登場人物に既存曲を歌わせたい|許可は必要?
更新日:9月6日
映画やドラマの中で、登場人物が有名な曲を口ずさんだり、カラオケで歌ったりするシーンを入れたいことがあります。
この場合、市販CDの音源を使っていなくても、曲そのものの著作権は関係します。
俳優が自分の声で歌うのであれば、市販音源そのものを利用する場合とは違い、通常はその市販音源についてのレコード会社などの権利処理は問題になりません。
一方で、歌詞やメロディーを使っている以上、作詞・作曲についての著作権は残ります。
そのため、「本人が歌っているから自由に使える」というわけではありません。
この記事で分かること
登場人物に既存曲を歌わせるとき許可が必要なのか
市販音源を使う場合との違い
アカペラで歌う場合はどうなるのか
カラオケ音源を使う場合の注意点
歌詞を一部だけ歌う場合の考え方
替え歌や歌詞変更をするときに何が変わるのか
結局どうすればいいのか
俳優が歌っても、曲の著作権は残る
たとえば、登場人物が突然、「この曲好きなんだよね」と言って、有名曲のサビを歌うシーンを撮影するとします。
この場合、市販されているCD音源を再生しているわけではありません。
しかし、俳優が歌っているのは既存の楽曲です。
その曲には、
作詞家による歌詞
作曲家によるメロディー
について著作権が存在することがあります。
そのため、俳優自身が歌ったからといって、著作権の問題がなくなるわけではありません。
アカペラなら自由に歌える?
伴奏を使わず、俳優がアカペラで歌った場合でも同じです。
アカペラにすれば、市販音源そのものは使いません。
そのため、特定のCDや配信音源についてのレコード会社などの権利処理は基本的には問題になりません。
ただし、歌詞とメロディーは既存曲のものなので、曲そのものの著作権については確認が必要です。
つまり、「伴奏なし=著作権も関係ない」ではありません。
映画の中に歌声を収録すること自体が、楽曲の利用になる
映画の中で俳優が歌った音声を録音し、その状態で映画を完成させる場合、楽曲を映画に固定して利用することになります。
J
ASRACでは、劇場用映画について、管理楽曲を映画へ録音して利用する場合の手続きを設けています。
JASRACの管理楽曲であれば、映画への録音について管理状況を確認し、必要な手続きを行うことになります。
ただし、すべての楽曲についてJASRACが映画利用を管理しているとは限りません。
使いたい曲について、J-WIDなどで管理状況を確認する必要があります。
市販CDを流しながら歌う場合は別の権利も出てくる
たとえば、登場人物が部屋で市販CDを再生しながら一緒に歌うシーン。
この場合は、俳優の歌声だけではなく、市販されている音源そのものも映画に入ります。
すると、作詞・作曲についての著作権だけでなく、実演家やレコード会社など、市販音源に関する著作隣接権なども確認する必要があります。
JASRACも、第三者が制作した音源を使用する場合には、音源制作者や実演家などの権利について別途許諾が必要になると案内しています。
市販音源をそのまま使う場合の権利関係については、別記事「市販の曲を映画や動画に使いたい|誰の許可が必要?」で詳しく解説しています。
カラオケ音源を使えば大丈夫?
カラオケで歌うシーンも注意が必要です。
俳優が歌っている歌詞やメロディーだけでなく、カラオケ音源そのものにも権利があります。
そのため、「市販CDではなくカラオケだから自由」とは限りません。
カラオケサービスや音源の提供元によっては、映像作品への収録を想定していない利用条件になっていることもあります。
映画の撮影で既存のカラオケ音源をそのまま収録するのであれば、その音源を映像作品に利用できるか確認する必要があります。
撮影用に自分たちで伴奏を制作する場合には、市販のカラオケ音源についての権利問題は避けられますが、既存曲そのものの著作権は残ります。
ほんの一節だけ歌うなら大丈夫?
登場人物がほんの一節だけ口ずさむ場合、「短いから自由に使える」という一般的なルールはありません。
たとえば、有名なサビや特徴的な歌詞を短く歌った場合でも、その楽曲を作品の中で利用していることには変わりありません。
一方で、何をどの程度利用しているかは、具体的な判断に影響することがあります。
ただし、3秒なら大丈夫1フレーズなら大丈夫といった決まった基準はありません。
短時間の楽曲利用については、別記事「数秒だけなら市販曲を使っても大丈夫?」で詳しく解説しています。
「鼻歌なら大丈夫」とも限らない
歌詞を歌わず、「ラララ」などでメロディーだけを口ずさむ場合もあります。
この場合、歌詞は使っていません。しかし、特徴的なメロディーをそのまま使っているのであれば、作曲された楽曲を利用していることになります。
「歌詞がないから著作権は関係ない」とは限りません。
作品の中で特定の曲だと分かる形でメロディーを利用するのであれば、その曲の権利関係を確認する必要があります。
歌詞を少し変えたら「別の曲」になる?
