海岸は自由に使える?――撮影で許可・届出が必要になる境目
更新日:9月6日
海岸は一般の人が自由に利用できる場所も多く、少人数で普通に撮影するだけなら、許可や届出が必要ない場合があります。
ただし、
一定範囲を継続して使用する
機材や設備を置く
一般利用者の利用に影響する
砂を掘るなど海岸そのものに手を加える
といった使い方になると、一時使用届や海岸法上の許可などが関係することがあります。
「自由に入れる場所=撮影でも何をしても自由」ではない、というのがポイントです。
この記事でわかること
海岸の「自由使用」とは何か
少人数撮影なら手続不要の場合
一時使用届が必要になる場合
占用や行為許可が問題になる場合
三脚や簡易機材ならどう考えるか
一般利用者を排除できるのか
海岸には「自由使用」が原則となっている場所がある
公共の海岸では、散歩や釣りなど、一般の人が通常の方法で利用することについて、海岸管理者から個別の許可を受けずに利用できる場所があります。
例えば千葉県は、県が管理する海岸について、海岸は自由使用が原則であり、釣りや散歩などは自由に利用できると案内しています。
北海道開発局でも、海岸保全区域内の土地について、釣りや散歩などは自由使用であり、占用許可は必要ないと説明しています。
つまり、海岸に入るたびに海岸管理者の許可が必要になるわけではありません。
撮影についても、規模や方法によっては、特別な許可手続を必要としない場合があります。
「自由使用」だから撮影隊が自由に使えるわけではない
ここは特に注意が必要です。
海岸が自由使用だからといって、撮影場所を撮影隊だけで確保できるという意味ではありません。
神奈川県は、海岸は自由使用が原則であり、一時使用について情報提供をした場合でも、独占的な使用を保障するものではないと案内しています。
例えば一般利用者に対して、
「撮影中なのでここには入らないでください」
「カメラに映るので、この範囲を通らないでください」
と当然に指示できるわけではありません。
撮影のために一時使用の届出や連絡をしたとしても、その場所を予約したことや、貸切にしたこととは別です。
一般利用者がいる海岸では、通行や利用を妨げない撮影方法を考える必要があります。
少人数の撮影なら手続が不要な海岸もある
撮影だから必ず届出が必要、という全国共通のルールもありません。
例えば神奈川県横須賀土木事務所では、管理する海岸について、
少人数での撮影
他の海岸利用者の利用を制限しない
テントなどの工作物を設置しない
という条件を満たす場合は、許可などの手続は不要と案内しています。
一方、同じ神奈川県でも、藤沢土木事務所では撮影について「海岸一時使用届」という形で任意の情報提供を求めています。
つまり、撮影なら全国どこでも同じ手続ではありません。
撮影する海岸を管理する窓口のルールを確認する必要があります。
「一時使用届」は全国共通の撮影許可ではない
海岸撮影でよく見かけるのが、一時使用届一時使用連絡票海岸使用申出書などです。
名称も扱いも管理者によって異なります。
例えば千葉県では、テレビ撮影やドローン撮影などで一時的に仮設物を設置して海岸を利用する場合、海岸管理者が利用状況を把握するため、一時使用届の提出を求めています。
さらに千葉県では、2026年現在、業として河川・海岸で撮影を行う場合などについて、電子申請による一時使用の届出制度も設けています。
一方、神奈川県の一部では、一時使用届や連絡票を任意の情報提供として扱っています。
したがって、「一時使用届」という名前だから全国同じ制度と考えない方が安全です。
提出が必要なのか、任意なのか、どのような撮影が対象になるのかまで確認します。
同じ県内でも取扱いが違うことがある
さらに細かいのが、同じ都道府県内でも取扱いが統一されているとは限らないことです。
千葉県山武土木事務所では、業として撮影を行う場合などについて申出を求め、企画書や位置図・配置図などを添付して、撮影予定日の5営業日前までに提出するよう案内しています。
一方、安房土木事務所では、
映画・ドラマ・CMなどの撮影
コスプレ撮影
一定人数以上の撮影
などについて届出の対象を具体的に示しています。また、舞台装置など容易に移動できない物を置く場合には、占用許可が必要になる可能性があるとしています。
同じ「千葉県の海岸」でも、撮影場所を管轄する事務所の案内まで確認することが大切です。
一時使用の届出を出しても「許可をもらった」とは限らない
制作現場では、「海岸の申請、通りました」という言い方をすることがあります。
ただ、実際の手続が一時使用届や任意の連絡だった場合、それが法律上の「許可」と同じものとは限りません。
特に確認しておきたいのは、その手続によって何が認められているのかです。
一時使用の連絡を受け付けてもらったからといって、一般利用者を排除できる場所を独占できる車両を自由に乗り入れられる大きなセットを自由に置ける砂浜を掘ったり造成したりできるということにはなりません。
管理者から出された条件や注意事項まで確認しておく必要があります。
工作物を設置して占用する場合は海岸法の許可が関係する
撮影規模が大きくなると、一時使用の連絡とは別に、海岸法に基づく許可が関係することがあります。
海岸法第7条では、海岸保全区域内の公共海岸の土地に、海岸保全施設以外の施設や工作物を設けて占用する場合、海岸管理者の許可を受けることを定めています。
一般公共海岸区域についても、海岸法第37条の4に占用に関する規定があります。
ここでいう「占用」は、単にその場所に立っているという意味ではなく、一定の場所を排他的・継続的に使用するような利用を指します。
