出演映像はどこまで使える?
更新日:9月16日
結論からいうと、出演してもらった映像を、制作側がどこでも・いつまでも自由に使えるとは限りません。
映画では、撮影した映像を本編だけでなく、
映画祭
劇場公開
配信
予告編
SNS
広告・宣伝
ポスター
海外展開
などに使うことがあります。
撮影時点では映画祭への出品しか決まっていなくても、完成後に劇場公開や配信が決まることもあります。
そのため出演契約では、「出演してもらうこと」だけでなく、その映像を完成後にどこまで利用するのかを整理しておくことが大切です。
なお、映画に出演する俳優などには、著作権法上のいわゆる「ワンチャンス主義」という特有のルールがあります。
これは、俳優がその実演を映画に録音・録画することを許諾すると、その後の映画としての利用について、実演家の許諾権が原則として及ばなくなる場面がある、というものです。
ただし、これは「一度出演を承諾すれば、制作側が何にでも自由に使える」という意味ではありません。
法律上の権利関係と、出演者との契約でどこまで利用を認めてもらったのかは、分けて考える必要があります。
この記事で分かること
出演映像の利用範囲はどう決めるのか
映画祭・劇場・配信まで使えるようにするにはどうするか
予告編やSNSなどの宣伝利用はどう考えるか
静止画・再編集・切り抜きの扱い
海外利用や利用期間をどう決めるか
ワンチャンス主義と出演契約の関係
まず、本編をどこで使うのかを考える
出演映像の利用範囲を決めるときは、まず完成した作品をどこで公開する予定なのかを考えます。
たとえば、
映画祭
劇場
テレビ
動画配信サービス
DVD・Blu-ray等
Web配信
海外
などです。
撮影時点ですべて決まっているとは限りません。
自主制作映画として映画祭へ出す予定だった作品に、完成後、
劇場公開しませんか?
配信しませんか?
という話が来ることもあります。
最初の契約が「〇〇映画祭への出品だけ」と限定されていれば、新しい展開について出演者との確認が必要になることがあります。
反対に、
あらゆる媒体で永久に自由に利用できる
と必要以上に広く決めればいいわけでもありません。
現在予定している使い方と、その作品で現実的に考えられる将来の展開を整理しておくのが基本です。
予告編・SNS・宣伝にも使うなら決めておく
映画は、本編だけを公開して終わるわけではありません。
完成後には、
予告編
ティザー
SNS用動画
ポスター
チラシ
広告
映画祭の紹介ページ
配信サービスのサムネイル
などにも出演者の姿を使います。
本編への出演を了承したことと、宣伝への利用をどこまで了承したのかは、必ずしも同じではありません。
たとえば出演者から、
本編に出ることは聞いていたけれど、SNS広告で自分の顔が大きく使われるとは思っていなかった。
と言われることも考えられます。
そのため、出演契約では、
本編への利用
だけでなく、
作品の宣伝・広告への利用
についても整理しておくと分かりやすくなります。
映像から切り出した静止画も使う?
映画の一場面を静止画として切り出し、
ポスター
チラシ
SNS
Webサイト
映画祭資料
配信ページ
などに使うこともあります。
契約書に単に「映像を利用する」とだけ書いてあると、映像から切り出した静止画まで含まれるのか分かりにくくなることがあります。
宣伝に使う予定があるなら、
出演映像から切り出した静止画も利用すること
まで決めておく方が明確です。
再編集・切り抜きはどこまでできる?
完成した映画は、その後も用途に合わせて編集されることがあります。
たとえば、
予告編用に短くする
SNS用の縦動画にする
映画祭用の短縮版を作る
海外版を作る
字幕や吹替えを付ける
宣伝用に一部を切り抜く
といったものです。
こうした編集を予定しているなら、出演契約でも、
本作品およびその宣伝に必要な範囲で編集・加工して利用できる
など、必要な範囲を整理しておく方法があります。
ただし、俳優などの実演家には実演家人格権があります。
実演家人格権には、氏名表示権や同一性保持権があります。
そのため、編集できる契約になっているから、出演者の実演をどのように改変してもいいということではありません。
通常の作品編集や宣伝用編集と、出演者の実演そのものに大きな変更を加える場合は分けて考える必要があります。
海外利用も最初から考えておく
自主制作映画でも、完成後に海外へ展開することがあります。
たとえば、
海外映画祭
海外配信
国際販売
海外向けの宣伝
などです。
撮影時点では国内しか考えていなくても、作品が完成してから海外映画祭への出品や海外配信の話が出ることがあります。
海外展開の可能性がある作品なら、出演契約でも、
国内だけで利用するのか
海外を含めて利用するのか
を考えておくと、後から条件を整理し直す手間を減らせます。
利用期間はどうする?
