数秒だけなら市販曲を使っても大丈夫?
更新日:9月6日
映画や動画に有名な曲を少しだけ使いたいとき、
「数秒だけなら大丈夫」
「5秒以内なら著作権に引っかからない」
といった話を見かけることがあります。
でも、著作権には「○秒までなら自由に使える」という一般的なルールはありません。
数秒であっても、その曲を作品の中で意図的に使うのであれば、著作権や音源の権利について確認が必要になることがあります。
一方で、撮影中に店内BGMがごく短く入り込んだような場合は、そもそも「意図的に楽曲を使った」のとは別の考え方になることがあります。
大事なのは、何秒使ったかだけではなく、どういう形でその音楽が入っているのかです。
この記事で分かること
「数秒なら大丈夫」というルールがあるのか
5秒・10秒などの目安が法律上決まっているのか
市販曲を短く使う場合でも確認が必要になる理由
BGMとして意図的に使う場合と、偶然入り込んだ場合の違い
YouTubeなどで短時間使う場合の注意点
短く使いたいときに現実的に考えるポイント
「5秒までならOK」という法律はない
まず押さえておきたいのは、
著作権法に「5秒までなら自由」「10秒未満なら許可不要」という規定はない
ということです。
たとえば、有名な曲のサビを3秒だけ映画に入れたとしても、
「3秒しか使っていないから自由に使える」
とは言えません。
逆に、短い利用だから必ず問題になるという意味でもありません。
著作権では、利用した時間だけでなく、
どの部分を使ったのか
どのような目的で使ったのか
作品の中でどの程度重要なのか
どのような利用方法なのか
なども関係します。
サビの3秒と、目立たない数秒では意味が違う
同じ「3秒」でも、使い方はかなり違います。
たとえば、
誰でも分かる有名なサビを強調して3秒使う
登場人物の感情を表すために曲を印象的に入れる
エンディングで曲の一部を流す
といった場合は、短時間でもその楽曲を作品の表現として積極的に利用しています。
一方で、
遠くの店から一瞬音楽が聞こえる
通行中の車から音楽が少し聞こえる
撮影中に周囲のBGMが偶然入った
といった場合は、意図的にBGMとして使ったケースとは事情が違います。
そのため、「何秒か」だけで判断するのは危険です。
市販曲をBGMとして使うなら、短くても権利確認が必要
編集時に、「このシーンにこの曲を3秒だけ入れよう」と意図的に市販曲を挿入するのであれば、基本的にはその楽曲を作品の中で利用していると考えます。
市販の音源をそのまま使う場合には、
作詞・作曲に関する著作権
レコード会社や実演家などに関する著作隣接権・原盤の権利
を確認する必要があります。
これは、30秒使う場合だけではなく、短時間の利用でも同じです。
「短いから権利処理はいらない」とは限りません。
引用なら数秒使える?
音楽についても、著作権法上の「引用」が成立する場合はあります。
ただし、「短いから引用になる」わけではありません。
引用には、
公表された著作物であること
引用する必要性があること
自分の表現と引用部分が明確に区別されていること
自分の表現が主で、引用部分が従になっていること
出所を明示すること
など、一定の条件があります。
たとえば、音楽評論の動画で特定のフレーズについて具体的に解説するために必要な範囲で使う場合と、
「この曲が好きだから映画のBGMに使う」
場合では、意味がまったく違います。
後者を「数秒だから引用」とするのは難しいでしょう。
撮影中に偶然入った音楽は別に考える
街中、店舗、イベント会場などで撮影していると、意図せず音楽が録音されることがあります。
この場合は、編集で市販曲を意図的に挿入したケースとは分けて考える必要があります。
著作権法には、撮影や録音などの際に、本来の対象とは別の著作物が付随して入り込む場合について、「付随対象著作物」として一定の範囲で利用できる規定があります。
そのため、「店内BGMが数秒入った」というケースで重要なのは、数秒だったから大丈夫なのではなく、撮影の本来の対象ではない音楽が付随して入ったのかという点です。
店内BGMについては、別の記事で詳しく説明します。
YouTubeなら短く使っても大丈夫?
YouTubeでは、
「数秒だけならContent IDに引っかからない」
「短くすれば削除されない」
といった話を見かけることがあります。
ただし、YouTube上で検出されるかどうかと、著作権上利用できるかどうかは別です。
自動検出されなかったから合法になるわけではありません。
また、YouTubeなど一部のサービスでは、サービス運営会社とJASRACなどが包括契約を結んでいる場合があります。
それによって、一定の条件下で投稿者が個別の著作権手続きをしなくても利用できる楽曲があります。
しかし、市販されている音源そのものについては、レコード会社や実演家などの権利が別に存在します。
「YouTubeだから」「数秒だから」という理由だけでは判断できません。
「短くすれば安全」ではなく、「どう使うか」で考える
市販曲については、3秒なら安全、5秒なら危険というような明確な線引きはありません。
確認したいのは、
編集で意図的に入れたのか
撮影時に偶然入ったのか
市販音源そのものを使っているのか
自分たちで演奏したのか
BGMとして使っているのか
楽曲について解説するために使っているのか
どこで公開するのか
です。
特に、映画やCMなどで特定の市販曲を演出として使いたいのであれば、「ほんの数秒だから大丈夫だろう」ではなく、最初から必要な権利処理を確認するのが安全です。
結局、数秒だけ曲を使いたいときはどうすればいい?
まず、秒数を基準に判断しないことが大切です。
編集で意図的に曲を入れるなら
3秒でも5秒でも、市販曲を作品のBGMや演出として意図的に入れるのであれば、その楽曲を利用しているものとして必要な権利を確認します。
市販音源そのものを使う場合は、作詞・作曲だけでなく、音源側の権利も確認します。
撮影時に偶然入ったなら
店内BGMや街中の音楽などが撮影の結果として付随的に入り込んだ場合は、意図的にBGMを挿入したケースとは分けて考えます。
この場合は、著作権法上の付随対象著作物に当たるかを確認します。
音楽を解説するために使うなら
評論や解説などのために楽曲の一部を利用する場合には、「引用」が成立するかを検討する余地があります。
ただし、短いことだけを理由に引用にはなりません。
迷ったら「短くする」のではなく使い方を変える
権利処理を避けるために、「10秒を3秒にしよう」とするより、
権利処理できる曲に変更する
オリジナル曲を使う
フリーBGMを使う
偶然入り込んだ音なら実際の入り方を確認する
と考える方が確実です。
まとめ
市販曲には、「〇秒までなら自由に使える」という一般的なルールはありません。
3秒でも意図的に使えば権利確認が必要になることがある
有名なサビなどは短くても作品内で強い意味を持つ
偶然入り込んだ音楽は別の考え方ができる
引用も「短いから成立する」わけではない
YouTubeの自動検出を回避できるかどうかと合法性は別
です。
秒数を減らして安全にするのではなく、その音楽をどう利用しているのかで判断しましょう。
参考
※映画や動画で市販曲を短時間使用する場合の権利関係について確認したい場合は、こちらからお問い合わせください。
