イラスト・デザインを頼むときの契約
更新日:9月18日
結論からいうと、イラストやデザインを頼むときは、「何を作ってもらうか」だけでなく、完成したものをその後どう使うのかまで決めておくことが重要です。
最低限、
制作内容
報酬
納期
修正回数
納品データ
映画本編・ポスター・SNS・配信などの利用範囲
サイズ変更・トリミング・文字変更などの加工
著作権
外部素材や生成AIの使用
を確認しておきます。
特に注意したいのは、「制作費を払った=そのデザインを何にでも自由に使える」ではないことです。
映画・動画制作では、本編だけでなく、映画祭、SNS、広告、配信などへ利用が広がります。
完成してから一つずつ許可を取り直さなくて済むよう、最初から実際の使い方まで伝えて契約しておく方が実務的です。
この記事で分かること
イラスト・デザインを頼むとき何を決めるのか
修正や作り直しをどう扱うのか
元データまで納品してもらえるのか
ポスター・SNS・配信などにどこまで使えるのか
サイズ変更や加工をしてよいのか
著作権や著作者人格権をどうするのか
フォント・写真素材・生成AIを使った場合はどうするのか
まず、依頼内容と納品条件を決める
最初に、何を作ってもらうのかを具体的にします。
映画制作なら、
映画ポスター
タイトルロゴ
劇中イラスト
キャラクターデザイン
チラシ
SNS用画像
DVD・Blu-rayジャケット
劇中の架空広告
などがあります。
単に「映画のデザイン一式」としてしまうと、どこまでが報酬に含まれているのか分かりにくくなります。
ポスター1点なのか、そこからSNS用画像や配信用サムネイルまで作ってもらうのか。
最初に制作物を分けておく方が、後の追加料金や認識違いを減らせます。
サイズや仕様も同じです。
たとえばポスターでも、
B1
B2
A2
Web用
SNS用
配信サービス用
など、使う場所によって必要なデータが変わります。
映画祭への提出や配信が決まってから別サイズが必要になることもあるため、サイズ展開まで制作費に含むのかも確認しておきます。
報酬についても、
初稿は何案か
修正は何回までか
リサイズは含むか
別バージョンは追加料金か
まで決めておくと分かりやすくなります。
たとえば、
ポスターデザイン料50,000円。初稿1案、修正2回、Web用リサイズ2種類を含む。
という形です。
デザインでは、修正と作り直しの境目も問題になりやすいところです。
赤をもう少し暗くしてください。
という修正と、
やっぱり全体を別のテイストで作り直してください。
では、作業量が大きく違います。
そのため、軽微な修正は何回まで含むのか、大幅な方向変更は追加制作として扱うのかを決めておきます。
納品データも確認します。
完成データとしては、
JPEG
PNG
PDF
などがあります。
ただし、後から制作側で日付やキャスト名を変更したり、映画祭ごとのロゴを追加したりするなら、
Illustratorデータ
Photoshopデータ
その他編集可能な元データ
が必要になることもあります。
元データは当然にもらえるとは限りません。
完成画像のみを納品するデザイナーもいるため、後から編集したいなら、契約時に元データまで含むことを明確にしておきます。
完成したデザインを、どこまで使えるようにする?
映画のデザインは、完成データを一度受け取って終わりではありません。
たとえば映画ポスターなら、その後、
映画本編
映画祭
劇場
Instagram
X
YouTube
Webサイト
配信ページ
広告
DVD・Blu-ray
など、さまざまな場所で使う可能性があります。
ポスター制作を依頼したからといって、すべての媒体で当然に自由利用できるとは限りません。
そのため、契約では「ポスターとして使える」というだけでなく、作品の公開・宣伝に必要な媒体まで含めて利用範囲を決めておきます。
作ってもらったデザインを映画本編に入れる場合もあります。
たとえば、
劇中の看板
店内ポスター
タイトル画面
エンドロール
などです。
宣伝物として作ったものを本編にも使うなら、その利用も最初から伝えておいた方がよいでしょう。
さらに、映画の宣伝では同じデザインをそのまま使えるとは限りません。
縦長のポスターを横長のバナーにしたり、正方形のSNS画像にしたり、文字を追加したりします。
海外版なら、
タイトルを変更する
キャスト表記を変更する
背景色を変える
別言語を入れる
こともあります。
そのため、
サイズ変更
トリミング
文字追加
色変更
レイアウト変更
など、制作側で必要になる加工をどこまで認めてもらうのかも決めます。
特にタイトルロゴは、作品の顔として長く使うことがあります。
本編やポスターだけでなく、
続編
配信
DVD
グッズ
宣伝イベント
まで使う可能性があるなら、一回限りのデザインよりも長期的な利用を想定して契約する必要があります。
著作権と外部素材も確認する
原則として、外注したデザインやイラストの著作権は、実際に創作した制作者側に発生します。
制作費を支払っただけで、自動的に制作会社へ著作権が移るわけではありません。