出演映像を利用できる期間も、契約で決めることができます。
たとえば、
公開から3年間
と期間を限定する方法もあれば、
利用期間を定めない
という方法もあります。
映画は公開から何年も経って、
再上映
再配信
特集上映
パッケージ化
されることがあります。
長期間利用する予定なら、その前提を出演者にも分かるようにしておくことが大切です。
反対に期間を限定した場合は、期限後に再上映や再配信をするとき、契約内容を改めて確認する必要があります。
出演料を払えば、何にでも使えるわけではない
出演料と出演映像の利用範囲は、分けて考えます。
たとえば、
出演料5万円を支払った。
というだけで、
この映像を永久に、どんな用途にでも使える。
と自動的に決まるわけではありません。
出演料については、
何に対する報酬なのか
出演映像については、
どの利用まで契約上認めてもらうのか
を整理します。
映画祭への出品まで含むのか
劇場公開や配信まで含むのか
宣伝にも使うのか
海外利用も含むのか
出演料だけ決めて、こうした利用条件が何も決まっていない状態は避けた方がいいでしょう。
映画には「ワンチャンス主義」というルールもある
俳優などの実演家には、著作権法上、著作隣接権が認められています。
一方、映画の著作物に録音・録画された実演については、映画特有の扱いがあります。
俳優が、その実演を映画に録音・録画することを許諾した場合、その後、その映画を利用する際には、実演家の許諾権が原則として及ばなくなる場面があります。
これが一般に「ワンチャンス主義」と呼ばれているものです。
文化庁の著作権テキストでも、映画の著作物に録音・録画された実演について、この特別な扱いが説明されています。
ただし、ワンチャンス主義は、
一度撮影を了承したら、出演者との約束を無視して何にでも利用できる。
という制度ではありません。
出演契約で利用方法や範囲を決めていれば、その契約内容が問題になります。
また、氏名表示権や同一性保持権といった実演家人格権までなくなるわけではありません。
ワンチャンス主義を含む実演家の権利そのものについては、別記事「俳優・出演者にも著作権はある?|実演家の権利とは」で詳しく扱います。
この記事で重要なのは、ワンチャンス主義があるから契約を曖昧にしてよいのではなく、完成後の利用方法を最初から契約で整理しておくという点です。
完成後の使い方から逆算して決める
出演映像の利用範囲を考えるときは、
とりあえず撮影できればいい。
ではなく、
完成したあと、この作品をどう使う可能性があるか
から逆算すると整理しやすくなります。
たとえば、
本編は映画祭と劇場で上映する
配信の可能性もある
予告編をYouTubeに公開する
SNSで出演者の映像を宣伝に使う
本編から静止画を切り出してポスターにする
海外映画祭にも応募する
という作品なら、その範囲を出演契約で確認しておきます。
作品が広がるたびに出演者全員と契約をやり直すより、現実的に想定できる展開を撮影前に整理しておく方が、制作側にも出演者側にも分かりやすくなります。
まとめ
出演してもらった映像を、制作側が無制限に利用できるわけではありません。
出演契約では、
本編の公開方法
映画祭・劇場・配信
予告編
SNS
広告・宣伝
静止画利用
再編集・切り抜き
海外利用
利用期間
など、完成後にどこまで利用するのかを整理しておきます。
映画には「ワンチャンス主義」という特有のルールもありますが、だからといって出演者との契約が不要になるわけではありません。
大切なのは、法律上利用できるかだけを見るのではなく、出演者とどこまで利用する約束をしたのかを明確にしておくことです。
作品が完成してから、
そこまで使うとは聞いていない。
となるのを避けるためにも、撮影後の展開まで考えて利用範囲を決めておきましょう。
参考
※映画・動画制作の出演映像の利用範囲について個別にご相談が必要な場合は、お問い合わせページをご利用ください。
