店内BGMが入ったYouTube動画はそのまま公開できる?
更新日:9月14日
結論からいうと、店内で流れていたBGMが動画に入ったからといって、必ず削除しなければならないわけではありません。
ただし、「お店が適法にBGMを流している」ことと、「その音源を録音した動画をYouTubeへ公開できる」ことは別です。
特に、市販CDや音楽配信サービスなどの音源がそのまま入っている場合は、曲そのものの著作権だけでなく、レコード会社やアーティストなどが持つ音源の権利も関係します。
また、YouTubeではContent IDによって楽曲が検出され、
広告収益が権利者側へ行く
一部地域で見られなくなる
動画がブロックされる
といった処理が行われることがあります。
「店内で偶然入っただけだから大丈夫」と、そのまま投稿するのは少し危険です。
この記事で分かること
店内BGMが入った動画で何を確認するのか
YouTubeとJASRACの契約だけでは解決しないケース
撮影後にBGMが入っていたらどう処理すればいいのか
まず「曲」と「音源」を分けて考える
音楽には、ざっくり分けると二つの権利が関係します。
ひとつは、作詞・作曲された「曲」そのものの著作権。
もうひとつは、CDや配信で流れている「録音された音源」に関する権利。
たとえば有名な曲を自分で演奏してYouTubeへ投稿する場合と、市販CDの音をそのまま動画に入れる場合では、同じ曲でも状況が違います。
JASRACは、YouTubeなど利用許諾契約を締結している動画投稿サービスについて、一定の範囲なら、JASRAC管理楽曲を投稿者が個別に手続きせず利用できると案内しています。
ただし、市販CDやダウンロードした音源を使う場合については、著作権とは別に著作隣接権の許諾が必要と明記しています。
つまり、「YouTubeはJASRACと契約しているから、市販曲が入っても全部OK」ではありません。
ここが一番間違えやすいところです。
店で流れているBGMなら、お店の許可で使える?
基本的には別の話です。
お店がBGMを流すために必要な手続きをしていたとしても、その許諾は、
店内で音楽を流すこと
についてのものです。
来店客がその音を録音して、
YouTube動画に収録する
TikTokへ投稿する
広告動画へ使う
ところまで、お店が自由に許可できるとは限りません。
つまり、
店長さんから撮影OKをもらいました。
というだけでは、BGMの権利処理までは終わっていません。
店舗撮影の許可と、音楽利用は別に考えます。
小さく入っただけでも問題になる?
実際の動画では、
「音楽を使おうと思ったわけではなく、たまたま店内BGMが入った」
ということが多いと思います。
たとえば、
出演者が料理を食べながら話している後ろで、曲がうっすら流れている
店員さんとの会話を撮ったら、スピーカーの曲も録音されていた
というケースです。
この場合、BGMが主役ではありません。
著作権法30条の2の「付随対象著作物」として、撮影時に偶然、軽微に入り込んだ音楽の利用が認められる場合もあります。
ただし、映り込み・録音の程度や利用目的、著作権者の利益を不当に害しないかなどによって判断されます。
また、著作権法上利用できる場合でも、YouTubeのContent IDに検出されるかどうかは別の問題です。
ただし、だからといって自動的に権利処理が不要になるわけではありません。
YouTubeではアップロードされた動画がContent IDで自動的に照合されるため、背景で流れている曲でも検出されることがあります。
検出された場合の扱いは、権利者側の設定によって変わります。
Content IDの申し立てが来たら「著作権侵害確定」?
これも違います。
YouTubeのContent IDは、アップロードされた動画と、権利者から提供された音声・映像データを照合する仕組みです。
一致すると、Content IDの申し立てが付くことがあります。
その結果、
権利者が広告収益を得る
視聴状況を追跡する
一部または全部の地域でブロックする
などの処理が行われることがあります。
JASRACも、YouTubeでJASRAC管理楽曲が検出された場合に届く「著作権の申し立て」について、それ自体が著作権侵害を主張するものではないと案内しています。
つまり、申し立てが来た=直ちに違法動画という意味ではありません。
ただし、「申し立てが来ただけだから何もしなくていい」と一律に考えるのも違います。
どの音源が、どの範囲で検出されたのかを確認します。
撮影後にBGMが入っていたら、どうする?
