飛び降り・転落シーンを撮りたい
更新日:5 日前
結論からいうと、飛び降り・転落シーンは、人を本当に高所から落とさなくても作れます。
ただし、
危ないから落下は見せなくていい
という話ではありません。
自殺
事故
突き落とし
転落
など、落ちること自体が重要な場面もあります。
その場合は、人間を危険な高さから落とすのではなく、「高所にいる人物」「落下する身体」「地上側」をそれぞれどう作るかを考えます。
実際には、
安全な位置を高所に見せる
ダミーを落下させる
途中階から落下を撮る
カメラ前を上から下へ通過させる
必要な部分だけVFXで補う
といった方法があります。
そして、飛び降り・転落シーンでは、撮り方だけでなく、そもそも施設側からどこまで許可が出るのかも大きな問題になります。
この記事で分かること
高所の縁にいる人物を安全に撮る方法
本物の高さを使わず、高所らしい画を作る考え方
ダミーを人間らしく落下させる工夫
ダミー落下を迫力ある画にする撮り方
ダミーでも撮影側に危険がある理由
屋上などで落下撮影の許可が難しい理由
VFXをどこで使うと効果的なのか
人を本当の縁に立たせる必要はない
高所シーンでは、
屋上の縁に人物が立っている
という画が欲しくなることがあります。
しかし、だからといって、本当に危険な縁へ立たせる必要はありません。
例えば、
下にベランダがある位置を使う
塔屋(屋上にある階段から出てくるところ)の上に立ってもらう
命綱を付ける
縁と同じ高さに見える台や箱へ乗ってもらう
下から煽って撮る
といった方法も検討してみましょう。
ただし、これらの対策をとったからといって安全という意味ではありません。
事故を絶対に起こさないように設計を組むことが重要です。
大切なのは、本当に高い場所へ立たせることではなく、「高所の縁に立っているように見える画」を作ることです。
特に下から煽ると、足元の実際の高さが見えにくくなります。
高所らしさは、単純にカメラを低くすれば作れるわけではありませんが、立ち位置そのものを安全な場所へ変えたうえで、画角を合わせる方法は使えます。
高さは、カメラだけではごまかしにくい
高いところは、意外と画面の情報から分かります。
たとえば、
建物の窓の数
周囲の建物との関係
木の大きさ
地上の車や人
ベランダや階層
などです。
そのため、低い建物をローアングルで撮っただけで、何十階もの高さに見せるのは難しいです。
本当に高さを作りたいなら、
小さな木や建物を手前・奥へ配置する
遠景のスケールを調整する
高所から撮った背景を組み合わせる
必要な部分をVFXで処理する
といった、もう一段階踏み込んだ工夫が必要になります。
つまり、「人物を危険な場所へ立たせない」ことと、「高く見せる」ことは別の問題として考えた方がいいです。
落下そのものは、ダミーがかなり使える
人が落下する画を見せたい場合、ダミーはかなり使えます。
ただし、マネキンをそのまま落とすと、かなり人形っぽく見えます。
軽い
関節が固い
身体の崩れ方がおかしい
という問題が出るからです。
私が関わった撮影では、マネキンの関節部分を切って関節の動きに合わせて紐でつなぎ直し、腹部にペットボトルの水や砂袋などを入れて、人間に近い重さへ調整して落下シーンを撮りました。
そうすると、落下したときの、
身体の折れ方
手足の動き
回転
重さの出方
がかなり変わります。
ダミーは、
人形を落とせば終わり
ではありません。
人間らしい重さと関節の動きをどう作るかがかなり重要です。
ダミーの落下は、撮り方でもかなり変わる
落下をずっと遠くから撮るだけだと、せっかくダミーを作っても迫力が出にくいことがあります。
そこで、
途中階から横方向から落下を撮る
カメラ前を上から下へ通過させる
高所側のカットを入れる
地上側から見上げるカットを入れる
落下途中の短いカットを挟む
といった撮り方を組み合わせます。
特に、カメラのすぐ前を上から下へ一気に通過するカットは、速度感を出しやすいです。
途中階から撮れば、「かなりの高さを落ちている」という印象も作りやすくなります。
