出資した人はどんな権利を持つ?
更新日:9月13日
結論からいうと、映画制作にお金を出しただけで、作品の著作権や監督権限まで自動的にもらえるわけではありません。
出資した人にどんな権利を持たせるかは、
利益分配を受けるのか
制作内容に意見を言えるのか
配信や販売の決定に関われるのか
完成作品の権利を持つのか
お金を返してもらうのか
を、最初に契約で決めます。
特に重要なのは、「お金を出した人」と「作品を作った人」と「作品の権利を持つ人」は、同じとは限らないことです。
この記事で分かること
出資すると映画の著作権を持てるのか
出資者は制作内容に口を出せるのか
売上や利益はどう分けるのか
出したお金は返してもらえるのか
契約では何を決めておくのか
まず、「出資」の意味を決める
映画制作で、
100万円出します。
と言っても、その100万円が何なのかで意味が変わります。
たとえば、
制作費として出す
後で返してもらう貸付
売上から回収する出資
利益分配を受けるための資金提供
などがあります。
単に「出資」と呼ぶだけでは曖昧です。
最初に、そのお金をどう扱うのかを決めます。
お金を出したら著作権も持てる?
自動的には持てません。
映画の著作権は、誰が資金を出したかだけで決まるわけではありません。
そのため、
制作費の50%を出したから、著作権も50%
とは限りません。
著作権を共同で持つなら、そのことを契約で整理します。
「出資比率=権利割合」ではない
たとえば、
Aさん 70%出資Bさん 30%出資
だったとしても、
著作権を70:30で持たなければならないわけではありません。
逆に、
権利は制作会社が100%持つ
出資者は利益分配だけ受ける
という形も考えられます。
お金と権利は別に決めます。
出資者は制作内容に口を出せる?
これも契約次第です。
たとえば、
お金を出した以上、主演をこの人にしてほしい。
ラストを変更してほしい。
と言われても、出資しただけで当然に演出権限が発生するわけではありません。
制作側としては、
演出に関与できるのか
重要事項だけ意見を聞くのか
制作内容には関与しないのか
を最初に決めておく方が安全です。
制作に関与しない出資もある
たとえば、
制作費100万円を出す。その代わり、作品の売上から一定割合を受け取る。ただし演出・編集には関与しない。
という形です。
この場合、出資者はお金を出しても、監督の演出には口を出さないという整理ができます。
逆に、重要事項だけ承認を必要にする方法もある
たとえば、
制作費を大幅に超える
主演を変更する
制作を中止する
著作権を第三者へ売却する
といった重要事項については、出資者の同意を必要とする形もあります。
つまり、日常の制作判断には関与しないが、大きな変更には関与するという設計です。
出したお金は返してもらえる?
ここも最初に決めます。
たとえば、
貸付
制作会社へ100万円貸す。
→ 原則として返済が必要です。
出資
映画が売れた場合に、売上から回収する。
→ 売れなければ全額戻らない可能性があります。
同じ「100万円を出す」でも、意味が全く違います。
「売れたら返す」なら順番を決める
たとえば配信などで売上が入った場合、
配信手数料等を差し引く
制作費を回収する
出資者へ出資金を返す
残った利益を分配する
などのルールを決めます。
どの順番でお金を戻すかは重要です。
出資金を回収した後も利益をもらう?
これも契約次第です。
たとえば、
出資額100万円を回収した後も、純利益の20%を受け取る。
という契約も考えられます。
一方、
出資額100万円を回収した時点で終了。
という形もあります。
「回収」と「利益分配」は分けて考えます。
「売上」と「利益」は違う
ここは必ず決めます。
たとえば映画の売上が100万円でも、
配信手数料
広告費
字幕費
映画祭費
配給手数料
などで50万円かかっていれば、残りは50万円です。
そのため、売上の20%なのか、経費を引いた利益の20%なのかで金額は大きく違います。
何を経費にするかも決める
利益分配をするなら、
配信手数料
宣伝費
映画祭応募料
字幕費
DCP制作費
配給手数料
など、何を先に差し引くか決めます。
こを曖昧にすると、
そんな費用まで経費にするの?
という話になりやすいです。
赤字になったら追加で払う?
これも決めます。
たとえば、当初200万円の予定が250万円になった場合、
出資割合に応じて追加負担する
制作会社が負担する
新しい出資者を探す
追加出資は任意
などがあります。
契約で決めておかないと、
最初に100万円出したんだから、もう払わない。
という人と、
共同出資なんだから追加も出して。
という人で揉めることがあります。
出資者は制作を止められる?
