映画の著作権を制作会社にまとめるにはどうする?
結論からいうと、映画そのものの著作権だけでなく、脚本・音楽・写真・イラスト・出演者など、作品に入っている権利を制作会社が利用できる状態にそろえておく必要があります。
映画の著作物については、一定の場合、著作権法29条によって映画製作者に著作権が帰属します。
でも、それだけで、
原作
脚本
音楽
写真
イラスト
ロゴ
出演者の実演
まで全部制作会社のものになるわけではありません。
なので実務では、「全部の著作権を制作会社に譲渡してもらう」より、「映画を公開・宣伝・配信・再編集できる権利が制作会社にそろっている状態を作る」と考える方が分かりやすいです。
この記事で分かること
映画の権利を制作会社にまとめるとはどういうことか
何の権利を整理すればよいのか
全部著作権譲渡にする必要があるのか
脚本・音楽・出演者はどう処理するのか
制作会社が実際に何を残しておけばよいのか
まず「映画そのもの」と「映画に入っている素材」を分ける
ここが一番大切です。
完成した映画には、映画そのものとは別に、
原作
脚本
音楽
写真
イラスト
デザイン
などが入っています。
これらには、それぞれ別の著作権がある場合があります。
つまり、完成映画の著作権を制作会社が持っている=中に入っている素材の著作権も全部制作会社にあるではありません。
じゃあ、制作会社は何を集めればいい?
考え方はシンプルです。
映画を完成後に、
映画祭へ出す
劇場上映する
配信する
海外へ出す
予告編を作る
SNSで宣伝する
再編集する
ために必要な権利を、それぞれの関係者から取っておきます。
脚本はどうする?
外部の脚本家に書いてもらったなら、
映画化
上映
配信
宣伝
必要な改稿
ができるようにします。
方法は、
著作権を制作会社へ譲渡してもらう
でも、
著作権は脚本家に残して、映画制作に必要な利用許諾をもらう
でも構いません。
大切なのは、映画完成後に、
「配信は聞いていない」「海外上映は認めていない」
とならないことです。
音楽はどうする?
オリジナル曲なら、作曲家との契約で、
本編
予告編
SNS
映画祭
劇場上映
配信
まで使えるようにしておきます。
歌手や演奏者がいるなら、その実演についても整理します。
市販曲を使う場合は、制作会社へ著作権を移すのではなく、映画で必要な利用許諾を権利者から取ることになります。
写真やイラストは?
映画のために外注した、
劇中写真
ポスター
イラスト
タイトルロゴ
なども同じです。
一作品だけで使うなら利用許諾で十分な場合があります。
一方、
続編
商品化
長期的なブランド利用
まで考えるタイトルロゴやキャラクターデザインなら、著作権譲渡を検討することもあります。
出演者は?
出演者については、著作権を譲渡してもらうという話ではありません。
出演契約で、
本編
予告編
SNS
映画祭
劇場上映
配信
海外利用
宣伝
などに出演映像や肖像を使えるようにします。
つまり、権利の種類によって処理方法は違います。
全部を同じ「著作権譲渡契約」にまとめればいいわけではありません。
著作者人格権はどうする?
脚本、イラスト、音楽などを後から、
編集する
尺を変える
色を変える
セリフを変更する
可能性があります。
著作者人格権は著作者本人に専属するため、著作権のように譲渡することはできません。
そのため、必要な制作物については、契約で著作者人格権を行使しないことを決めることがあります。
全部、著作権譲渡にした方が楽じゃない?
必ずしもそうではありません。
たとえば映画で一度使うだけの写真まで、すべて著作権譲渡にする必要はないこともあります。
むしろ、
制作者が譲渡を嫌がる
譲渡料が高くなる
必要以上の権利を取る
こともあります。
なので、
長く自由に使いたいもの → 著作権譲渡を検討
その映画で使えればよいもの → 必要な利用許諾を取る
くらいに分けると整理しやすいです。
実際には一覧を作っておくと分かりやすい
映画制作では、作品ごとに簡単な権利一覧を作っておくと便利です。
たとえば、
素材 | 権利者・相手 | 処理 |
脚本 | 脚本家 | 利用許諾/著作権譲渡 |
劇伴 | 作曲家 | 本編・宣伝・配信利用 |
主題歌 | 作曲家・歌手等 | 楽曲・音源利用 |
ポスター | デザイナー | 宣伝利用・加工 |
劇中写真 | カメラマン | 本編・宣伝利用 |
出演 | 俳優 | 出演・肖像利用 |
これだけでも、
「この素材、契約したっけ?」
がかなり見つけやすくなります。
契約書やメールは作品ごとにまとめて保存する
制作会社側では、
契約書
利用許諾メール
権利者からの承諾
音楽ライセンス
素材サイトの利用条件
出演同意
などを、作品ごとにまとめて保存しておきます。
映画祭や配給、配信の段階で、権利処理について確認されることもあります。
あとから探し回らなくて済むよう、制作中から一か所に集めておく方が楽です。
結局、制作会社に権利をまとめるにはどうすればいい?
1.映画製作者を明確にする
まず完成映画を誰が管理するのか決めます。
2.作品内の権利物を一覧にする
脚本、音楽、写真、イラスト、出演者などを書き出します。
3.必要な使い方を先に決める
本編だけでなく、
映画祭
劇場
配信
SNS
海外
再編集
まで考えます。
4.素材ごとに処理する
著作権譲渡が必要なものと、利用許諾で足りるものを分けます。
5.契約書や許可を一か所に保存する
完成後に権利関係を説明できる状態にしておきます。
まとめ
映画の権利を制作会社にまとめるというのは、すべての著作権を制作会社へ移すことではありません。
大切なのは、
映画製作者を明確にする
脚本・音楽・写真・イラストなどを別々に見る
出演者の権利も整理する
必要なら著作権譲渡を使う
譲渡まで不要なら利用許諾を取る
宣伝・配信・海外・再編集まで想定する
契約や許諾の記録をまとめて保存する
ことです。
「この映画を公開・宣伝・配信するときに、誰か一人の許可が足りなくて止まらない状態にしておく」
制作会社へ権利をまとめる目的は、そこにあります。
参考
※映画制作に必要な著作権・利用許諾・出演契約などを作品全体で整理したい場合は、こちらからお問い合わせください。