一つのロングショットだけで全部見せるより、落下の途中に別の距離・角度の画を入れる方が、迫力を作れることがあります。
ダミーでも安全とは限らない
ここはかなり重要です。
人間ではなくダミーを落とすからといって、撮影現場が安全になるわけではありません。
マネキンが着地したときに、
樹脂が割れる
部品が外れる
金具が飛ぶ
中に入れた重りが飛び出す
破片が跳ねる
可能性があります。
そのため、落下地点だけでなく、カメラマンや機材側も守る必要があります。
私が関わった現場では、カメラマン側をマットや毛布、段ボールなどで防護して撮影しました。
迫力のある位置から撮りたいと思うほど、カメラを落下地点へ近づけたくなります。
でも、ダミーがどこへ跳ねるか、何が飛ぶかは完全には読めません。
ダミー撮影でも、落下地点の管理と撮影側の防護は必要です。
VFXは、ダミーとは別の役割がある
ダミーとVFXは、
どちらを使うか
という単純な二択ではありません。
役割が違います。
ダミーは、実際の重力や落下運動をそのまま撮れるのが強みです。
一方でVFXは、
実際には存在しない高さを作る
建物の階数を増やす
命綱や安全設備を消す
背景を差し替える
実写では撮れない部分だけ補う
といったことに向いています。
つまり、ダミーで落下そのものを撮り、VFXで高さや背景を補うという使い方もできます。
どちらか一つを選ぶというより、欲しい画に合わせて組み合わせます。
屋上から「何かを落とす」許可はかなり難しい
飛び降り・転落シーンでは、撮影方法より先にロケ地側で困ることがあります。
私が実際に屋上撮影へ関わったときも、落下させる撮影についての許可はかなり難しいと感じました。
理由は分かりやすく、
下に人が入る可能性がある
物が予定外の方向へ飛ぶ可能性がある
建物や設備を壊す可能性がある
事故が起きた場合の責任問題がある
からです。
たとえ人間ではなくダミーでも、
屋上から物を落とします
となれば、施設側にとってはかなり大きなリスクです。
そのため、
何を落とすのか
重さはどのくらいか
どこから落とすのか
どこへ落ちるのか
落下範囲をどう管理するのか
周囲をどう立入禁止にするのか
撮影側をどう防護するのか
まで具体的に説明する必要があります。
「映画の撮影です」だけでは到底足りません。
許可が難しいなら、「人を立たせる場所」と「落とす場所」を分ける
ここで大切なのは、
許可が出ないなら、このシーンは撮れない
とすぐ考えないことです。
たとえば、
高所の人物は安全な位置で撮る
落下は別の場所でダミーを使う
高所らしい背景は別撮りやVFXで作る
というように、撮影場所自体を分けることもできます。
実際の縁に立つ必要がないなら、
下にベランダがある位置
塔屋
安全な高さのセット
などで人物側を撮れます。
落下は、別の許可が取れる場所で撮る。
こうすれば、一つの場所に全部の危険と許可を集中させずに済みます。
欲しい画を残しながら、ロケ地側が受け入れられる形に分解するという考え方です。
まとめ
飛び降り・転落シーンでは、人を本当に高所から落とす必要はありません。
でも、だからといって落下を見せない必要もありません。
高所の人物は安全な位置で撮る
本当の縁ではなく、下に逃げがある位置を使う
台やセットを使って高所らしく見せる
高さそのものは背景や美術、VFXで作る
落下はダミーで実写する
ダミーは重さと関節を調整する
途中階やカメラ前を通過する画で迫力を出す
ダミーの破片や重りから撮影側も守る
落下許可が難しければ、人物と落下を別の場所で撮る
といった方法があります。
飛び降り・転落シーンは、
危険だから画を諦めるのでもなく、欲しいから人に無理をさせるのでもありません。
欲しい画をまず決めて、
人間がやる部分
ダミーで作る部分
VFXで補う部分
ロケ地を分ける部分
を整理する。
その方が、作品として欲しい画を残しながら、現実的な撮影計画にできます。
※個別の高所・転落シーンについて、撮影場所や施設との調整をご相談される場合は、お問い合わせページをご利用ください。
