脚本の著作権は誰のもの?
更新日:9月7日
映画や動画を作るとき、脚本は誰か一人が書く場合もあれば、
監督と脚本家で作る
プロデューサーが原案を出す
複数人で共同執筆する
制作会社が脚本家に依頼する
原作をもとに脚色する
といった形もあります。
このとき問題になりやすいのが、
「完成した脚本の著作権は誰のもの?」
という点です。
基本的には、実際に創作的な文章として脚本を書いた人に著作権が発生します。
ただし、
共同執筆
外注
原作あり
職務著作
著作権譲渡
などによって、最終的な権利関係は変わります。
そのため、「お金を出した人」「企画を考えた人」「監督だから」という理由だけで自動的に脚本の著作権者になるわけではありません。
この記事で分かること
脚本の著作権は誰に発生するのか
監督がアイデアを出した場合どうなるのか
複数人で書いた脚本は誰のものか
脚本家に外注した場合の著作権
制作会社がお金を払えば著作権も移るのか
原作ものの脚本では何に注意するのか
制作前に何を決めておけばよいのか
基本は「書いた人」に著作権が発生する
脚本も、創作性のある文章であれば著作物です。
そのため、基本的には脚本を書いた人に著作権が発生します。
たとえば、脚本家が一人で、
セリフ
場面構成
ト書き
人物描写
などを書いたのであれば、その脚本家が著作者になります。
アイデアを出した人も著作権者になる?
必ずしもそうではありません。
たとえばプロデューサーが、
「地方の廃ホテルを舞台に、姉妹が再会するホラー映画を作ろう」
という企画を考え、それをもとに脚本家が具体的な脚本を書いた場合。
このような抽象的なアイデアやテーマそのものは、通常、著作権で保護される具体的な表現とは別です。
そのため、アイデアを出しただけで自動的に脚本の共同著作者になるわけではありません。
監督が細かく指示した場合は?
映画制作では、監督が脚本家に、
この場面を追加してほしい
この人物はこういう性格にしたい
ラストを変えたい
このセリフを入れたい
など、かなり細かく指示することがあります。
ただし、指示やアイデアを出しただけなのか、それとも実際に脚本の表現を共同で作ったのかによって事情は変わります。
監督自身が具体的なセリフや場面を書き、脚本家と一体となって創作している場合には、共同著作物となる可能性があります。
共同脚本なら誰のもの?
二人以上で一つの脚本を共同制作し、それぞれの担当部分を分離して利用できない形になっている場合には、共同著作物となることがあります。
この場合は、複数の著作者が共同で著作権を持つことになります。
たとえば、
二人で会話しながら全編を書いた
お互いに全編を加筆修正した
担当部分が明確に分けられない
といった場合です。
共同著作物になると、利用や権利処分について一人だけで自由に決められないことがあります。
そのため、複数人で書く場合は、最初に権利関係を整理しておく方が安全です。
「原案」「脚本」「脚色」は同じ?
制作クレジットでは、
原案
脚本
脚色
構成
など、さまざまな表記があります。
ただし、クレジット名だけで著作権の有無が決まるわけではありません。
実際にどの程度創作的な表現を作ったかが重要です。
そのため、「原案とクレジットされたから権利がない」「脚本と書いてあるから全部その人のもの」と単純に決めることはできません。
脚本家にお金を払って書いてもらったら?
制作会社や監督が脚本家へ報酬を支払って脚本を書いてもらうことがあります。
この場合でも、報酬を支払っただけで著作権が自動的に依頼者へ移るわけではありません。
脚本を書いた人に著作権が発生し、その後、
著作権を譲渡する
映画化・上映・配信など必要な利用を許諾する
といった形で権利を整理します。
そのため、外注時には契約が重要です。
「買い取り」で頼めば全部もらえる?