通常、出資しただけで自由に制作中止を命じられるわけではありません。
ただし契約で、
予算超過
重大な契約違反
制作不能
などの場合に、出資者が中止を求められるようにすることはあります。
制作側としては、どんな場合に介入できるのかを限定しておく方が分かりやすいです。
映画祭への出品にも口を出せる?
これも契約次第です。
たとえば出資者が、
映画祭より早く配信して売上を出したい。
と思うことがあります。
一方、監督は映画祭を優先したいかもしれません。
そのため、
映画祭出品
劇場公開
配信
販売
の決定方法を最初に決めておきます。
作品を売るときは誰が決める?
たとえば配給会社から、
この映画の権利を買いたい。
と言われた場合です。
出資者が権利者ではないなら、通常は権利を持つ制作会社等が判断します。
ただし契約で、一定額以上の権利譲渡には出資者の同意が必要とすることもできます。
出資者の名前はクレジットに載る?
必要なら決めます。
たとえば、
Executive Producer
Co-Producer
Special Thanks
協賛
などです。
お金を出したから自動的に「プロデューサー」になるわけではありません。
クレジットも契約で決めておくと分かりやすいです。
「出資者」と「プロデューサー」は同じ?
同じとは限りません。
出資だけする人もいれば、
資金調達
契約
配給
制作管理
まで行うプロデューサーもいます。
そのため、お金を出したことと、制作上の役割は別に整理する方がよいです。
帳簿や売上報告を見せる?
利益分配をするなら、出資者としては売上を確認したくなります。
そのため、
年1回売上を報告する
配信会社からの支払明細を共有する
一定期間ごとに収支報告する
などを決める方法があります。
いつまで利益分配する?
たとえば、
5年間
10年間
著作権存続期間中
配信契約が続く間
などです。
永久に利益分配義務が続く形にするのか、一定期間にするのかを決めます。
出資者が途中で抜けたいと言ったら?
たとえば、
やっぱりこの映画から降りたいから、100万円返して。
と言われる場合です。
すでに制作費として使っていれば、全額返金は難しいことがあります。
そのため、
出資後の任意撤回はできない
未使用分だけ返す
第三者へ権利を譲渡できる
など、離脱時の扱いを決めておきます。
映画が完成しなかったら?
ここも重要です。
映画が未完成でも、
ロケ代
出演料
機材費
はすでに使われています。
そのため、
未完成なら出資金全額返還
とすると、制作側に大きな負担が生じます。
制作中止の場合、
残金だけ返す
清算後の残額を割合で返す
原則返金なし
など、ルールを決めます。
出資者との契約には何を書く?
最低限、
出資額
支払時期
出資金の性質
返還の有無
制作への関与
重要事項の承認権
著作権の帰属
売上・利益分配
経費の範囲
収支報告
追加出資
離脱
制作中止
クレジット
を決めます。
実際にはこう整理すると分かりやすい
たとえば、
Aは本作品の制作費として100万円を拠出する。著作権は制作会社に帰属する。Aは演出・編集の決定には関与しない。本作品による収益から配信手数料その他必要経費を控除した後、まずAの出資額を回収し、その後の利益の20%をAへ分配する。制作が中止された場合は、未使用残金を清算のうえ返還する。
などとします。
内容は制作体制によって変わります。
結局、出資した人はどんな権利を持つ?
1.お金を出しただけでは著作権は発生しない
権利を持たせるなら契約で決めます。
2.制作への関与も自動ではない
意見を言える範囲を決めます。
3.利益分配を決める
売上か利益か、経費をどうするかも重要です。
4.返金条件を決める
貸付なのか出資なのかを明確にします。
5.作品が失敗した場合も決める
中止・赤字・追加費用まで考えます。
まとめ
映画制作に出資した人が持つ権利は、自動的には決まりません。
そのため、
著作権
制作への関与
最終決定権
出資金の回収
利益分配
収支報告
制作中止時の扱い
を契約で決めます。
特に重要なのは、「100万円出したから作品の10%を持っている」というように、お金と権利を自動的に結び付けないことです。
映画にお金を出す人、映画を作る人、映画の権利を持つ人。
この三者が誰なのかを最初に分けて考えると、共同制作の契約はかなり整理しやすくなります。
参考
※映画制作への出資について、出資者の権利や利益分配をどう定めるか確認したい場合は、こちらからお問い合わせください。
