他人の体験談をもとに映画を作りたい
更新日:9月7日
友人、家族、取材相手などから聞いた体験をもとに、映画や動画を作りたいことがあります。
たとえば、
実際にあった恋愛
家族の出来事
仕事上のトラブル
病気や事故の経験
犯罪被害
業界内の出来事
などです。
この場合、まず分けて考えたいのは、体験した「事実」そのものと、その人が話した文章や表現です。
出来事そのものには著作権はありません。
ただし、本人が独自の文章としてまとめた手記や、特徴的な語りをそのまま使う場合は、著作権が関係することがあります。
また、著作権とは別に、
プライバシー
名誉
肖像
個人情報
本人との約束
なども問題になります。
そのため、「本人から聞いた話だから自由に映画化できる」とは限りません。
この記事で分かること
他人の体験談を映画にしてよいのか
体験談そのものに著作権はあるのか
本人の許可は必要なのか
名前を変えれば大丈夫なのか
インタビュー内容をそのままセリフにしてよいのか
実際に映画化するとき何を確認すればよいのか
体験そのものには著作権はない
たとえば、
事故に遭った
離婚した
会社でトラブルがあった
海外で珍しい経験をした
芸能活動でこういう出来事があった
といった事実そのものには、著作権はありません。
そのため、本人の体験から着想を得て、自分で脚本を書くこと自体はできます。
でも「語り方」には著作権があることがある
本人が体験を、
手記
ブログ
SNS
メール
原稿
インタビュー記事
などに独自の文章でまとめている場合、その文章には著作権が認められることがあります。
そのため、体験そのものを参考にすることと、
本人が書いた文章をそのまま脚本に使うこと
は別です。
インタビューで聞いた話は?
取材で本人から話を聞いた場合、話された内容の中にも、
独自の言い回し
長い説明
特徴的な表現
が含まれることがあります。
それをそのままナレーションやセリフとして使う場合は、単なる事実利用ではなく、本人の表現を利用している可能性があります。
そのため、内容を参考にして自分で脚本化するのか、本人の言葉をそのまま使うのかを分けます。
本人の許可は必要?
他人の体験をもとに映画を作る場合、法律上いつでも本人の許可が絶対必要というわけではありません。
ただし、本人が特定できる形で、
家族関係
恋愛
病歴
犯罪被害
金銭問題
職場トラブル
性的な情報
などを描く場合は、プライバシーや名誉の問題が出ることがあります。
また、本人から直接話を聞いて作品化するなら、どこまで使ってよいかを確認しておく方が実務的です。
名前を変えれば大丈夫?
名前を変えれば必ず大丈夫、ということではありません。
たとえば、
職業
年齢
住んでいる場所
家族構成
特徴的な出来事
周囲の人物関係
が一致していれば、本人や周囲の人には誰の話か分かる場合があります。
そのため、匿名化では「名前を変えたか」だけでなく「実際に特定できるか」を確認します。
他の登場人物にも注意
一人の体験談には、その人だけでなく、
元恋人
配偶者
家族
上司
同僚
医師
加害者
被害者
など、別の実在人物が出てくることがあります。
本人が、「自分の話は映画にしていい」と言っても、他の人物についてまで自由に描いてよいとは限りません。
特に、第三者の私生活や社会的評価に関わる内容は慎重に扱います。
脚色してもいい?
映画化する以上、実際の出来事をそのまま並べるだけでは作品として成立しにくいことがあります。
そのため、
時系列を変える
複数の人物を一人にまとめる
会話を作る
場面を追加する
結末を変更する
といった脚色をすることがあります。
本人から直接体験を提供してもらっているなら、どの程度の脚色をする可能性があるかも伝えておくとよいでしょう。
本人が、「事実をそのまま映画にしてくれる」と思っているのに、完成作品では大幅に変更されていると、後でトラブルになることがあります。
本人の許可を取るなら何を確認する?
