契約書は何年間保管する?
更新日:9月16日
結論からいうと、映画・動画制作の契約書は、「〇年経ったら全部捨てていい」と一律には考えない方がいいです。
税務上の保存期間はありますが、映画制作ではそれとは別に、
出演映像を今後も使う
音楽やイラストを使い続ける
配信を続ける
海外販売する
再編集する
権利関係をあとから確認する
ことがあります。
そのため、作品や権利に関する重要な契約書は、その作品を利用している間は残しておくくらいに考えた方が実務的です。
特に、
出演契約
著作権譲渡契約
利用許諾契約
共同制作契約
音楽利用に関する契約
ロケ地で公開範囲まで決めた契約
などは、税務上の保存期間が終わったからといって、すぐ捨てるのはおすすめしません。
この記事で分かること
契約書は何年間保存すればいいのか
税務上の保存期間
映画制作では長く残した方がいい契約
作品完成後も契約書が必要になる場面
紙・電子契約の保存方法
契約書には「全部〇年」という一つのルールがあるわけではない
契約書の保存期間は、何のために保存するのかによって考え方が変わります。
たとえば、
税務のために保存する期間
と、
作品の権利関係を確認するために保存する期間
は別です。
映画制作では、契約書が単なる取引記録ではなく、
この出演映像をどこまで使えるのか
この音楽は配信にも使えるのか
著作権は誰にあるのか
を確認する資料になることがあります。
そのため、最低限の法定保存期間だけで判断しない方がいいです。
税務上は何年保存する?
事業者が取引に関して作成・受領した契約書には、税務上の保存義務が関係することがあります。
法人の場合、国税庁は、契約書などの取引関係書類を原則として7年間保存する必要があるとしています。
一方、個人事業主の青色申告では、契約書・見積書・納品書などの「その他の書類」は原則として5年間の保存対象とされています。
ただし、書類の種類や事業者の状況によって保存期間が異なる場合があります。
そのため、税務上の保存期間については、
法人なのか
個人事業主なのか
どの種類の書類なのか
まで確認します。
映画制作では「税務上の期間」だけで捨てない方がいい
たとえば、10年前に出演してもらった俳優の映像を、現在も配信しているとします。
その出演契約書に、
劇場公開
配信
SNS
宣伝
海外利用
などについて書いてある。
この契約書を、
税務上の保存期間が終わったから
という理由だけで捨ててしまうと、あとから利用条件を確認できなくなります。
映画・動画は、制作から何年も経って再利用されることがあります。
そのため、その契約が現在の利用根拠になっているなら、保存期間が終わっても残す価値があります。
特に長く残したい契約書
映画制作では、次のような契約書は長期保存を考えた方がいいです。
出演契約
出演映像や写真を、
本編
予告編
SNS
宣伝物
配信
海外
などで使う根拠になります。
作品を使い続けているなら、契約内容を確認できる状態にしておいた方がいいでしょう。
著作権譲渡・利用許諾
脚本、音楽、写真、イラスト、デザインなどについて、
誰が著作権を持っているのか
制作側がどこまで使えるのか
を確認する重要な資料です。
これは作品の権利関係そのものに関わります。
共同制作・共同出資
誰が作品の権利を持つのか
誰が配信を決めるのか
利益をどう分けるのか
などを確認するために必要になります。
ロケ地契約
単に撮影日と料金だけを決めた契約なら、長期間必要になる場面は比較的少ないかもしれません。
ただし、
店名を作品に出してよい
施設内部を公開してよい
宣伝素材にも使える
など、完成後の利用まで決めている契約なら、作品を使っている間は残しておいた方が確認しやすくなります。
「撮影が終わったから捨てる」は早い
映画制作では、撮影終了と契約関係の終了が同じとは限りません。
撮影後も、
編集
映画祭
劇場公開
配信
海外展開
再編集
予告編制作
などが続きます。
その途中で、
この素材、配信まで使ってよかったっけ?
と確認することがあります。
だから、撮影が終わった時点で出演契約や権利関係の契約書を処分するのは早すぎます。
作品が完成した後も必要になる
完成した映画でも、数年後に動きが出ることがあります。
たとえば、
新しい配信サービスから声がかかった
海外販売することになった
再上映することになった
Blu-ray等を出すことになった
一部をSNSで公開したくなった
別作品で素材を再利用したくなった
という場合です。
そのとき、
この契約、どこまで許可を取っていたっけ?
と確認できるようにしておく必要があります。
映画の契約書は、作品の「権利の履歴」のような役割もあります。
何年残せば安心?
実務的には、契約書を大きく二つに分けると考えやすいです。
取引だけに関する契約
単発の機材レンタル
一度きりの簡単な作業
権利関係が残らない取引
こうしたものは、税務上の保存期間や、将来トラブルになる可能性を考えて保管します。
作品・権利に関する契約
出演契約
著作権譲渡
利用許諾
共同制作
音楽利用
長期の配信利用
こちらは、作品を利用している間は原則として保管しておくくらいの考え方が分かりやすいです。
場合によっては、作品の利用終了後もしばらく残しておいた方がいいでしょう。
紙の契約書はどう保存する?
紙で契約した場合は、
作品名ごと
契約相手ごと
契約の種類ごと
など、あとから探せる方法で整理します。
映画1本でも、
出演契約
スタッフ契約
ロケ地契約
音楽契約
外注契約
など、書類がかなり増えることがあります。
「契約書」という一つのファイルに全部突っ込むより、作品単位で整理した方が後から見つけやすいです。
電子契約も保存しておく
電子契約の場合も、
サービス上にあるから大丈夫
だけで終わらせない方が安心です。
サービスを解約したり、契約内容をあとから確認したくなったりすることがあります。
そのため、
契約書PDF
締結完了の記録
必要に応じて電子署名・締結情報
などを、自分の管理できる場所にも保存しておくと安心です。
特に作品の権利に関する契約は、数年後でも探せる状態にしておきます。
LINEやメールで合意した場合も消さない
契約書を作らず、
LINE
メール
チャット
などで合意した場合もあります。
その場合は、それが契約条件を確認する重要な記録になることがあります。
スマートフォンを変えた
アカウントを削除した
古いメールを消した
というだけで記録がなくならないように、
PDF化する
メールを書き出す
必要なやり取りを保存する
などしておくと安心です。
作品ごとに「契約関係一式」を残す
映画制作では、契約書を1枚ずつ単独で考えるより、
その作品について誰から何の権利を得たのか
が分かるように残すと便利です。
たとえば一作品について、
出演契約
脚本契約
音楽契約
ロケ地契約
外注契約
著作権譲渡・利用許諾
変更契約・覚書
を一緒に管理します。
数年後にその作品を再利用するときも、権利関係をまとめて確認できます。
まとめ
契約書の保存期間は、すべて一律ではありません。
税務上は、事業者の種類や書類によって一定期間の保存が必要です。
一方、映画制作ではそれとは別に、作品を使い続けるための権利確認資料として契約書を残す必要があります。
特に、
出演契約
著作権譲渡
利用許諾
共同制作
音楽利用
などは、作品を利用している間は残しておく方が実務的です。
「何年経ったか」だけで捨てるのではなく、「この契約書は今も作品を使う根拠になっているか」で考える。
映画・動画制作では、この考え方が大切です。
参考
※映画・動画制作の契約書の保存や権利関係について個別にご相談が必要な場合は、お問い合わせページをご利用ください。
