映画の著作権は誰のもの?|監督・制作会社・プロデューサーの権利関係
結論からいうと、映画の著作権は、一定の場合には「映画製作者」が持ちます。
監督などが映画の「著作者」になることはありますが、著作者と著作権者は同じとは限りません。
たとえば、
監督など → 映画の著作者になることがある
制作会社など映画製作者 → 映画そのものの著作権を持つことがある
プロデューサー → 肩書だけでは著作権者にはならない
脚本家・作曲家 → 脚本や音楽について別の著作権を持つ
俳優 → 著作権とは別に実演家としての権利を持つ
という形です。
自主制作映画なら、まず
「この作品の映画製作者は誰なのか」
「完成作品を誰が管理するのか」
を決めておくと、その後の映画祭出品・配信・販売などの権利処理がしやすくなります。
この記事で分かること
映画の「著作者」は誰なのか
映画の「著作権」は誰が持つのか
監督と制作会社の権利はどう違うのか
プロデューサーは著作権者になるのか
自主制作映画ではどう整理すればよいのか
映画では「著作者」と「著作権者」を分けて考える
ここが最初のポイントです。
通常、著作者=著作物を創作した人です。
ところが映画では、著作者がそのまま著作権を持ち続けるとは限りません。
著作権法では、映画の著作物について、制作・監督・演出・撮影・美術などを担当し、映画全体の形成に創作的に関わった人が著作者になるとされています。
一方、その映画の著作権は、一定の場合には映画製作者に帰属します。
監督は映画の著作者になる?
映画全体の表現に創作的に関わっていれば、監督は映画の著作者になることがあります。
たとえば、
どのように演出するか
どの画を撮るか
俳優をどう動かすか
映像全体をどう構成するか
などを決め、映画全体の形成に創作的に関与している場合です。
ただし、著作者だから映画の著作権も全部監督にある、とは限りません。
ここが映画特有のところです。
じゃあ映画の著作権は誰が持つ?
著作権法では、映画の著作者が映画製作者に対して映画制作への参加を約束している場合、映画そのものの著作権は映画製作者に帰属するとされています。
文化庁も、外部の監督などに依頼して映画を制作したケースでは、映画会社が財産権としての著作権を持ち、監督などには著作者人格権が残るという整理を示しています。
つまり、
監督=著作者
映画製作者=著作権者
となることがあります。
「映画製作者」って誰?
ここでいう映画製作者は、単に、
一番お金を出した人
プロデューサーという肩書の人
制作会社という名前が付いた会社
だけで決まるものではありません。
映画制作を企画し、制作を進め、その映画を完成させることについて主体的に責任を負っている者が誰なのか、という実態を見て考えます。
そのため、自主制作映画では特に、
「この作品の映画製作者は誰なのか」
を曖昧にしない方がいいでしょう。
プロデューサーが著作権者になる?
プロデューサーという肩書だけでは決まりません。
たとえば、
個人プロデューサーが自分で企画し、資金を集め、制作全体を管理している
制作会社が企画・資金・制作を主体的に行い、その社員がプロデューサーとして動いている
では、状況が違います。
誰が映画製作者になるかは、肩書よりも制作の実態を見ます。
なので、
「Producerとクレジットされている=その人が映画の著作権者」
ではありません。
制作会社があれば、その会社のもの?
これも必ずそうとは限りません。
ただ、制作会社が、
企画を立てる
制作費を負担する
スタッフを集める
制作を管理する
完成作品について責任を負う
という形で制作主体になっていれば、その会社が映画製作者となるケースは考えやすいでしょう。
逆に、単に撮影業務だけを請け負った会社が、それだけで映画全体の著作権者になるわけではありません。
自主制作映画だとどうなる?
ここが実際には一番ややこしいところです。
自主制作では、
監督が企画
監督自身が資金を出す
友人がプロデューサー
別の人が撮影
出資者もいる
制作会社は作っていない
ということがあります。
この場合、「結局この映画は誰のものなの?」が完成後に問題になることがあります。
制作を始める前に、
誰が映画製作者なのか
完成作品を誰が管理するのか
映画祭への出品を誰が決めるのか
配信や販売を誰が決めるのか
収益をどう扱うのか
を決めておく方が分かりやすいです。
脚本家や作曲家の権利はなくなる?
なくなりません。
映画そのものの著作権とは別に、
脚本
原作
音楽
イラスト
写真
などには、それぞれの著作権があります。
たとえば、脚本家が書いた脚本を映画化した場合。
完成した映画の著作権が映画製作者に帰属していても、元の脚本の著作権まで自動的に映画製作者へ移るわけではありません。
なので映画を公開・配信するためには、これらの素材についても必要な権利処理をしておく必要があります。
俳優の権利は?
俳優は通常、映画そのものの著作者ではありません。
ただし、俳優には実演家としての権利があります。
そのため、
撮影
映画本編での利用
配信
宣伝
二次利用
などは、出演契約も含めて整理します。
この点は別記事「俳優・出演者にも著作権はある?|実演家の権利とは」で詳しく扱います。
監督の著作者人格権はどうなる?
映画の著作権が映画製作者に帰属する場合でも、著作者である監督などには著作者人格権が残ります。
文化庁も、映画会社が財産権を持つケースでも、監督等には著作者人格権が残ると説明しています。
そのため、
「映画会社が著作権を持っているから、監督の存在は一切関係なくなる」
というわけではありません。
映画を大きく改変する場合などには、この点も考える必要があります。
自主制作なら実際にどうしておけばいい?
複雑な契約を大量に作る前に、まず制作メンバーの間で、
本作品の映画製作者は○○とし、完成した映画について、映画祭への出品、劇場上映、配信、販売その他の利用を管理する。
という形で、誰が完成作品を管理するのかを決めておくと分かりやすいです。
そのうえで、
脚本
音楽
写真
イラスト
出演者
などについて、映画で必要な利用許諾を取っていきます。
結局、映画の権利はどう整理すればいい?
監督
映画全体の形成に創作的に関わっていれば、著作者になることがあります。
映画製作者
一定の場合、完成した映画そのものの著作権を持ちます。
プロデューサー
肩書だけで著作権者になるわけではありません。映画製作者に当たるかどうかは制作実態を見ます。
脚本家・作曲家など
映画そのものとは別に、それぞれの作品について著作権を持つことがあります。
俳優
映画の著作者とは別に、実演家としての権利があります。
まとめ
映画の権利関係では、まず、
「著作者」と「著作権者」は同じとは限らない
と覚えておくと分かりやすいです。
監督などが映画の著作者になることがある
一定の場合、映画の著作権は映画製作者に帰属する
プロデューサーという肩書だけでは決まらない
制作会社も、名前だけではなく制作実態を見る
脚本や音楽などの権利は別に残る
俳優には実演家としての権利がある
自主制作では「誰が完成作品を管理するか」を最初に決めておく
という整理になります。
映画は、一人の作品というより、複数の権利を整理して一つの完成作品にしていくものです。
最初に「誰が映画製作者なのか」を決めておくと、その後の映画祭・配信・販売なども進めやすくなります。
参考
※映画・動画制作における監督、制作会社、プロデューサーなどの権利関係について確認したい場合は、こちらからお問い合わせください。