まず、公開前にイヤホンなどで音を確認します。
そのうえで、
会話の後ろにうっすら入っているのであれば、
BGM部分の音量を下げる
ノイズ除去や音声分離を使う
別の許諾済み音源に差し替える
といった方法があります。
曲がはっきり聞こえるのであれば、
該当箇所をカットする
元音声を消してナレーションや別BGMを入れる
方が処理しやすいことがあります。
短い動画なら、無理に権利関係を調べ続けるより、聞こえない状態に編集してしまう方が現実的な場合もあります。
「数秒だけなら大丈夫」は危ない
SNSでは、
5秒までなら大丈夫
10秒なら著作権に引っかからない
といった話を見かけることがあります。
しかし、何秒までなら自由に使えるという一律のルールはありません。
短時間でも、その音源を使っていることには変わりません。
また、Content IDも「一定秒数以下なら必ず検出しない」という仕組みではありません。
そのため、短いから大丈夫ではなく、その音源を動画に残す必要があるかで考えた方が安全です。
自分でその曲を歌った場合は?
たとえば店内BGMではなく、自分が動画内で有名曲を歌った場合です。
この場合、市販CDの音源そのものを使っているわけではないので、音源製作者の権利の問題は別になります。
一方で、曲そのものの著作権は残ります。
YouTubeとJASRACの契約などによって一定範囲で投稿できる場合もありますが、
広告・宣伝目的
替え歌
編曲
外国作品
アカウントの運営主体
などによって別の手続きが必要になることがあります。
「自分で歌ったから著作権は関係ない」という意味ではありません。
PR動画では特に注意する
通常の店舗紹介動画と、PR案件では扱いが変わることがあります。
JASRACは、特定の企業・団体や商品・サービスを宣伝する動画について、JASRAC管理楽曲を利用する場合、広告目的複製の手続きが必要になるケースがあると案内しています。
つまり、
普通に店を訪れて撮った動画
店から商品提供を受けたPR動画
企業から報酬を受けた広告動画
では、同じBGMが入っていても確認内容が変わることがあります。
この点でも、「YouTubeだから包括契約で全部解決」ではありません。
撮影時にできる対策もある
店内BGMは、後から消すより撮影時に避けられるなら、その方が楽です。
たとえば、
スピーカーから離れた席を選ぶ
店にBGMを止められるか聞く
ピンマイクを使って会話を中心に録音する
必要な映像だけ撮って、音は編集で差し替える
といった方法があります。
ただし、営業中の店舗に、
YouTube撮るのでBGMを止めてください。
と当然のように求めるのは現実的ではありません。
止めてもらえないなら、撮影方法や編集で対応します。
実際にはどう判断すればいい?
店内BGMが入ったら、まず次の順番で考えると分かりやすいです。
1.曲が聞き取れるか
ほとんど分からないのか、はっきり聞こえるのか確認します。
2.市販音源がそのまま入っているか
店内スピーカーから流れている市販曲なら、音源に関する権利も考えます。
3.その音を残す必要があるか
動画内容に不要なら、カットや差し替えが一番簡単です。
4.PR・広告動画ではないか
広告目的なら、通常投稿とは別の確認が必要になることがあります。
5.投稿後に申し立てが付いたら内容を確認する
Content IDの申し立てと、著作権侵害による削除申請は同じものではありません。
この順番なら、「曲が入った!全部撮り直し!」と慌てずに済みます。
まとめ
店内BGMが入ったYouTube動画では、
お店がBGMを流せることと、その音源を動画で使えることを分けて考える
のが基本です。
YouTubeはJASRACと利用許諾契約を結んでいますが、それだけですべての音楽利用が解決するわけではありません。
特に、市販CDや配信音源がそのまま入っている場合は、著作権とは別に音源の権利も関係します。
そして、実際のSNS動画なら、
不要なBGMは公開前にカット・低減・差し替える
という対応が一番現実的なことも多いです。
「偶然入ったから大丈夫」
「数秒だから大丈夫」
「YouTubeだからJASRACが処理してくれる」
と一つの理由だけで判断しないこと。
これが店内BGMを扱うときのポイントです。
参考
※個別の動画での音楽利用や権利処理についてご相談が必要な場合は、お問い合わせページをご利用ください。
