利用許諾だけでも大丈夫?
更新日:9月19日
結論からいうと、映画・動画制作では、著作権を譲渡してもらわなくても、必要な利用許諾をきちんと取れていれば十分なことがあります。
大切なのは、
どの作品で使えるのか
どの媒体で使えるのか
配信・SNS・広告まで使えるのか
海外でも使えるのか
加工・再編集してよいのか
いつまで使えるのか
を具体的に決めておくことです。
つまり、「著作権をもらうかどうか」より、「映画制作側が実際に必要な使い方をできるか」を確認します。
この記事で分かること
利用許諾とは何か
著作権譲渡との違い
利用許諾だけで足りるケース
利用範囲をどこまで決めればよいか
独占利用・利用料・続編をどう考えるか
加工や著作者人格権をどう整理するか
利用許諾とは?著作権譲渡とは何が違う?
利用許諾は、著作権そのものを移すのではなく、著作権者から「この範囲なら使ってよい」と許可をもらうことです。
たとえば、作曲家が著作権を持ったまま、
この映画の本編、予告編、SNS、配信でこの曲を使ってよい。
と認めてもらう形です。
著作権は作曲家に残りますが、制作側は契約した範囲で利用できます。
一方、著作権譲渡では、著作権そのものが譲受人へ移ります。
簡単にいうと、
著作権譲渡 → 権利そのものを移す
利用許諾 → 権利はそのままで、使う許可をもらう
という違いです。
映画制作では、利用許諾だけで足りることも多くあります。
たとえば、映画のために作ってもらったイラストを、
本編
映画祭
配信
予告編
SNS
で使えれば十分なら、その範囲を許諾してもらえば作品制作には困らないことがあります。
必ずしも著作権そのものを制作会社へ移す必要はありません。
どんな制作物なら利用許諾で足りやすい?
たとえば、
一作品だけで使う劇中イラスト
一作品用の音楽
ポスター用写真
劇中に使うデザイン
特定作品だけで使う素材
などです。
今後別作品で使う予定がなく、その映画で十分使えればよいものは利用許諾と相性がよいです。
一方、
タイトルロゴ
シリーズロゴ
オリジナルキャラクター
ブランドデザイン
のように、作品公開後も長く使い続けるものは、より広い利用許諾や著作権譲渡を検討することがあります。
大切なのは、制作物の種類だけで決めるのではなく、将来どこまで使いたいかを見ることです。
利用許諾では、どこまで決める?
「映画で使っていい」だけでは、後から足りなくなることがあります。
映画では、本編以外にも、
映画祭
劇場上映
配信
放送
DVD・Blu-ray
予告編
SNS
広告
海外利用
があります。
そのため、
本作品の制作、上映、配信、販売および宣伝に必要な範囲で利用できる。
など、実際の展開に合わせて決めます。
宣伝利用
完成後は、
音楽を予告編に使う
イラストをSNS投稿に使う
写真を映画祭資料に使う
ことがあります。
本編利用しか許可されていないと、宣伝時に追加確認が必要になることがあります。
そのため、最初から本作品の宣伝利用まで含める方が扱いやすくなります。
海外利用
海外映画祭や海外配信の可能性があるなら、国内利用だけに限定しないようにします。
たとえば、
日本国内および国外において利用できる。
という形です。
最初は国内映画祭だけの予定でも、後から海外映画祭へ応募したくなることがあります。
利用期間
利用許諾では、
3年間
5年間
期間を定めない
など、利用期間を決めることがあります。
映画作品は、公開から何年も経ってから再配信・再上映されることもあります。
短期間しか許諾されていないと、再利用のたびに契約し直す必要があります。
そのため、長く残る作品では利用期間も十分に考えます。
編集・加工
映画制作では、素材をそのまま使うとは限りません。
たとえば、
音楽を短くする
写真をトリミングする
イラストに文字を載せる
デザインのサイズを変える
映像に合わせて編集する
ことがあります。
そのため、必要なら、本作品の制作・宣伝に必要な範囲で編集・加工できることも決めます。
制作関係者へのデータ提供
制作途中で、
編集会社
配給会社
宣伝会社
字幕制作会社
へ素材を渡すことがあります。
そのため、制作に必要な範囲で第三者へデータを提供できるようにしておくと扱いやすくなります。
ここでいう第三者への提供は、素材を自由に使わせるという意味ではなく、本作品の制作・公開・宣伝のために必要な範囲で共有するということです。
独占利用・利用料・続編はどうする?
