船・ボートを使って海上撮影するときの注意
更新日:9月6日
船やボートに乗って海上から撮影する場合は、陸上のロケ地で撮影するときとは少し考え方が変わります。
少人数の撮影で、適法に運航されている遊覧船・クルーズ船・海上タクシーなどを利用するなら、撮影者自身が船の運航に関する許可を取るところから始める必要は通常ありません。
まず船の運航事業者に、撮影目的で乗船したいこと、人数、機材、希望する航路や撮影方法を相談します。
一方で、知人の船や自分たちで用意したボートを使う場合は、操縦資格、船の航行区域、乗船人数、ライフジャケット、海上の交通ルールなどを別に確認する必要があります。
特に小規模撮影では、無理に「撮影専用の船」を作ろうとせず、普段から人を乗せて運航している事業者へ相談する方法が一番分かりやすいでしょう。
この記事でわかること
船を使った小規模撮影で最初に確認すること
遊覧船やボートを借りて撮影するときの考え方
知人の船を使う場合の注意
ライフジャケットの扱い
船上でカメラ・三脚を使うときの注意
船を止めたり何度も同じ場所を通ったりできるのか
港から出入りするときに気をつけたいこと
東京湾で撮影するときの海上交通ルール
船を使いたいなら、まず「誰が運航する船か」を確認する
海上撮影では、「船を借りれば撮れる」と考えがちですが、最初に確認したいのは船そのものより、誰がその船を運航するのかです。
例えば、遊覧船・クルーズ船・海上タクシーなどの事業者であれば、その事業者が船を運航し、撮影者は乗客として乗船する形になります。
一方で、
知人所有のプレジャーボート
自分たちでレンタルした船
自分で所有している船
を使うなら、操縦する人や船そのものについて確認する事項が増えます。
小規模撮影なら、最初にこの二つを分けて考えると整理しやすくなります。
遊覧船や海上タクシーを使うなら、撮影目的を最初に伝える
通常運航している船へ乗って、手持ちカメラで景色を撮る程度なら、一般の乗船とほとんど変わらない場合もあります。
ただし、
出演者を立たせる
同じ場所を何度も撮る
三脚を使用する
機材を複数持ち込む
通常とは違う航路を希望する
撮影のため船を貸し切る
となれば話が変わります。
予約時に、「〇人で映像撮影をしたい」と伝えておきましょう。
後から現場で、「実は三脚を立てたい」「この場所でもう一度旋回してほしい」と頼むより、あらかじめ撮影内容を伝えておいた方が、できること・できないことを確認できます。
「船をチャーターする相手」はきちんと確認する
撮影用に小型船を貸し切る場合もあります。
ここで注意したいのが、人を船で運ぶサービスには海上運送法上の手続が関係することです。
国土交通省は、海上で船舶を使って人を運送する事業について、海上運送法に基づく許可・登録などが必要と案内しています。
小型船による海上タクシーや小型クルーズなども対象となる場合があります。
そのため、「知り合いが船を持っているから、お金を払って撮影隊を乗せてもらう」といった場合は、単純な個人間のレンタルとは限りません。
小規模撮影で船を手配するなら、撮影や貸切利用を受け付けている船舶運航事業者を利用する方が分かりやすいでしょう。
知人の船に乗せてもらう場合
友人や知人がプレジャーボートを持っていて、「撮影なら乗せてあげるよ」という場合もあります。
家族や友人を自家用船に無償で乗せること自体と、事業として他人を運ぶことは同じではありません。
国土交通省も、自家用船で家族・友人などを無償で運ぶ場合を、一般不定期航路事業の登録が不要となる例として示しています。
ただし、その場合でも、
誰が操縦するか
必要な免許を持っているか
船の定員を超えていないか
その船が航行できる区域か
などは確認が必要です。
「友達の船だから自由」という意味ではありません。
小型船ではライフジャケットが基本