国土交通省も、工作物を設けて一定区画を排他的・独占的に継続使用することを占用として説明しています。
撮影で、
大規模なセットを設置する
容易に移動できない工作物を置く
一定範囲を継続して使用する
といった計画がある場合は、通常の一時使用として扱えるのか、占用許可が必要なのかを早めに管理者へ相談した方がよいでしょう。
砂を掘る・盛るなどの行為も別に確認する
海岸法では、占用だけでなく、海岸保全区域内での一定の行為についても規制があります。
海岸法第8条では、
土石や砂の採取
一定の施設・工作物の新設や改築
土地の掘削
盛土
切土
などについて、海岸管理者の許可が必要となる場合を定めています。
一般公共海岸区域についても、第37条の5に同様の規定があります。
撮影では、
「俳優が砂を少し掘るだけだから」
「美術で砂山を作るだけだから」
と思うような内容でも、場所や規模によって判断が必要になることがあります。
砂浜そのものを動かす演出がある場合は、企画段階で管理者へ伝えておく方が安全です。
三脚や小さな機材を置いたら、すぐ「占用」になるわけではない
一方で、カメラの三脚を立てる小型の照明を置く出演者の荷物を一時的に置くといった通常の撮影機材まで、すべて海岸法上の占用許可になるとは限りません。
実際に、少人数で工作物を設置せず、他の利用者を制限しない撮影について手続不要としている海岸もあります。
重要なのは、「機材を置いたかどうか」だけで判断しないこと。機材の大きさや設置方法、使用時間、撮影人数、場所の使い方、一般利用への影響などを含めて、管理者がどのように扱うかを確認します。
「商用撮影だから許可」「個人撮影だから自由」とも限らない
もう一つ注意したいのが、商用・非商用だけで判断しないことです。
管理者によっては「業として行う撮影」を届出対象としているところがあります。
一方で、人数や仮設物、場所の使い方を基準にしているところもあります。
例えば千葉県安房土木事務所では、映画・ドラマ・CMなどのほか、コスプレ撮影や一定人数以上の撮影についても届出対象としています。
そのため、YouTubeだから不要自主映画だから不要写真撮影だから不要と作品の種類だけで判断することもできません。
何を撮るかだけでなく、どう海岸を使うかが重要です。
海岸以外のルールも確認する
海岸管理者から、「この撮影なら海岸法上の占用許可は必要ありません」と言われたとしても、それだけですべての確認が終わるとは限りません。
例えば、
海浜公園の利用ルール
港湾・漁港の利用ルール
自然公園などの規制
車両乗入れの制限
道路使用
ドローンの飛行ルール
火気の使用制限
などが別に関係することがあります。
千葉県山武土木事務所でも、海浜地は自由使用であっても、他の法令に反する行為はできないことを明記しています。
海岸が自由使用であることと、そこで予定している撮影行為がすべて自由であることは別です。
迷ったときは「撮影」ではなく「やること」を伝える
管理者に問い合わせるとき、「撮影をしたいのですが、許可はいりますか?」だけでは判断しにくいことがあります。
例えば、
5人で手持ちカメラだけを使う
30人で照明と発電機を使う
テントを3張設置する
美術セットを組む
砂浜にレールを敷く
車両を砂浜まで入れる
一定範囲に警備スタッフを配置する
では、海岸の使い方が全く違います。
問い合わせるときには、人数時間機材設置物車両使用する範囲一般利用者への影響まで伝えると、自由使用の範囲なのか、一時使用の届出等が必要なのか、占用などの許可を検討する必要があるのか、判断してもらいやすくなります。
撮影方法ごとのイメージ
大まかに整理すると、次のように考えることができます。
少人数・手持ち撮影
一般利用者を妨げず、工作物なども設置しない撮影であれば、特別な手続を必要としない海岸があります。
ただし、管理者によっては一時使用の連絡や情報提供を求めています。
撮影隊で一定時間利用する
人数が増えたり、三脚・照明などを使用したりする場合は、一時使用届などの対象になる可能性が高くなります。
管理者ごとのルールを確認します。
大きなセットなどを設置する
容易に移動できない工作物を置く場合や、一定の場所を排他的・継続的に使用する場合には、海岸法上の占用許可などが関係する可能性があります。
砂浜そのものを加工する
砂を掘る、盛る、採取するなどの行為がある場合は、一時使用とは別に海岸法上の規制を確認する必要があります。
これはあくまで目安です。
最終的な取扱いは、撮影場所を管理する海岸管理者へ確認します。
まとめ
海岸での撮影では、「自由使用だから何もしなくていい」とも、「業務撮影だから必ず許可が必要」とも一律には言えません。
まず分けたいのは、
自由使用
一般の利用と同じように海岸を利用するもの
一時使用の届出・連絡
撮影などについて管理者が内容を把握するために求めるもの。(取扱いや名称は管理者によって異なる)
海岸法上の許可
工作物を設置して占用する場合や、土地を掘削するなど、法律上許可が必要となる行為
です。
そして一番重要なのは、名称だけを見るのではなく、「今回の撮影では、海岸をどう使うのか」を具体的に整理することです。
手持ちカメラ数人の撮影と、大人数でセットを設置する撮影では、必要な確認は変わります。
ロケハンが終わったら、撮影場所だけでなく、人数・機材・設置物・車両・使用範囲まで整理して管理者へ確認すると、必要な手続を判断しやすくなります。
参考
※自由使用の範囲なのか、届出や許可が必要になるのか迷った場合は、お問い合わせからご相談ください。
