使っていれば、返すことができません。
そのため、
原則返還しない
未使用分のみ返還する
他の人が持分を引き継ぐ
などを決めておきます。
制作中止になったら?
たとえば200万円集めて、150万円使ったところで制作中止になった場合です。
残り50万円について、
出資割合で返す
未払費用を精算してから返す
別用途に使わない
などを決めます。
まず未払費用を清算し、残額を返す形が分かりやすいことがあります。
残った機材は誰のもの?
制作費で、
カメラ
マイク
照明
パソコン
などを購入することがあります。
制作終了後、その機材が誰のものになるかも問題になります。
レンタルではなく購入するなら、所有者を決めておく方が安全です。
データや完成作品の権利は別
制作費を出したからといって、
撮影データ
完成映画
著作権
まで自動的に共有されるわけではありません。
お金の契約と、作品の権利は分けて決めます。
帳簿を共有する?
複数人で出資するなら、収支が分からないと不信感につながります。
そのため、
月次報告
撮影終了時報告
作品公開後の売上報告
などを決める方法があります。
規模が小さければ、共有スプレッドシートでも構いません。
領収書や請求書は残す
制作費を複数人で出すなら、
領収書
請求書
振込記録
を残します。
特に、
どの費用を誰が払ったか
が分かるようにしておきます。
契約では何を書く?
最低限、
各出資者
出資額
支払期限
資金の性質
資金用途
追加出資
立替精算
売上の精算順序
出資金回収
利益分配
収支報告
離脱
制作中止
残余財産
を決めます。
実際にはこう整理すると分かりやすい
たとえば、
Aは100万円、Bは50万円を本作品の制作費として拠出する。各出資者は、別途合意しない限り追加出資義務を負わない。制作に関して発生した立替金は、証憑を確認のうえ出資金の回収に先立って精算する。本作品による収益から必要経費を控除した後、各出資者の出資金を出資割合に応じて返還し、その後の利益を別途定めた割合で分配する。
という形です。
実際の契約内容は制作体制に合わせます。
結局、制作費を複数人で出すならどうすればいい?
1.お金の種類を分ける
出資・貸付・立替を混ぜません。
2.金額と期限を決める
誰がいつまでにいくら払うかです。
3.追加予算を決める
追加出資義務があるか確認します。
4.回収順序を決める
立替金、出資金、利益分配などです。
5.中止時の精算を決める
残金や購入物の扱いまで考えます。
まとめ
制作費を複数人で出すときは、
誰がいくら出すか
出資なのか貸付なのか
立替はどう精算するか
追加予算は誰が出すか
売上から何を先に返すか
利益をどう分けるか
中止時の残金をどうするか
を決めます。
特に重要なのは、「みんなでお金を出した」というだけで終わらせないことです。
同じ100万円でも、出資、貸付、立替では扱いが違います。
最初にお金の意味と戻し方まで決めておけば、作品完成後に「誰がいくら取り戻すのか」で揉めるリスクをかなり減らせます。
参考
※複数人で映画制作費を負担するときの出資・立替・回収方法について確認したい場合は、こちらからお問い合わせください。
