カット割りでロケ費を減らす――一つの場所を全部借りなくてもシーンは作れる
更新日:9月6日
低予算撮影では、一つのシーンを一つのロケ地だけで撮る必要はありません。
病院の外観だけ本物の施設で撮り、廊下や診察室は別の場所で撮る。
駅前のカットだけ正式に許可を取って撮影し、会話部分は別の場所へ移す。
高額なオフィスはエントランスだけ使い、室内は安い貸会議室で撮る。
こうした組み方をすると、高いロケ地を使う時間や範囲を減らしながら、作品上は一つの場所として見せることができます。
スタッフ2〜5人程度の小規模制作なら、ロケ地を探す前に「このシーンを何カットに分けられるか」を考えるだけでも、選べる場所がかなり増えます。
この記事でわかること
小規模撮影でカット割りを使ってロケ費を減らす方法
外観と室内を別の場所で撮る方法
高額なロケ地で撮るカットを減らす考え方
会話シーンを別の場所へ移す方法
同じロケ地に見せるために合わせたいポイント
撮影順と編集を考えてロケ地を選ぶ方法
どのカットまで別撮りできるかの考え方
一つのシーンを一か所で全部撮らなくてもいい
台本では、「病院に入り、廊下を歩き、診察室で医師と話す」という一つのシーンになっているかもしれません。
でも撮影では、
病院の外観
入口
廊下
診察室
を別々の場所で撮ることができます。
編集でつなげれば、観客には同じ病院として見せられる場合があります。
例えば、
外観だけ撮影可能な病院
↓
廊下は公共施設
↓
診察室は普通の個室を美術で作る
という組み合わせです。
本物の病院を半日借りるより、病院でなければ成立しないカットだけ本物を使う方が費用を抑えられることがあります。
高額なロケ地では「ここでしか撮れない画」を優先する
撮影料金が高い場所を借りるなら、そこでしか撮れないカットを先に考えます。
例えば高層オフィスなら、
大きなエントランス
高層階からの眺望
特徴的なエレベーターホール
などです。
一方、
会議室で二人が話す
机でPCを見る上司と部下が相談する
というカットなら、別の貸会議室や知人の会社でも撮れるかもしれません。
この場合、高額なオフィスでは、外観とエントランスだけ撮るという選択肢があります。
作品上は同じ会社でも、内部の会話シーンまで同じ建物で撮る必要はありません。
大がかりな撮影ができない場所であっても、動画撮影がOKな場所であれば、眺望や外観だけスマートフォンで撮影して、次のカットに繋げるという方法がとれる場合もあります。
会話シーンは別の場所へ移しやすい
低予算制作でロケ費を減らしやすいのが、人物同士の会話です。
例えば駅で、
主人公が改札を出る
相手を見つける
二人が長く話す
というシーンがあるとします。
駅構内や駅周辺で撮影できる時間が限られているなら、駅で撮るのは、
改札を出る
相手を見つける
二人が歩き出す
ところまで。
長い会話は、駅に近い道路や広場、店舗、別の撮影可能な場所へ移す方法があります。
「駅のシーンだから会話全部を駅で撮る」と決めなくてもよいわけです。
台本上も自然に場所を移せるなら、その方が撮影しやすくなることがあります。
寄りのカットは場所をごまかしやすい
人物のアップやバストショットでは、背景に映る範囲が狭くなります。
例えば学校の廊下で、
生徒が振り返る
先生が呼び止める
というカットなら、
廊下全体を見せるカットだけ学校らしい場所で撮り、人物の寄りは似た壁やドアのある別の場所で撮るという方法もあります。
ただし、背景が完全に違えば違和感が出ます。
壁の色
床
照明
ドア
窓
など、画面に入る部分は合わせます。
広い画ほど本物のロケ地が必要になり、寄りの画ほど代替しやすいと考えると整理しやすくなります。
最初に「場所を説明するカット」を入れる
別々のロケ地を一つの場所として見せるときは、観客に「ここはどこか」を最初に伝えるカットが役立ちます。
例えば、
病院の外観
学校の校門
会社の看板
駅名
店舗の入口
などです。
最初に、「ここは○○病院」と分かるカットを見せたあとで室内へ入れば、観客はその後の室内も同じ病院として受け取りやすくなります。
会社なら、
ビル外観
会社名
受付
を見せてから会議室へつなぐ。
学校なら、
校門
校舎
外観
を見せてから教室へつなぐ。
場所を説明するカットに本物を使い、細かい芝居は別の場所で撮るという組み方ができます。
ドアを使うと場所をつなぎやすい
場所を分けるときに使いやすいのがドアです。
例えば、
病院の廊下で人物が診察室のドアを開ける
↓
別のロケ地で、人物がドアから入ってくる
