子役・未成年に出演してもらうときの契約は?
更新日:9月17日
結論からいうと、子役・未成年に出演してもらう場合は、大人の出演者と同じ契約書をそのまま使わない方がいいです。
確認したいのは、
本人が出演に納得しているか
親権者などの同意が必要か
出演が労働基準法上の「労働」に当たるか
年齢による撮影時間の制限はないか
労働基準監督署の許可などが必要ではないか
出演料をどう支払うか
映像をどこまで利用するか
撮影内容を本人と保護者が理解しているか
といった点です。
特に子役では、「親がOKと言っているから撮れる」「保護者に出演料を払えばいい」だけでは済まない場合があります。
年齢や出演の実態によって、民法だけでなく労働基準法上のルールも関係します。
まず、どんな条件で出演してもらうのかを整理し、その年齢・撮影時間で本当に出演してもらえるのかまで確認することが大切です。
この記事で分かること
子役・未成年本人だけの同意でよいのか
親権者とは何を確認するのか
小さな子役で労基署の許可が必要になる場合
子役は何時から何時まで撮影できるのか
出演料は誰に支払うのか
SNS・配信・宣伝利用をどう決めるか
出演契約に何を入れておくか
本人と親権者、両方との確認が必要になる
未成年者が契約するときは、民法上、原則として法定代理人の同意が必要です。
出演契約でも、親権者などの同意を確認することになります。
ただし、
親が契約書にサインすれば、それだけで終わり。
とは考えない方がいいです。
出演するのは子ども本人です。
本人にも年齢に応じて、
どんな作品なのか
どんな役なのか
何を撮るのか
どのくらい時間がかかるのか
完成した映像がどこで公開されるのか
を分かる言葉で説明します。
保護者の同意を取ることと、本人が納得して出演していることは別です。
両方を確認しながら進めます。
「出演契約」と「労働契約」は同じとは限らない
映画への出演契約が、すべて労働契約になるわけではありません。
ただし、制作側の指示を受け、決められた時間や場所で演技をし、その対価として報酬を受け取るなど、実態によっては労働基準法上の「労働者」に当たることがあります。
労働者に当たる場合、未成年者には特別なルールがあります。
たとえば労働基準法では、親権者や後見人が未成年者本人に代わって労働契約を結ぶことはできません。
未成年者本人が、親権者などの同意を得て労働契約を結ぶ形になります。
つまり、
子どもだから、親とだけ契約すればいい。
と単純には整理できません。
まず、その出演がどのような契約になるのかを確認する必要があります。
小さな子役では、労基署の許可が必要になることがある
労働基準法では、原則として、満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終わるまでの児童を労働者として使用することはできません。
ただし、映画の製作や演劇の事業では例外があり、一定の条件を満たして所轄の労働基準監督署長の許可を受ければ、満13歳未満の児童でも出演できる場合があります。
許可を申請するときは、
年齢を証明する戸籍証明書
修学に差し支えないことを証明する学校長の証明書
親権者または後見人の同意書
などを提出します。
つまり子役では、出演契約書を作れば、それだけで撮影できるとは限りません。
年齢によっては、撮影前に労働基準監督署の許可まで必要になります。
結局、子役は何時から何時まで撮影できる?
ここは制作側が一番知りたいところだと思います。
労働基準法上の労働者に当たる場合、年齢によって撮影できる時間が変わります。
中学校卒業後から18歳未満原則として、午後10時から翌朝5時まで働かせることができません。
労基署の許可を受けて働く児童原則として、午後8時から翌朝5時まで働かせることができません。
つまり、映画製作で労基署の許可を受けて子役に出演してもらう場合は、原則として午前5時から午後8時までの範囲で考えます。
一方、演劇の事業で演技を行う子役については特例があり、就労可能時間が午前6時から午後9時までとされています。
「子役は夜9時まで」と一律に考えるのではなく、映画撮影なのか、演劇なのか、その子がどの年齢区分なのかを確認することが必要です。
さらに、労基署の許可を受けて使用する児童は、学校の授業時間と労働時間を合わせて1日7時間、1週40時間までという制限があります。
稽古や衣装替えなども、原則として労働時間に含まれます。
そのため、
本番は2時間しか撮っていないから大丈夫。
とは限りません。
学校、稽古、衣装替え、撮影などを含めて、その日のスケジュールを考える必要があります。
夜のシーンは撮影時間から逆算する
映画では夜のシーンもあります。
でも、夜のシーンだからといって、子役本人を、その年齢・出演形態で認められている時間を超えて残して撮ることはできません。
そこで、
日没後の早い時間に子役のカットを先に撮る
室内を遮光して夜に見せる
子役のアップだけ別の時間に撮る
夜景や相手役のカットは子役が帰った後に撮る
カット割りで同じ時間・場所にいるように見せる
など、撮影方法を考えます。
「何時まで撮れるか」を確認してから、そこに撮影スケジュールを合わせる。
子役では、この順番が重要です。
出演料は誰に払う?
