無料ロケでやってはいけないこと――「タダで借りたから適当でいい」は一番危ない
更新日:9月6日
知人の店舗、友人の会社、母校、大家の空室などを無料で撮影に使わせてもらえることがあります。
でも、無料だからといって、
時間を延ばす
使う範囲を勝手に広げる
家具を無断で動かす
壁に勝手に貼る
汚したまま帰る
といった使い方をしてよいわけではありません。
むしろ無料ロケでは、場所代の代わりに相手の好意を使っています。
低予算撮影だからこそ、約束した範囲・時間・原状回復をきちんと守ることが、次の撮影場所を確保することにもつながります。
この記事でわかること
小規模な無料ロケで特に避けたいこと
「少人数だから大丈夫」で済ませてはいけないこと
使用時間を延ばすときの考え方
借りた範囲以外を勝手に撮らない理由
家具・掲示物・設備を動かすときの注意
汚れ・破損・ゴミの扱い
知人の場所でも確認を残しておいた方がよいこと
次も協力してもらえる撮影にするための考え方
無料だから使用時間を延ばしていいわけではない
無料で場所を借りると、「あと30分くらいならいいだろう」となりやすいところです。
でも相手は、
店を開ける予定がある
会社へ社員が戻ってくる
鍵を閉める必要がある
立会いのために残っている
かもしれません。
例えば、10時入室・13時完全撤収と伝えていたなら、13時には機材も美術も片付けて退出できるようにします。
撮影終了時刻ではなく、完全撤収時刻まで約束に含めるのが分かりやすいでしょう。
時間を延ばす必要が出たら、勝手に続けず必ず早めに相手に相談することが大切です。
借りていない場所まで勝手に使わない
「会議室を使っていい」と言われたからといって、廊下・階段・屋上・駐車場・エントランスまで撮影できるとは限りません。
例えば友人の会社なら、会議室は会社が使っていても、廊下やエレベーターはビルの共用部分かもしれません。
店舗でも、
客席は店主が判断できる
建物前は別の管理者がいる
ということがあります。
ロケハン中に、「この階段もいいな」と思ったら、そこが誰の管理になっているのかを確認します。
無料ロケでは、最初に了承をもらった範囲を撮影可能範囲と考える方が安全です。
家具を勝手に動かさない
撮影では、
机を少しずらしたい
棚を画角から外したい
椅子を並べ替えたい
ということがよくあります。
軽い椅子1脚なら問題なさそうに見えても、相手にとっては配置を変えてほしくないことがあります。
特に、大型家具・棚・冷蔵庫・PC・撮影場所に常設された備品などは、破損だけでなく配線や床への傷にも注意が必要です。
動かす前に、
何を動かすか
誰が動かすか
どこへ置くか
を確認します。
撮影前の写真を撮っておけば、原状回復もしやすくなります。
「剥がせるテープだから大丈夫」と勝手に貼らない
低予算撮影では、会社名・学校の掲示物・病院の案内・架空の店舗名などを壁やドアへ貼ることがあります。
でも、「養生テープ」「マスキングテープ」「弱粘着テープ」なら必ず安全とは限りません。
壁紙や塗装によっては、表面が剥がれる、跡が残る、変色することがあります。
しかし、粘着力が弱すぎると撮影中に落下してしまう危険性もあります。
そもそも貼り物ができるか、どの方法ならよいかを借りる相手へ確認しましょう。
貼れない場合は、自立式パネルや卓上表示などで代用できないかを考えましょう。
既存の掲示物を勝手に外さない
作品に不要だからといって、
店の注意書き
会社の掲示物
施設案内ポスター
避難経路図
などを勝手に外すことはやめましょう。
特に防災関係の表示は、撮影中でも必要なものです。
画面に入れたくない場合は、
カメラ位置を変える
手前に別の物を置く
一時的に隠す
などで対応します。
美術上邪魔な物と、施設側が必要として置いている物は別です。
血糊・水・飲食物は必ず先に伝える
ホラーやドラマ撮影では、
血糊・水・泥・飲食物
などを使うことがあります。
これは普通の会話シーンとはリスクが違います。
特に血糊は、「床・壁・家具・カーペット」に付くと、素材によっては落ちないことがあります。
使用するなら、
養生する
汚れてもよい撮影用家具を使う
使用範囲を限定する
などを考えます。
「拭けば落ちると思った」は原状回復できなかった理由にはなりません。
汚れる可能性のあるものは、撮影協力をお願いするときに伝えます。
火や煙は自己判断で使わない
ロウソク
線香
煙
調理用火器
なども、少量だから自由に使えるとは限りません。
建物によっては火気使用が禁止されていますし、火災報知設備が反応する可能性もあります。
無料で借りている場所ほど、「これくらいなら大丈夫」と現場判断せず、使用予定があるなら先に伝えます。
一般利用者や近隣の迷惑になる撮り方をしない
無料で店舗や施設を借りられても、その周辺まで貸切になったわけではありません。
例えば、
入口を機材で塞ぐ
廊下で大声を出す
路上へ機材ケースを広げる
近隣住宅の前で長時間待機する
といった行為は別問題です。
スタッフ2〜5人程度でも、三脚や機材ケースを置けば通行への影響は出ます。