とつなげれば、同じ診察室へ入ったように見せることができます。
エレベーターも同じです。
オフィスビルのエレベーターホールで扉が閉まる
↓
別の場所のエレベーターや室内から人物が出てくる
という組み方ができます。
ドア、階段、曲がり角など、画面が一度切れる場所はロケ地を切り替えやすいポイントです。
人物の動きを合わせる
別々の場所で撮影したカットをつなぐなら、人物の動きも合わせます。
例えば、
右から左へ歩いて廊下を出る
の次に、
左側から人物が入ってくる
と、方向が逆に見えて違和感が出ることがあります。
また、
バッグを右肩に掛けている
書類を左手に持っている
上着を着ている
なども合わせます。
低予算撮影では数日空けて別ロケ地を撮ることもあるので、
衣装
髪型
持ち物
人物の向き
を記録しておくとつなぎやすくなります。
背景の色や素材も合わせる
同じ場所として見せたいなら、背景の特徴も見ます。
例えば一つの病院として、
廊下Aは白い壁と青い床
なのに、
診察室Bは木目の壁と赤い床
だと、作品によっては違和感が出るかもしれません。
全部を一致させる必要はありませんが、壁の色、床、ドアの色、照明の色、窓枠など、画面に大きく入る要素が近い場所を選ぶとつなぎやすくなります。
ロケ地写真だけで判断せず、実際に撮る方向の写真を並べて見ると分かりやすいでしょう。
音でも場所をつなげられる
映像だけでなく、音も場所の印象を作ります。
例えば駅のシーンなら、電車の音、駅の環境音が続いていれば、別の場所で撮った寄りのカットでも駅周辺として感じやすくなります。
病院なら、静かな館内音、遠くの足音
会社なら、キーボードを叩く音、電話の着信音、人の話し声などです。
撮影可能な場所で必要な素材を用意し、編集上の音で場所の連続性を作ると多少の違和感を消すことができることもあります。
撮影時間が短い場所では芝居を減らす
1時間数万円のロケ地を借りる場合、その場所で長い芝居を何テイクも撮っていると時間がなくなります。
高額なロケ地では、
外観
人物の出入り
広い画
その場所特有の設備
などを優先し、「長い会話・細かなリアクション・人物のアップ」は別の場所へ移せないか考えます。
特にアップは、背景に映る範囲が少ないので代替しやすいカットです。
とはいえ、同じシーンを別場所や別時間に撮影することは、演者側の負担が大きくなるので、その点も考慮した上で決定しましょう。
しかし、高額な場所ほど、撮影時間を「その場所でしか撮れない画」に使うと無駄を減らせます。
ただし、分けすぎると逆に高くなる
ロケ地を分ければ必ず安くなるわけではありません。
3か所に分けた結果、
移動時間が増える
交通費が増える
機材搬入を3回する
出演者の拘束時間が伸びる
なら、1か所をまとめて借りた方が安いこともあります。
例えば、1か所30,000円で全部撮れるのに、無料の場所を3か所使って丸2日かかるなら、必ずしも後者が得とは限りません。
場所代だけでなく、撮影全体にかかる時間と費用で比較することが重要です。
カット割りでロケ費を減らすときの順序
1 シーンを必要なカットに分ける
外観、入口、廊下、室内、人物アップなどに分けます。
2 本物でないと難しいカットを探す
建物全体や特徴的な設備などです。
3 別の場所でも撮れるカットを分ける
会話、人物の寄り、普通の部屋などです。
4 場所を説明するカットを決める
外観、看板、入口など、観客に場所を伝える画を考えます。
5 ロケ地同士の見た目を合わせる
壁、床、ドア、照明などを確認します。
6 人物の動きや衣装を記録する
別日に撮ってもつながるようにします。
7 移動費まで含めて本当に安くなるか確認する
ロケ地を増やしすぎないようにします。
まとめ
低予算撮影では、一つのシーンを一つのロケ地ですべて撮る必要はありません。
病院なら、外観だけ本物、廊下は公共施設、診察室は別の部屋という撮り方もできます。
会社なら、ビル外観とエントランスだけ本物、会議室は安い貸室という方法もあります。
特に、人物のアップ長い会話背景があまり映らないカットは、別の場所へ移しやすい部分です。
一方、本物の場所だからこそ成立する外観や広い画には、必要なら予算を使います。
低予算だから全部を安い場所で撮るのではなく、「このカットはどこで撮るべきか」を一つずつ分ける。
カット割りからロケ地を考えると、高額な場所を借りる時間や範囲を減らしながら、作品として必要な画を残すことができます。
参考
※撮影場所の管理者や必要な手続が分からない場合は、お問い合わせからご相談ください。