出演料についても、
子どもだから親の口座へ払えばいい。
とは単純に決められません。
労働基準法上の労働者に当たる場合、未成年者は自分で賃金を請求することができ、親権者や後見人が本人に代わって賃金を受け取ることは禁止されています。
そのため、まず、その出演料が労働基準法上の「賃金」に当たるのかを確認します。
そのうえで、契約形態に応じて支払先や支払方法を整理します。
出演料の金額や支払時期については、別記事「出演料はいくら・いつ払う?」で詳しく解説しています。
学校や日常生活への影響も考える
子役の場合、撮影だけを見て予定を組むわけにはいきません。
たとえば、
平日の撮影
早朝集合
長距離移動
長期ロケ
連日の撮影
では、学校生活への影響も出ます。
特に労基署の許可を受けて児童を出演させる場合、修学に差し支えないことが制度上の条件にもなっています。
制作側でも、
学校を休む必要があるか
移動を含めて無理な予定になっていないか
保護者の送迎が必要か
食事や休憩を取れるか
翌日の学校生活に大きな負担が出ないか
まで含めて考えておいた方がいいでしょう。
保護者の同伴や待機方法も決めておく
年齢が低い子役では、保護者が撮影現場まで同行することも多くあります。
その場合は、
保護者の同伴が必要か
撮影中はどこで待機するのか
控室へ入れるのか
ロケ地までの交通費をどうするのか
長時間の撮影で食事をどうするのか
なども事前に伝えておきます。
子役本人の出演条件だけ決めて、保護者が現場でどう動くのかが何も決まっていないと、当日に困ることがあります。
撮影内容は、本人と保護者に具体的に説明する
子役では、作品名と撮影日だけ伝えれば十分とは限りません。
たとえば、
ホラー
虐待
暴力表現
強い罵声
泣く演技
血糊
傷や死体の特殊メイク
アクション
などがある場合です。
完成映像では数秒でも、実際の撮影では同じ場面を何度も繰り返すことがあります。
そのため、画面にどう映るかだけでなく、現場で本人に何をしてもらうのかまで説明します。
特にホラー、虐待、暴力など心理的な負担が大きい場面では、契約だけでなく撮影方法そのものへの配慮も必要です。
子役だけでなく成人の俳優も含めた心理面への配慮については、別記事「ホラー・虐待シーンを撮りたい|俳優のメンタルケアと撮影時の配慮」で詳しく解説しています。
途中で撮影内容が変わったら改めて説明する
映画制作では、当初の予定から撮影内容が変わることがあります。
たとえば、
普通の会話だった場面に泣く演技が追加された
血糊を使うことになった
アクションが追加された
撮影時間が遅くなった
SNS用の宣伝撮影も追加された
といった場合です。
大人の出演者なら現場で相談して対応できることでも、子役では本人と保護者の両方への説明が重要です。
最初に説明していた条件から大きく変わる場合は、そのまま進めず、改めて確認する。
特に撮影時間が変わる場合は、そもそもその年齢で撮影できる時間内なのかも確認します。
出演映像をどこまで使うかも具体的に決める
子役でも、出演映像の利用範囲は大人の出演者と同じように考えます。
たとえば、
本編
映画祭
劇場公開
配信
YouTube
予告編
SNS
広告
ポスター
海外利用
などです。
特にSNSや広告は、
映画に出演することには同意したけれど、SNSで顔が広く使われるとは思わなかった。
という認識違いが起こることがあります。
そのため保護者にも、作品そのものだけでなく、宣伝でどこまで使う可能性があるのかを説明しておきます。
出演映像全体の利用範囲については、別記事「出演映像はどこまで使える?」で詳しく解説しています。
本名を出すかも決めておく
クレジット表記も確認しておきます。
未成年者の場合、
本名
芸名
イニシャル
クレジットを出さない
などを希望する場合があります。
作品本編だけでなく、
映画祭のWebサイト
SNS
出演者紹介
ポスター
プレス資料
などに名前が掲載される可能性もあります。
そのため、作品内のクレジットだけでなく、宣伝でどこまで名前を出すのかまで決めておくと分かりやすくなります。
契約では何を決めておく?
子役・未成年者との出演契約では、作品に応じて、
作品名
出演内容
撮影日・時間
撮影場所
出演料
交通費
親権者などの同意
出演映像の利用範囲
SNS・広告などの宣伝利用
クレジット
延期・中止
撮影内容を変更する場合の扱い
などを整理します。
さらに年齢や働き方によっては、
労働基準監督署の許可
学校長の証明
親権者等の同意書
年齢確認
労働時間
といった契約書とは別の手続きも必要になります。
つまり子役では、「出演契約を作ること」と「その子をその日時・内容で撮影できること」は別に確認する必要があります。
まとめ
子役・未成年に出演してもらう場合は、単に保護者からサインをもらえば終わりではありません。
確認したいのは、
本人が納得しているか
親権者などの同意が必要か
出演が労働に当たるか
労基署の許可が必要な年齢ではないか
その時間帯に撮影できるか
出演料をどう支払うか
本編・配信・SNSなどでどこまで使うか
本人に無理な撮影内容になっていないか
といった点です。
特に撮影時間は、
中学校卒業後から18歳未満は、原則として午後10時から翌朝5時まで就労できない
労基署の許可を受けて働く児童は、原則として午後8時から翌朝5時まで就労できない
演劇子役には特例があり、午前6時から午後9時まで就労できる
という違いがあります。
子役では、契約書だけを整えても十分ではありません。
何を撮るのか、何時まで撮れるのか、完成後にどう使うのかまで、本人・保護者・制作側で共有してから撮影する。
そこまで含めて準備しておくことが大切です。
参考
※映画・動画制作における子役・未成年者の出演契約について個別にご相談が必要な場合は、お問い合わせページをご利用ください。