小型船舶では、船室外にいる乗船者について、原則として国の安全基準に適合したライフジャケットを着用させる義務が船長にあります。
国土交通省は、2018年2月から小型船舶の乗船者についてライフジャケット着用義務の範囲を拡大しています。
船室外で撮影する場合は、基本的にライフジャケットを着けて撮影するものと考えておいた方がよいでしょう。
「衣装に合わないから外したい」という撮影都合だけで外せるとは考えないようにします。
衣装として目立たせたくない場合は、利用する船の事業者や船長に事前に相談し、安全基準を満たす範囲で撮影方法を考えます。
ライフジャケットを消す前提で衣装を決めない
作品撮影だと、「この衣装に救命胴衣があると画にならない」という問題が出ます。
しかし海上では、衣装より安全設備が優先です。
最初から、ライフジャケットを衣装の一部として見せる上着との組み合わせを考えるライフジャケットが映りにくいカメラ位置にするなど、撮影側で対応できないか考えた方が現実的です。
「本番の数十秒だけ外す」という前提で撮影計画を作らないようにしましょう。
船上では三脚が使いやすいとは限らない
船の上で三脚を立てれば安定しそうですが、実際には船が揺れています。
さらに、
通路を塞ぐ
乗客が脚につまずく
突然の揺れで倒れる
船の設備にぶつかる
といった問題もあります。
少人数撮影なら、手持ちジンバル、小型の固定機材などの方が使いやすいこともあります。
三脚・ライトスタンド・大型機材を使いたい場合は、予約時に船側へ確認します。
機材は固定できるようにしておく
海上撮影では、普段のロケ以上に機材の落下に注意します。
カメラレンズ
バッテリー
スマートフォン
マイク
小物
などを船縁へ置くと、揺れた瞬間に海へ落ちることがあります。
ストラップを使う、ケースを閉じる、使用しない機材を固定するなど、落下しない収納方法を考えておきます。
出演者の衣装や小道具も同じです。
紙類や軽い小物は風で飛びやすいため、船上へ持ち込む物を必要最低限にするのも有効です。
「ここで船を止めてください」ができるとは限らない
海上撮影では、「背景がちょうどいいので、この場所で止まりたい」と思うことがあります。
しかし、船は道路上の自動車のように、好きな場所で自由に停止できるわけではありません。
周囲には、
他の船舶
航路
港への出入口
浅瀬
漁業活動
などがあります。
港内や船舶交通の多い海域では、特別な航行ルールもあります。
そのため、撮影位置や船の動かし方については船長の判断を優先します。
「もう一度同じ場所を通ってほしい」という希望があるなら、事前に相談しておくとよいでしょう。
同じカットを何度も撮れるとは限らない
陸上なら、「もう一度お願いします」で同じ動きを繰り返せます。
船では、
潮流
風波
他船の動き
によって、まったく同じ位置へ戻ることが難しい場合があります。
小規模撮影なら特に、
1回で完璧な位置を狙いすぎない
長めに回して使える部分を選ぶ
複数テイクが必要なら最初から船長へ伝える
といった撮り方が現実的です。
船酔いも撮影計画に入れておく
出演者だけでなく、カメラマンやスタッフが船酔いすることもあります。
ファインダーやモニターを長時間見続ける撮影は、通常の乗船より酔いやすくなることがあります。
撮影時間を詰め込みすぎず、
乗船直後から長時間撮り続けない
休憩できる時間を作る
必要以上に人数を乗せない
などの準備も考えておきましょう。
少人数なら、陸上スタッフまで全員船へ乗せる必要があるか検討することもできます。
天気だけでなく、風・波・潮を確認する
海上撮影では、晴れているかどうかだけでは撮影可否を判断できません。
海上保安庁は、出航前に少なくとも、天候風向・風速波高満潮・干潮時刻日の出・日の入りなどを確認するよう案内しています。
また、海上保安庁の「海の安全情報」では、各地の風向・風速・波高などの現況や海上安全情報を確認できます。
撮影前日に晴れ予報でも、船の運航事業者から中止・変更の連絡が来ることはあり得ます。
