別の場所を病院・学校・会社に見立てて撮る――本物の施設を借りなくても成立する
更新日:9月6日
病院のシーンだから病院、学校のシーンだから学校、会社のシーンだからオフィスビルを借りなければならないとは限りません。
映像に必要なのが廊下、受付、会議室、個室など一部分だけなら、撮影しやすい別の場所に美術や小道具を足して、その施設に見立てる方法があります。
例えば、普通の会議室を会社にする、白い個室を診察室にする、公共施設の廊下を学校や病院として撮る、といった方法です。
スタッフ2〜5人程度の小規模撮影なら、本物の施設を丸ごと借りるより、「画面に何があればその場所に見えるか」を考えた方が、費用も交渉の負担も抑えられることがあります。
この記事でわかること
小規模撮影で別の場所を見立てて使う方法
病院・学校・会社らしく見せるポイント
普通の部屋や廊下をロケ地に使う考え方
小道具や掲示物で場所の印象を変える方法
見立て撮影に向いている場所の探し方
外観と室内を別の場所で撮る方法
見立てるときに画角や音で注意すること
借りる前に管理者へ確認しておきたいこと
「その施設らしさ」は何でできている?
例えば病院の診察室を考えてみます。
画面に必要なのは、本物の病院という建物そのものではなく、
白っぽい壁
机と椅子
診察用のベッド
白衣
カルテ風の書類
医療施設らしい掲示物
かもしれません。
学校なら、
黒板
机と椅子
時間割
掲示物
ロッカー
教室らしいカーテン
などです。
会社なら、
デスク
ノートPC
電話
ホワイトボード
会社名
ファイル
社員証
などで印象を作れます。
ロケ地そのものが何であるかより、画面の中に何が映っているかで場所が伝わることがあります。
低予算制作では、まず台本を見ながら、「この場所を〇〇に見せているものは何か」を考えてみます。
普通の会議室を会社にする
会社のシーンは比較的見立てやすい場所です。
例えば普通の貸会議室でも、
ノートPCを置く
ホワイトボードに予定を書く
会社名を置く
ファイルや書類を並べる
社員証を付ける
だけで、会社の会議室として成立することがあります。
社長室なら、
大きめの机
革張りの椅子
本棚
観葉植物
会社名や表彰状
などを加える方法があります。
逆に、会議室の壁に施設名や利用案内が大きく出ていると、一気に「貸会議室」に見えてしまいます。
ロケハンでは部屋の広さだけでなく、画角に余計なものが入らないか、既存の掲示物を隠せるかも見ます。
白い個室を病院の診察室にする
病院は実際の医療施設で撮ると、患者への配慮や診療への影響などから条件が厳しくなることがあります。
でも、診察室の短いシーンなら、本物の病院でなくても作れる場合があります。
例えば、
白や薄い色の壁
無機質な床
机
椅子
カーテン
がある部屋なら、
白衣
聴診器
診察ベッド
医療関係の掲示物
ファイル
などを加えることで、診察室らしい画を作れます。
ただし、医療機器らしい物を大量に置けば病院になる、というわけでもありません。
必要な画が、
医師と患者の顔
机
背景の一部
だけなら、画面に映らない場所まで作り込む必要はありません。
小規模制作では、カメラに映る範囲だけ成立させるという考え方も重要です。
普通の廊下は意外と使える
廊下も、見立て撮影に使いやすい場所です。
例えば同じ廊下でも、
学校の掲示物や教室名→ 学校
案内表示や診療科名→ 病院
部署名や案内板→ 役所
会社名や会議室表示→ オフィス
というように印象を変えられます。
特に人物を追いながら撮るようなカットでは、背景の情報量がそれほど多くないこともあります。
「学校の廊下を探す」のではなく、「学校に見せられる廊下を探す」と考えると、候補はかなり広がります。
東京ロケーションボックスのロケ地検索でも、「病院・病室に見える」「オフィスビルに見える」「役所に見える」など、本来の施設種別とは別に「何に見えるか」で探せるタグがあります。
受付カウンターがあれば用途を変えられることもある
受付も作品によく出てきます。
病院受付
会社受付
役所窓口
ホテル受付
学校事務室
などです。
これも、必要なのがカウンターとその周辺だけなら、本来の施設用途と一致していなくても成立する場合があります。
例えば、
受付番号・診療案内→ 病院
部署案内・申請書→ 役所
会社名・来客用タブレット→ オフィス
のように、小道具で設定を変えられます。
ただし、固定された施設名やロゴが大きく入っている場所は隠しにくいので、最初から背景がシンプルな場所を選ぶ方が作りやすいことがあります。
学校は「教室全部」が必要とは限らない
学校も、台本によって必要な場所がかなり違います。
例えば、
先生と生徒が話す
廊下を歩く
校門から出る
だけなら、
教室
廊下
校門
を全部同じ学校で撮る必要はありません。
教室だけ旧校舎や撮影施設を使い、廊下は別の公共施設、外観は撮影可能な学校施設という組み合わせも考えられます。
また、教師と生徒が向かい合って話すだけなら、
黒板