利用許諾では、どこで使うかだけでなく、誰が使えるのか、いくらで使えるのか、将来どこまで広げるのかも考えます。
独占的に使いたい場合
著作権を譲渡してもらわなくても、制作側だけが使えるようにする利用許諾を考えることができます。
たとえば、映画のために作ったオリジナルキャラクターを、制作者が同時に別の映画でも使うと困る場合です。
その場合は、
本作品について独占的に利用できる
第三者へ同一制作物を利用許諾しない
などを契約で決めます。
独占的に使いたい場合は、「独占的利用許諾」と書くだけでなく、著作権者が第三者へ利用許諾しないことまで具体的に決めておくと分かりやすくなります。
一方、
一般的なBGM
素材写真
汎用デザイン素材
など、他の人も使うことを前提にした素材なら、非独占的な利用許諾でも問題ないことがあります。
利用許諾料
利用許諾料を別に設定するかどうかも契約次第です。
たとえば、制作料の中に利用許諾料も含むとすることもできます。
一方、
映画本編利用
広告利用
海外利用
で料金を分けることもあります。
その場合は、
制作料〇円には、本契約に定める利用許諾の対価を含む。
などと整理しておくと分かりやすくなります。
後から利用先が増えた場合
最初は映画祭だけの予定だったのに、
配信が決まった
海外販売が決まった
広告を出すことになった
ということもあります。
元の利用許諾に含まれていれば、そのまま利用できます。
含まれていなければ、追加で許可を取ることになります。
だからこそ、契約時点で現実的にあり得る使い方をある程度想定しておくことが重要です。
続編にも使いたい場合
利用許諾が「本作品」に限定されていれば、続編は別作品なので、そのまま使えないことがあります。
続編まで予定しているなら、
本作品および続編
シリーズ作品
まで対象に含める方法があります。
ただし、続編・派生作品・商品化など将来展開が広い場合は、著作権譲渡の方が管理しやすいこともあります。
加工するなら、著作者人格権も考える
利用許諾を受けていても、加工・変更する場合は著作者人格権との関係を考える必要があります。
著作者人格権は著作権とは別の権利で、譲渡することはできません。
たとえば、
写真をトリミングする
イラストを加工する
脚本やセリフを変更する
音楽を編集する
といった利用を予定しているなら、必要に応じて著作者人格権を行使しないことについても契約で整理します。
たとえば、
制作者は、本作品の制作・宣伝に必要な範囲で行われる編集・加工その他の利用について、著作者人格権を行使しない。
といった形です。
利用許諾だから著作者人格権について考えなくてよい、というわけではありません。
契約ではどう書けばいい?
たとえば、
制作者は、制作会社に対し、本制作物を本作品の本編、映画祭、劇場上映、配信、販売、予告編、SNSその他本作品の公開・宣伝のため、日本国内および国外において利用することを許諾する。
さらに必要なら、
制作会社は、本作品の制作・宣伝に必要な範囲で、本制作物を編集、加工、サイズ変更その他必要な変更を行うことができる。
という形です。
独占利用が必要なら、第三者への利用許諾をしないことを加えます。
利用期間を限定するなら、その期間も明記します。
実際には、制作物や利用目的に合わせて調整します。
実際にはどう決めればいい?
1.その映画で使えれば十分か考える
一作品だけで使うものなら、利用許諾で足りることがあります。
2.利用する場所を具体的にする
本編、映画祭、配信、SNS、広告などを確認します。
3.地域・期間も決める
海外利用や将来の再配信まで考えます。
4.加工・データ共有も確認する
編集や、制作関係者へのデータ提供が必要になることがあります。
5.独占利用が必要か考える
他の作品では使ってほしくない素材なのかを確認します。
6.続編・シリーズまで使うなら範囲を広げる
将来展開が広いなら、著作権譲渡も含めて考えます。
まとめ
映画・動画制作では、著作権を譲渡してもらわなくても、必要な利用許諾が取れていれば十分なことがあります。
利用許諾では、
何の作品で使うか
本編
映画祭
劇場上映
配信
SNS
広告
海外利用
利用期間
編集・加工
制作関係者へのデータ提供
独占利用の有無
続編・シリーズ利用
まで、必要に応じて考えます。
重要なのは、「著作権を持っているか」ではなく、「制作側が必要な使い方を契約上できるか」です。
一作品で必要な範囲だけ使うなら利用許諾。
長期間・続編・シリーズ展開まで自由に使いたいなら、より広い利用許諾や著作権譲渡も検討する。
実際にどう使うのかから逆算して、必要な利用範囲を決めるのが実務的です。
参考
※映画・動画制作の利用許諾や利用範囲について個別にご相談が必要な場合は、お問い合わせページをご利用ください。