なりません。
たとえば、
人物名だけ変える
一部の単語を変える
面白い歌詞に変更する
ストーリーに合わせて歌詞を書き換える
といった場合には、単純な楽曲利用とは別に、替え歌や改変の問題が出てきます。
JASRACは、編曲・訳詞・替え歌などについて、JASRACが通常管理している利用許諾とは別に、原著作者や音楽出版社などの許諾が必要になる場合があると案内しています。
これは著作者人格権の一つである同一性保持権や、翻案権などが関係するためです。
そのため、「権利処理が面倒だから少し歌詞を変えよう」という方法では解決しません。
替え歌については、別記事「替え歌を映画や動画で使いたい|大丈夫?」で詳しく解説しています。
YouTube動画で歌う場合は扱いが違うことがある
YouTubeなど一部の動画投稿サービスは、JASRACと利用許諾契約を結んでいます。
JASRACは、こうした契約済みのUGCサービスでは、一般ユーザーが一定の範囲でJASRAC管理楽曲を利用した動画を投稿する際、個別にJASRACへ許諾手続きを行わなくてもよい場合があると案内しています。
ただし、
市販音源を使う
カラオケ音源を使う
替え歌をする
広告目的の動画に使う
などの場合には、別途確認が必要になることがあります。
また、YouTubeで利用できることと、同じ映像を劇場公開映画やCMとして使えることは同じではありません。
どこで公開する作品なのかまで含めて考える必要があります。
撮影前に歌う曲を決めておく
歌唱シーンは、撮影してしまってから曲を変更するのが難しい場面の一つです。
俳優の口の動きや芝居が曲と結び付いているため、
「権利処理できなかったから別の曲に差し替えよう」
が簡単にはできません。
そのため、既存曲を登場人物に歌わせる予定があるなら、
何の曲を歌うのか
どの部分を歌うのか
アカペラなのか
伴奏を使うのか
市販音源やカラオケ音源を使うのか
歌詞を変更しないか
映画・配信・YouTubeなど、どこで公開するのか
を撮影前に確認しておく方が安全です。
既存曲を歌う場面は、撮ってから考えるより、脚本段階で権利関係を確認しておく。
これが一番現実的です。
結局、登場人物に既存曲を歌わせるならどうすればいい?
歌唱シーンは、撮影後に変更しにくいため、撮影前に整理しておきます。
1.歌わせる曲を決める
まず曲を決め、J-WIDなどで著作権の管理状況を確認します。
俳優自身が歌う場合でも、歌詞やメロディーの著作権は残ります。
2.アカペラか伴奏付きか決める
アカペラや制作側で新しく伴奏を作るのであれば、市販音源を使う場合より権利関係を整理しやすくなります。
市販CDや既存のカラオケ音源を使う場合には、その音源についての権利も確認します。
3.歌詞やメロディーを変更しないか確認する
原曲どおり歌うのか、
替え歌にする
歌詞を変更する
大きくアレンジする
のかで必要な確認が変わります。
改変する場合は、通常の楽曲利用とは別の許諾が必要になることがあります。
替え歌については、別記事「替え歌を映画や動画で使いたい|大丈夫?」で詳しく解説します。
4.許可が難しければ曲を変える
特定の曲である必要がなければ、
著作権の保護期間が終了した曲
オリジナル曲
利用条件が明確な楽曲
へ変更する方法もあります。
撮影してから歌だけ差し替えるより、撮影前に使える曲を選ぶ方がはるかに簡単です。
まとめ
登場人物が既存曲を歌う場合は、
俳優本人が歌っても曲の著作権は残る
アカペラでもメロディーの著作権は関係する
市販音源を使わなければ原盤の問題は整理しやすい
カラオケ音源を使う場合は、その音源の権利も確認する
「一節だけ」「鼻歌だけ」なら自由という決まりはない
替え歌や歌詞変更は別途確認する
撮影前に曲を決めて権利確認する
という流れになります。
歌唱シーンは、「撮ってから何とかする」より「使える曲を決めてから撮る」方が安全です。
参考
※映画や動画の中で既存曲を歌わせる場合の権利処理や、撮影前に確認すべき事項について知りたい場合は、こちらからお問い合わせください。
