契約書をあとから作ってもいい?
更新日:9月16日
結論からいうと、すでに仕事や撮影を始めたあとでも、契約書を作ることはできます。
ただし、本来は始める前に条件を決めておいた方が安全です。
映画制作では、
先に撮影日が決まった
急いで出演をお願いした
仲のいい相手なので口約束で始めた
制作が進んでから権利関係が気になった
ということがあります。
こうした場合でも、あとから契約書を作って、それまでに合意していた内容や、今後の条件を整理することはできます。
大切なのは、後から作るなら、過去の事実を勝手に書き換えるのではなく、今の時点で双方が何に合意するのかを明確にすることです。
この記事で分かること
契約書をあとから作ってもよいのか
すでに撮影が始まっている場合どうするか
契約日を過去の日付にしてよいのか
あとから条件を追加・変更できるのか
完成後に権利関係を整理するときの注意
撮影が始まったあとでも契約書は作れる
すでに口頭やLINEなどで合意して仕事を始めている場合でも、その内容を契約書にまとめることはできます。
たとえば、
〇月〇日から出演してもらっている
出演料は5万円で合意している
映画祭への出品については話している
という状態なら、それまでの合意内容を確認しながら契約書に整理できます。
契約書を作るのが遅れたからといって、必ずしも手遅れというわけではありません。
ただし「あとで決めればいい」は危ない
あとから作れるとはいっても、最初から何も決めなくていいわけではありません。
制作が進むほど、
誰が何を約束したのか
報酬はいくらだったのか
利用範囲をどこまで認めていたのか
再撮影は追加料金なのか
著作権をどうするつもりだったのか
が曖昧になりやすくなります。
特に映画制作では、撮影が終わったあとに、
配信にも使いたい
海外展開したい
予告編やSNSにも出したい
という話が増えることがあります。
そのため、あとから契約できることと、あとから決めれば十分ということは別です。
契約日を過去の日付にしてもいい?
ここは注意が必要です。
実際には今日契約書を作ったのに、過去の日付で作成したように見せるのは避けた方がいいです。
たとえば、9月15日に契約書へ署名したのに、
契約日 8月1日
とだけ書くと、8月1日に契約書を作成・締結したように見えることがあります。
過去からの関係を契約書に反映したいなら、
本契約は〇年〇月〇日から開始した業務について適用する
など、契約書を作成した日と、契約内容を適用する期間を分けて書く方法があります。
大切なのは、実際の経緯と書類の内容を食い違わせないことです。
すでに決めた内容を確認する契約書にする
あとから契約書を作る場合は、
今から新しく全部決めます
というより、
これまでに話してきた内容を確認して、今後も含めて整理します
という形になることがあります。
たとえば、
出演料
撮影日
交通費
利用範囲
クレジット
再撮影
公開方法
について、これまで何を話していたか確認します。
そのうえで、
すでに合意していたこと
今回初めて決めること
を分けて整理すると分かりやすくなります。
あとから条件を増やしてもいい?
双方が合意すれば、あとから条件を追加・変更することはできます。
たとえば当初は、
映画祭で上映する
という予定だったものを、後から、
配信にも使う
ことにする場合です。
このとき制作側だけで、
契約書に配信利用も追加しておきました
とはできません。
相手にも内容を確認してもらい、合意を取ります。
あとから契約書を作ることは、制作側が条件を後付けすることではありません。
出演映像の利用範囲をあとから広げたい場合
映画制作では特に起こりやすい問題です。
撮影時には、
自主映画として映画祭へ出す
という話しかしていなかった。
でも完成後に、
劇場公開が決まった
配信が決まった
海外映画祭へ出すことになった
SNS広告に使いたくなった
ということがあります。
その場合、最初の合意内容でどこまで利用できるのかを確認します。
足りなければ、出演者などから追加の同意や契約を取ります。
完成してから、
せっかく撮ったんだから全部使えるでしょう
とは考えない方がいいです。
著作権もあとから整理できる?
著作権についても、双方が合意すればあとから整理することはできます。
たとえば、
最初は利用許諾だけだったが、あとから著作権を譲渡してもらう
利用できる媒体を追加する
海外利用を追加する
再編集や加工の条件を決める
といったことです。
ただし、報酬を払ったから自動的に著作権が移っているわけではありません。
すでに完成物を使っている場合は、
これまでの利用をどう扱うのか
今後どこまで使えるのか
著作権を移すのか
利用許諾のままにするのか
を整理します。
相手があとから契約書への署名を断ったら?
これは実際に困るところです。
すでに撮影や作業が終わっていて、
契約書に署名してください
と出したところ、相手が、
この条件では署名できません
と言うことがあります。
この場合、契約書がないから直ちに何の合意もなかったことになるわけではありません。
それまでの、
LINE
メール
見積書
発注書
支払記録
実際の業務内容
などから、何に合意していたかを確認することになります。
ただし、ここまで来るとかなり面倒です。
だからこそ、重要な条件ほど制作開始前に決めておく方がいいという話になります。
すでに揉めているなら、契約書を後付けしない
相手との認識がすでに食い違っている場合は注意します。
たとえば、
制作側は、
配信も含まれていた
と思っている。
出演者は、
映画祭だけだった
と思っている。
この状態で制作側が一方的に、
配信利用を含む
と書いた契約書を作っても、問題は解決しません。
まず、どこまで合意していたのかを確認し、改めて話し合う必要があります。
契約書は、争いが起きたあとに都合よく事実を作るためのものではありません。
「確認書」や「覚書」にする方法もある
すでに契約関係が始まっている場合は、必ずしも新しい契約書を一から作る必要はありません。
内容によっては、
確認書
覚書
変更契約書
などで整理する方法もあります。
たとえば、
これまでの出演契約について、配信利用を追加する
だけなら、その変更点を覚書で確認することもできます。
大切なのは書類名ではなく、何を確認・変更したのかが明確であることです。
映画が完成してからでも契約は必要?
完成後でも、権利関係を整理する意味はあります。
むしろ、
配信
劇場公開
DVD等
海外展開
二次利用
再編集
など、完成後に新しい利用が増えることがあります。
その時点で、
出演者との利用条件が曖昧だった
音楽の利用範囲を決めていなかった
イラストの著作権を確認していなかった
と気づくこともあります。
その場合は、公開を広げる前に契約や許可の範囲を確認しておいた方がいいです。
まとめ
契約書は、撮影や制作が始まったあとでも作ることができます。
ただし、
過去の経緯と違う内容を書かない
契約日を不自然にさかのぼらせない
すでに合意していたことと、新しく決めることを分ける
条件を追加するなら相手の同意を取る
すでに揉めている場合は、一方的に契約書を作らない
ことが大切です。
あとから作れるからといって、契約を後回しにするのが理想というわけではありません。
一番ラクなのは、制作が始まる前に重要な条件だけでも決めておくことです。
それでも間に合わなかったら、気づいた時点で整理する。
映画制作では、そのくらいの考え方が現実的です。
参考
※すでに進んでいる映画・動画制作の契約内容について個別にご相談が必要な場合は、お問い合わせページをご利用ください。