好意で貸してくれた相手が、撮影後にトラブルに巻き込まれないためにも周囲への配慮は重要です。
撮影場所を無料で借りられたことと、その周囲を自由に使えることは別と考えます。
ゴミを置いて帰らない
撮影では意外とゴミが出ます。
飲み物・弁当・養生材・テープ・美術用の紙・使い捨て小道具
などです。
無料で場所を貸してもらったからといって、施設のゴミ箱へ全部捨ててよいとは限りません。
原則として撮影側で回収し、処理方法を確認します。
撮影によるゴミや汚れは撮影終了後に清掃し、原状回復しましょう。
来たときより豪華にする必要はありませんが、少なくとも来たときの状態には戻すことが大切です。
壊したものを黙って帰らない
撮影中に、
椅子を傷つけた
壁に跡が付いた
備品を壊した
床を汚した
ということが起こる場合があります。
小さい傷だから気付かれないだろう、と黙って帰るのは絶対に避けましょう。
また、借りるときに既に傷がついていた場合、念のために写真を撮っておきましょう。
撮影でついてしまった傷なのか、元々あった傷なのかが分からず、トラブルになるケースもあるからです。
傷をつけてしまった場合には、まず管理者へ報告し、
清掃で戻せるのか
修理するのか
弁償が必要なのか
を相談します。
無料ロケだからこそ、補償対応はしっかりとしておきましょう。
店名や会社名を勝手に作品へ出さない
撮影場所として使うことにはOKでも、
店名を作品に出す
会社名を映す
実在する施設として登場させる
ことまで了承しているとは限りません。
例えば知人の会社を、
犯罪に関係する会社
悪徳企業
事件現場
として作品に使うなら、会社名がそのまま映ることを嫌がるでしょう。
必要なら、
看板を隠す
架空名称へ変更する
特徴的なロゴを画角から外す
などで対応します。
「場所を貸す許可」と「実名で作品に登場する了承」は分けて確認します。
無料協力を理由に予定外のお願いを増やさない
現場へ行くと、
この部屋も使いたい
屋上にも行きたい
店員さんにも出演してほしい
車も借りたい
など、追加でやりたいことが出てくる場合があります。
相談すること自体はできます。
でも、「せっかくだから、ついでにこれもお願いしよう」と次々に条件を増やすのは相手の負担になります。
最初にお願いした内容から大きく変わるなら、改めて相談します。
協力してもらえたことを、追加要求の入口にしないことも大切です。
「宣伝になるから」で押さない
店舗などへ撮影協力をお願いするとき、「作品に出れば宣伝になります」と言ってしまいたくなることがあります。
実際に宣伝効果が出る作品もあります。
でも、自主制作映画やYouTubeの再生数、映画祭での上映規模は公開前には分かりません。
クレジット表記やSNS紹介など、自分たちが確実にできることをお礼として伝える方が整理しやすくなります。
知人だから口約束だけで何でも済ませない
知人の店や会社だと、「いいよ、適当に使って」で話が決まることがあります。
それでも、
撮影日
使用時間
使用場所
人数
撮影内容
美術変更
費用
公開方法
くらいはメッセージなどで確認しておいた方がよいでしょう。
「そこまで使っていいとは言っていない」
「そんな内容の作品だと思わなかった」
という認識違いを減らせます。
長い契約書を必ず作るという意味ではありません。
親しい相手ほど、最低限の条件を文字にしておくと双方が楽になります。
無料ロケだからこそ最後の確認をする
撤収するときは、
家具が元に戻っているか
貼り物を全部剥がしたか
ゴミが残っていないか
忘れ物がないか
床や壁に傷がないか
を確認します。
できれば場所を提供してくれた人にも見てもらいます。
撮影前に写真を撮っておけば、
椅子の位置
机の向き
小物の配置
も戻しやすくなります。
無料協力の場所でも、正式なロケ施設でも、原状回復の考え方は同じです。
無料ロケでやってはいけないこと
特に避けたいのは、
約束した時間を勝手に超える
許可された範囲以外まで撮る
家具や掲示物を勝手に動かす
壁へ無断で物を貼る
血糊・水・火などを事前説明なしで使う
ゴミや汚れを残す
破損を黙って帰る
店名・会社名を勝手に作品へ出す
無料協力を理由に追加のお願いを増やす
といったことです。
どれも大規模な制作だけの話ではありません。
スタッフ数人の撮影でも起こります。
まとめ
無料で撮影場所を借りられることは、低予算制作にとって大きな助けになります。
でも、無料ロケは「自由に使えるロケ地」ではありません。
場所代を取らない代わりに、
店主・会社・大家・学校・施設管理者
などが協力してくれています。
時間を守る
了承された範囲だけ使う
美術変更は確認する
汚れや破損があれば対応する
最後に原状回復する
こうした基本を守ることが重要です。
そして、低予算制作では一つの協力先が、次の作品でも使える貴重なつながりになることがあります。
「無料だからできるだけ使う」ではなく、「無料で貸してもらった場所ほど丁寧に使う」。
その方が、作品にも次の撮影にもつながります。
参考
※撮影場所の管理者や必要な手続が分からない場合は、お問い合わせからご相談ください。
