「引用」なら映画や漫画を使っても大丈夫?
映画や漫画、本、Web記事などを自分の作品の中で使いたいとき、
「引用なら使えるんじゃない?」
と考えることがあります。
たしかに、著作権法では、一定の条件を満たせば、著作権者の許可を取らずに他人の著作物を引用できる場合があります。
ただし、少し使えば引用になるわけではありません。
大切なのは、
なぜその作品を使う必要があるのか
自分の作品と引用部分のどちらが中心なのか
どこからどこまでが引用なのか分かるか
必要な範囲を超えていないか
出典を示しているか
という点です。
つまり、「引用」と名前を付けるのではなく、実際の使い方が引用として成立している必要があります。
この記事で分かること
著作権法上の「引用」とは何か
映画や漫画も引用できるのか
何秒・何ページまでなら使えるのか
出典を書けば引用になるのか
映画やドラマの演出として使う場合との違い
実際に引用したいとき何を確認すればよいのか
著作権法では「引用」が認められている
公表された著作物は、一定の条件を満たせば引用して利用することができます。
たとえば、
映画を批評する
漫画の表現を解説する
小説の文章を分析する
ニュース記事を検証する
Webサイトの表示について論評する
といった場合です。
こうした場面では、その作品そのものを示さなければ説明しにくいことがあります。
そのため、必要な範囲で他人の著作物を使うことが認められています。
「引用です」と書けばいいわけではない
よくある誤解が、「出典を書いて、引用と書けば使える」というものです。
しかし、出典表示は引用の条件の一つにすぎません。
たとえば映画のワンシーンを長く流して、最後に、
「出典:〇〇」
と表示しただけでは、必ずしも引用になるわけではありません。
その映像を使う必要があるのか、自分の表現との関係はどうなっているのかまで確認します。
自分の作品が「主」、引用が「従」
引用を考えるときに特に重要なのが、
自分の表現が中心で、引用する著作物がその説明を補うものになっているか
という点です。
たとえば映画評論動画で、
「この作品では、人物を画面端に配置することで孤独感を表現しています」
と解説し、その説明に必要な短いカットを示す場合。
これは、自分の批評が中心で、その説明のために映像を使っています。
一方で、
映画の名場面を何分も流し、その合間に少しコメントを入れるだけなら、引用部分の方が中心
になっている可能性があります。
「自分の作品の中に引用がある」のか、「他人の作品に自分のコメントを足しているだけ」なのかを考えます。
引用部分が分かるようにする
自分の表現と引用部分は、どこからどこまでなのか分かるようにします。
文章なら、
かぎ括弧
引用枠
字下げ
などで区別できます。
映像なら、
引用映像であることが分かる編集
作品名の表示
引用部分と自分の映像を明確に切り替える
などの方法があります。
漫画や画像なら、
枠で区別する
引用元を示す
自分の解説と混同しない配置にする
ことが考えられます。
何秒までなら引用できる?
「5秒まで」「10秒まで」という一般的な基準はありません。
引用できる長さは、
何を説明するために必要なのか
どの程度示さないと説明できないのか
によって変わります。
たとえば、1秒だけでは批評内容が伝わらないこともあれば、長いシーンを丸ごと使う必要がないこともあります。
そのため、必要な範囲だけ使うという考え方になります。
漫画は何コマまでなら大丈夫?
漫画についても、「1コマなら自由」「3コマまでなら引用」という一般的なルールはありません。
批評対象となる表現を説明するために必要なら、そのコマを引用できる可能性があります。
ただし、
読者が漫画そのものを楽しめるほど大量に掲載する
ストーリーが分かるほど連続して載せる
解説とは関係のないページまで使う
といった利用は、必要な範囲を超える可能性があります。
映画や漫画を「雰囲気づくり」に使うのは引用?