「脚本買い取り」「著作権込み」
などの言葉が使われることがありますが、曖昧なままでは後で認識がずれることがあります。
著作権を譲渡するなら、契約書で明確にします。
特に著作権法上、翻案権など一定の権利については、譲渡契約の書き方によって留保されたものと推定されることがあります。
そのため、「著作権を全部譲渡します」だけで済ませず、どの権利を移すのかを明確にすることが重要です。
著作者人格権は譲渡できない
著作権を制作会社へ譲渡したとしても、著作者人格権は譲渡できません。
著作者人格権には、
公表権
氏名表示権
同一性保持権
などがあります。
そのため、脚本を映画制作に合わせて変更する可能性があるなら、
著作者人格権を行使しないことについて契約で整理する
ことがあります。
特に、
セリフを変更する
シーンを削る
登場人物を変更する
結末を変える
可能性がある映画制作では重要です。
制作会社の社員が書いた場合は?
会社の業務として社員が脚本を書く場合には、一定の条件を満たせば、法人が著作者になる「職務著作」が成立することがあります。
ただし、会社員が書いたものは全部会社の著作物というわけではありません。
職務著作には法律上の条件があります。
そのため、社内制作でも、就業規則や契約を含めて確認します。
原作をもとに脚本を書いた場合は?
小説や漫画などをもとに脚本を書く場合は、脚本家が書いた脚本自体にも著作権が生じることがあります。
ただし、その脚本は原作をもとにした二次的著作物になります。
そのため、脚本家が自分の脚本について権利を持っていても、
原作の権利を無視して自由に映画化できるわけではありません。
原作権と脚本の権利が重なって存在します。
脚本家が途中で降板した場合は?
映画制作では、
初稿を書いた脚本家
改稿した別の脚本家
監督が最終稿を書いた
ということもあります。
この場合、どの原稿に誰の創作的表現が残っているかによって、複数の著作者が関係する可能性があります。
「最終稿を書いた人だけが著作権者」とは限りません。
そのため、脚本家が交代する場合は、
旧稿をどこまで使えるか
改稿できるか
クレジットをどうするか
著作権をどう扱うか
を確認します。
脚本を勝手に書き換えていい?
映画制作では、撮影現場や編集段階で脚本を変更することがあります。
ただし、脚本家が著作権を持っている場合、自由に改変できるとは限りません。
そのため、制作契約で、
監督による改稿
撮影上必要な変更
尺調整
セリフ変更
編集による変更
などを認める範囲を決めておくとトラブルを防ぎやすくなります。
脚本家との契約では何を決める?
少なくとも、
脚本料
著作権を譲渡するか
利用許諾にするか
映画化
劇場上映
映画祭
配信
テレビ放送
DVD・Blu-ray
海外利用
続編・リメイク
改稿
著作者人格権
クレジット
宣伝利用
などを確認します。
映画本編だけでなく、将来の展開まで考えて整理します。
結局、脚本の著作権はどう整理すればいい?
1.誰が実際に脚本を書いたか確認する
アイデアを出した人と、具体的な表現を書いた人を分けます。
2.共同執筆なら最初にルールを決める
誰がどの権利を持つのか整理します。
3.外注なら契約を作る
報酬を払うだけで著作権が移るとは限りません。
4.映画制作に必要な利用範囲を決める
上映・配信・海外などまで確認します。
5.改稿について決める
監督や制作側がどこまで変更できるか整理します。
6.著作者人格権も確認する
著作権譲渡だけでは処理できない部分があります。
まとめ
脚本の著作権は、基本的には実際に脚本を創作した人に発生します。
アイデアを出しただけで脚本の著作者になるとは限らない
共同執筆なら共同著作物になる場合がある
報酬を払っても著作権が自動的に移るわけではない
著作権譲渡は契約で明確にする
著作者人格権は譲渡できない
原作ものでは原作権と脚本の権利が重なる
脚本家交代では旧稿の権利にも注意する
映画制作では改稿範囲をあらかじめ決めておく
という整理になります。
「誰がお金を出したか」ではなく、「誰が何を創作し、その権利をその後どう処理したか」で考える。
これが脚本の著作権を整理するときの基本です。
参考
※映画・動画制作における脚本の著作権、共同執筆、著作権譲渡、改稿などの契約内容について確認したい場合は、こちらからお問い合わせください。