そのため、
著作権を制作側へ譲渡する
著作権は制作者に残し、必要な範囲の利用許諾を受ける
のどちらにするのかを決めます。
必ずしも著作権譲渡にする必要はありません。
一作品のポスターとして、
本編
映画祭
SNS
Web
配信
広告
に十分使える利用許諾があれば、それで足りることもあります。
一方で、
シリーズ作品
続編
キャラクター展開
商品化
長期的なブランド利用
を予定しているなら、著作権譲渡まで検討することがあります。
また、著作権とは別に著作者人格権があります。
著作者人格権は、著作権を譲渡しても制作側へ移る権利ではありません。
制作側でサイズ変更や文字変更、レイアウト変更などを行う必要がある場合には、必要に応じて、
本作品の制作・宣伝に必要な範囲で著作者人格権を行使しない。
といった内容を決めておく方法があります。
さらに、完成したデザインの中には、デザイナー本人が作ったもの以外の素材が含まれていることがあります。
たとえば、
有料フォント
フリーフォント
ストックフォト
テクスチャ
イラスト素材
アイコン
生成AIで作った素材
などです。
フォントは、デザイナーが契約して使えるからといって、制作会社側も同じ条件で使えるとは限りません。
編集可能なIllustratorデータを受け取っても、そこに使われている有料フォントまで一緒に利用できるわけではないことがあります。
後から制作側で編集するなら、
フォント名
商用利用できるか
映像・広告で使えるか
制作側でも同じフォントを利用できるか
まで確認しておくと分かりやすくなります。
写真や素材サイトの素材も同じです。
デザイナーが第三者素材を使っているなら、何を使ったのかと、その利用条件を確認します。
完成デザインだけを受け取ると、制作側が第三者素材の存在を知らないまま、別媒体や商品へ利用を広げてしまうことがあります。
生成AIを使った場合も確認しておきたいところです。
たとえば、
どの部分に生成AIを使ったのか
どのサービスを使ったのか
商用利用できるプランだったか
既存作品や第三者素材を入力していないか
などです。
制作側として生成AIの使用を把握しておきたいなら、
生成AIを使用する場合は、事前に制作側へ知らせる。
と契約で決めておくこともできます。
生成AIを使った素材については、利用規約や既存作品との類似も別に確認します。
実績公開やクレジットも、公開前に決めておく
デザインが完成すると、制作者側も実績として紹介したくなることがあります。
ただ、映画公開前のポスターをデザイナーが先にSNSへ掲載すると、情報解禁の予定が崩れてしまいます。
そのため、
制作者が本制作物をポートフォリオやSNSに掲載する場合は、制作側の情報解禁後とする。
など、実績公開の時期を決めておくと分かりやすくなります。
クレジットについても、
Design by 〇〇
Illustration by 〇〇
などを表示するのか、表示するならどこに入れるのかを必要に応じて決めます。
映画のエンドロールには表示するが、ポスターには入れない、といった決め方もできます。
実際にはこう頼むと分かりやすい
デザイナーへ依頼するときは、最初から利用方法までまとめて伝えておくと認識を合わせやすくなります。
たとえば、
このデザインは映画本編、映画祭、ポスター、SNS、Webサイト、配信ページ、広告で使用する予定です。媒体ごとにサイズ変更、トリミング、文字変更をする可能性があります。後から修正できるよう、完成データと編集可能な元データもお願いします。外部の写真・フォント・素材・生成AIを使用した場合は、その内容と利用条件も共有してください。
といった形です。
そのうえで契約では、
何を制作するか
報酬・納期
修正回数
大幅変更時の追加料金
納品形式
元データの有無
利用できる媒体
加工の可否
著作権
著作者人格権
外部素材
生成AI
実績公開
クレジット
を整理します。
一つひとつ難しい契約条項を増やすことが目的ではありません。
完成後に制作側が実際にやりたいことを、先に契約へ反映しておくことが重要です。
まとめ
イラスト・デザインを頼むときは、完成データを受け取るところまでではなく、その後、映画制作側がどう使い続けるのかまで考えて契約します。
特に確認したいのは、
何を、どの仕様で作ってもらうか
報酬・納期・修正回数
元データまで納品してもらうか
本編・映画祭・SNS・配信・広告で使えるか
サイズ変更や加工ができるか
著作権を譲渡するか、利用許諾にするか
著作者人格権をどう扱うか
フォント・写真・素材・生成AIが使われていないか
実績公開やクレジットをどうするか
です。
ポスターやタイトルロゴは、完成したあと何度も形を変えて使われます。
「デザインを作ってもらう契約」ではなく、「作ってもらったデザインを作品の中でどう使っていくかまで決める契約」にする。
映画・動画制作では、この考え方の方が実務に合っています。
参考
※映画・動画制作でイラスト・デザインを依頼する際の契約内容や利用範囲について個別にご相談が必要な場合は、お問い合わせページをご利用ください。