ここが映画制作では特に重要です。
たとえば、
登場人物のテレビに有名映画を流す
部屋の壁に漫画のページを貼る
映画の映像を作品の雰囲気づくりに使う
有名な文章をナレーションとして入れる
といった使い方。
これは通常、その作品について批評・解説するために使っているわけではありません。
そのため、「引用ということにして使う」のは難しくなります。
演出素材として使いたいなら、利用許諾を確認するか、別素材へ変更する方法を考えます。
映画のワンシーンを引用できる場合
映画の映像も引用できる可能性があります。
たとえば、
映画評論
映画史の解説
演技・撮影技法の分析
映像表現の比較
などです。
この場合、そのシーンを見せること自体に説明上の必要性があるかがポイントになります。
単に有名なシーンだから流したい、という場合とは違います。
セリフだけ引用する場合は?
映画や漫画、本のセリフや文章について批評するために、その部分を示すこともあります。
その場合も、
必要な部分だけ使う
自分の説明と区別する
出典を示す
ことが重要です。
一方で、有名なセリフを劇中人物に言わせて演出として使う場合は、通常の引用とは性質が違います。
セリフについては、別記事「有名な映画や漫画のセリフを使っていい?」で詳しく解説しています。
出典はどう書けばいい?
引用では、原則として出所を明示します。
たとえば映画なら、
作品名
制作会社・配給会社など
公開年
など。
本なら、
書名
著者名
出版社
など。
Web記事なら、
サイト名
記事タイトル
URL
などを示します。
ただし、媒体や利用方法によって適切な表示方法は変わります。
重要なのは、どこから引用したものなのか第三者が分かる状態にすることです。
引用部分を加工してもいい?
引用では、原則として元作品を必要な範囲でそのまま示すことが基本になります。
そのため、
セリフを書き換える
映像の意味が変わるほど編集する
漫画の吹き出しを書き換える
画像を大きく改変する
といった使い方は、単なる引用とは別の問題が出ることがあります。
引用する必要があるなら、元の表現を正確に示す方が分かりやすいでしょう。
出典を書けない映画作品では?
劇映画の中で引用を使う場合、論文や解説動画のように引用部分を明確に表示しにくいことがあります。
そのため、
なぜ引用が必要なのか
自分の作品との主従関係が明確か
引用部分が区別できるか
出所をどこで示すか
を慎重に考える必要があります。
映画のエンドクレジットで出典を表示する方法もありますが、クレジットに書けば引用になるわけではありません。
使い方全体が引用として成立していることが前提です。
結局、引用として使いたいときはどうすればいい?
1.その作品を使う必要があるか確認する
まず、その映画・漫画・文章を実際に見せなければ説明できないのかを考えます。
2.自分の表現が中心になっているか確認する
批評・解説・検証など、自分の表現が主になっている必要があります。
3.必要な部分だけ使う
「使えるだけ使う」のではなく、説明に必要な範囲までにします。
4.引用部分を区別する
視聴者や読者が、自分の表現と引用部分を混同しないようにします。
5.出典を示す
作品名、著者名、媒体などを適切に表示します。
6.演出素材として使うだけなら引用に頼らない
雰囲気づくり、小道具、BGM代わりなどで使いたい場合は、許諾や差し替えを検討します。
まとめ
引用は、他人の著作物を少し使えば成立する制度ではありません。
公表された著作物であること
その著作物を使う必要性があること
自分の表現が主、引用部分が従になっていること
引用部分が明確に区別されていること
必要な範囲にとどめること
出所を明示すること
何秒・何コマまでという一律の基準はない
雰囲気づくりや演出として使うだけでは引用になりにくい
という整理になります。
「許可を取らずに使う方法」として引用を探すのではなく、「この作品を示さなければ自分の説明が成立しないか」で考える。
これが引用を判断するときの一番分かりやすい考え方です。
参考
※映画・漫画・文章・Web記事などを引用して映画や動画で利用する際の著作権について確認したい場合は、こちらからお問い合わせください。