その場合は撮影を優先せず、船長・運航事業者の判断に従います。
港から出航するなら港内のルールもある
船を使う撮影では、海上だけでなく、出航する港も関係します。
港内では港則法による航行ルールがある港があります。
海上保安庁は、指定された港について、航路の航行や他船との関係など特別な交通ルールがあることを案内しています。
通常の遊覧船や海上タクシーを利用する場合、こうした運航判断は船長や事業者側が行います。
撮影者が航行ルールを一から調べて操船へ指示する必要はありません。
むしろ、「この場所で撮りたい」という希望を伝えたうえで、実際にそこを航行できるかは船長に判断してもらうという役割分担にした方が安全です。
東京湾では特別な海上交通ルールがある
東京湾は船舶交通が非常に多い海域です。
海上交通安全法では、東京湾・伊勢湾・瀬戸内海など、船舶交通が特に多い海域について、航路航行義務などの特別な交通ルールを定めています。
そのため東京湾で、
「レインボーブリッジをこの角度から撮りたい」
「大型船の近くを通りたい」
といった希望があっても、撮影都合だけで航路を決めることはできません。
小規模撮影なら、東京湾での撮影経験がある船舶事業者へ、撮りたい背景や画角を見せて相談するのが現実的です。
船を着ける場所も自由には選べない
海上撮影が終わったあと、「この岸壁でスタッフだけ降ろしてください」と自由にできるとも限りません。
船を接岸・乗降できる場所は限られます。
公共ふ頭、桟橋、船着場などはそれぞれ管理されており、利用条件があります。
乗船場所と下船場所を変えたい場合は、船の予約時に相談しておきます。
陸側の撮影も続けるなら、乗降する施設について撮影可能かも別に確認します。
海上から陸を撮影する場合
船から、
建物
港
海浜公園
橋
街並み
などを背景として撮る場合があります。
海上から遠景を撮るだけなら、画面に映るすべての施設へ撮影許可を取るという話ではありません。
一方で、
特定施設のすぐ近くへ船を寄せる
施設の桟橋を使用する
敷地へ上陸する
となれば、施設管理側の確認が別に必要になることがあります。
「映すこと」と「その施設を使うこと」は分けて考えると整理しやすいでしょう。
小規模な海上撮影なら、こう進める
数人程度の撮影なら、まず次の順番で考えると進めやすくなります。
1 撮りたい画を決める
船上の出演者を撮るのか、海から陸を撮るのかを決めます。
2 乗船人数と機材を決める
船へ乗る必要がある人だけに絞ります。
3 撮影利用に対応できる船舶事業者を探す
遊覧船、海上タクシー、チャーターボートなどに相談します。
4 撮影内容を最初から伝える
人数、機材、希望する時間・場所・カットを伝えます。
5 船側の安全条件に合わせて撮影方法を調整する
航路、停止場所、ライフジャケット、機材配置などは船長と相談します。
6 当日の気象・海象で最終判断する
撮影予定があっても、安全に運航できなければ中止・変更します。
まとめ
船やボートを使った海上撮影では、少人数だからといって難しい手続を全部自分で行う必要はありません。
小規模撮影なら、まず撮影利用に対応している遊覧船・海上タクシー・チャーターボートなどへ相談する方法が分かりやすいでしょう。
その際は、
人数
機材
撮りたい場所
撮りたい画
船を何度も動かしたいか
まで最初に伝えておきます。
一方、自分たちで船を用意する場合は、
操縦資格
定員
航行区域
ライフジャケット
海上交通ルール
などの確認が必要になります。
そして海上では、撮影よりも船の安全運航が優先です。
撮影側が画を決め、船長が安全に実現できる範囲を判断する。
この役割を分けて考えると、少人数の海上撮影でも無理のない計画を立てやすくなります。
参考
※船やボートを使った撮影について、陸側の撮影手続も含めて確認先が分からない場合は、お問い合わせからご相談ください。