少なくとも、
どの体験を使うのか
実名を使うか
仮名にするか
写真を使うか
本人の文章やメールを使うか
内容を脚色してよいか
映画祭
劇場公開
配信
海外利用
宣伝への利用
などを確認します。
本人への確認例
お話しいただいた○○のご経験をもとに、短編映画の企画を進めたいと考えています。実際の出来事を参考にしながら、映画として成立させるため、人物設定・時系列・会話などを一部脚色する可能性があります。本作品は映画祭への出品、その後の劇場上映・配信等を想定しています。どの範囲まで体験内容を使用してよいか、実名・仮名の扱い、写真や文章の使用などについて、事前に確認させていただければと思います。
口頭で話が進んでいる場合でも、あとから確認できるように文章で残しておくとよいでしょう。
メールや手紙をそのまま使いたい場合
体験談と一緒に、
メール
LINE
手紙
日記
SNS投稿
などを提供されることがあります。
これらの文章は、その内容によっては著作物になることがあります。
また、やり取りの相手が書いた文章なら、本人だけでなく相手側の権利も関係することがあります。
そのため、資料をもらったことと、作品でそのまま公開できることは別です。
録音したインタビュー音声をそのまま使う場合
本人の体験を聞くために録音したインタビューを、そのままドキュメンタリーなどで使いたい場合もあります。
この場合は、
録音すること
映画内で使うこと
配信すること
宣伝で使うこと
まで含めて本人に確認します。
単に取材記録として録音した音声を、後から映画本編に入れる場合は、本人が想定していないこともあります。
体験談を買い取れば全部自由になる?
体験談について対価を支払ったとしても、それだけで、
本人の文章の著作権
肖像
プライバシー
第三者の権利
まで全部移るわけではありません。
何について対価を支払い、何を利用できるのかを契約で明確にする必要があります。
複数の体験談を混ぜる方法もある
特定の一人をそのままモデルにする必要がない場合は、
複数人の経験を組み合わせる
人物設定を変更する
出来事を再構成する
地域や職業を変える
ことで、フィクションとして作り直す方法もあります。
これによって、特定の個人との結び付きが弱くなる場合があります。
ただし、元の人物が特定できる程度に特徴が残っていれば、単に複数の要素を混ぜただけで問題がなくなるわけではありません。
結局、他人の体験談を映画にしたいときはどうすればいい?
1.事実と本人の表現を分ける
体験そのものを参考にするのか、文章や発言をそのまま使うのか整理します。
2.本人が特定できるか確認する
名前だけでなく、設定全体を見ます。
3.第三者についても確認する
体験談に登場する別の人物の権利にも注意します。
4.本人から直接聞いたなら利用範囲を確認する
何をどこまで作品化してよいかを文章で残します。
5.脚色する可能性を伝える
映画では事実を変更する可能性があることを共有します。
6.写真・メール・録音などは別に確認する
体験談の利用許可と、資料そのものの利用許可は分けます。
まとめ
他人の体験談をもとに映画を作る場合は、事実・本人の表現・本人の権利を分けて考えることが大切です。
体験した事実そのものには著作権はない
本人が書いた文章などには著作権がある場合がある
インタビューでの特徴的な表現をそのまま使う場合も注意する
本人の許可が常に絶対必要とは限らない
特定可能な人物の私生活や評価を描く場合は慎重に考える
本人が許可しても第三者の権利まで解決するとは限らない
脚色する範囲を事前に共有する
メール・写真・録音などは別に利用可否を確認する
利用範囲はできるだけ文章で残す
という整理になります。
「話を聞かせてもらった」ことと、「その話を好きな形で映画にして公開できる」ことは別です。
何を提供してもらい、どこまで作品に使えるのかを整理しておくことが重要です。
参考
※他人の体験談やインタビューをもとに映画・動画を制作する際の著作権や権利関係について確認したい場合は、こちらからお問い合わせください。