机
掲示物
が画面に入る範囲を作れば、普通の部屋でも教室に見せられる場合があります。
逆に、
長い廊下を生徒が大勢歩く
体育館で全校集会をする
校庭から校舎全体を見せる
といったカットは、本物の学校や学校ロケ施設を使った方が成立しやすくなります。
何でも代用するのではなく、本物が必要なカットと作れるカットを分けます。
外観と室内は別々に撮っていい
作品では一つの病院でも、実際の撮影場所が一つとは限りません。
例えば、
病院の外観→ 撮影可能な医療施設
廊下→ 公共施設
診察室→ 貸室
病室→ スタジオ
という組み合わせでも、編集上は一つの病院として見せられます。
会社も同じです。
ビル外観→ オフィスビル
エントランス→ 撮影可能な別のビル
会議室→ 貸会議室
社長室→ 知人の事務所
と分けることができます。
低予算なら、本物でなければ作りにくい外観などにだけ予算を使い、室内を安く撮れる場所へ分ける方法もあります。
見立て撮影は画角が重要
別の場所を見立てるときは、「現場全体を見る」と違和感があっても、カメラを通すと成立することがあります。
例えば会議室の一角だけを会社として使うなら、
施設名の書かれた入口
公共施設らしい掲示板
不要な机や椅子
を画角から外せばよい場合があります。
逆に、広角で部屋全体を見せると、本来の施設用途が分かってしまうこともあります。
ロケハンでは、どこを使えるかだけでなく、どこまで映せば成立するかをカメラ位置から確認します。
スマートフォンでもよいので、実際の画角に近い状態で撮って確認すると分かりやすくなります。
小道具は「説明するため」に置く
見立て撮影では、小道具を増やしすぎる必要はありません。
例えば病院なら、
診療案内
白衣
カルテ
聴診器
など、数点で十分伝わることがあります。
会社なら、
会社名
PC
電話
社員証
などです。
学校なら、
時間割
黒板
出席簿
教科書
など。
重要なのは、「ここは病院です」と視聴者に伝わる物を少数置くことです。
予算を使って大量の美術を作っても、そもそも画面に映らなければ意味がありません。
先にカットを決め、その画角に必要なものから用意すると無駄を減らせます。
音で場所がバレることもある
見立てるときは見た目だけでなく、音も確認します。
例えば病院の診察室として使いたい部屋の横で、
電車が頻繁に通る
店内BGMが流れている
学校のチャイムが鳴る
となれば、画は成立しても録音で困ることがあります。
会社として撮っているのに、背後から施設名の館内放送が入ることもあります。
小規模制作では後処理へ大きな予算をかけにくいこともあるので、静かな場所か、撮影中に音源を止められるかもロケハンで確認します。
美術を入れられるかは必ず確認する
「この会議室を会社にしよう」と決めても、好きなように変更できるとは限りません。
確認したいのは、
机や椅子を動かせるか
掲示物を隠せるか
壁に物を貼れるか
架空の施設名を設置できるか
小道具を持ち込めるか
終了後の原状回復方法
などです。
知人の場所でも、貸会議室でも、公共施設でも同じです。
見立て撮影は、許可を取らなくてよい方法ではありません。
借りる場所のルールの範囲内で、どこまで美術を変更できるかを確認して作ります。
見立てる場所を探すときの順序
1 必要な画を決める
病院なら「病院」ではなく、診察室・廊下・受付などに分けます。
2 その場所らしく見える要素を考える
机、カウンター、廊下、壁、窓など、必要な構造を整理します。
3 手元にある場所を見る
自宅、知人の会社、店舗、貸室などで使えそうな場所がないか確認します。
4 施設名ではなく特徴で探す
「病院」ではなく「白い個室」、「会社」ではなく「会議室」という探し方もします。
5 画角を確認する
余計なものを映さず成立させられるか確認します。
6 美術変更できる範囲を確認する
掲示物、小道具、家具移動などを管理者へ確認します。
7 本物が必要なカットだけ別にする
外観や大規模な空間など、代用しにくい部分だけ別ロケ地を探します。
まとめ
病院、学校、会社などのシーンでも、必ずその施設そのものを借りる必要があるとは限りません。
普通の会議室を会社にする。白い個室を診察室にする。廊下を学校や役所として使う。受付カウンターを小道具で病院受付に変える。
こうした見立ては、スタッフ2〜5人程度の低予算撮影でも使いやすい方法です。
重要なのは、「本物の場所をどう安く借りるか」だけで考えないこと。
台本に必要な画を分けて、本物でなければ成立しない部分、別の場所で作れる部分を見極めます。
外観だけ本物を使い、室内は別の場所で撮る方法もあります。
もちろん、別の用途の場所を使う場合でも、撮影目的や美術変更について管理者の了承は必要です。
低予算だから場所を妥協するのではなく、カメラに映る範囲を作る。
そう考えると、使えるロケ地の候補はかなり広がります。
参考
※撮影場所の管理者や必要な手続が分からない場合は、お問い合わせからご相談ください。
