墓地・霊園で撮影したい――撮影許可と墓石・個人名の注意点
更新日:9月6日
墓地や霊園で映画・ドラマ・MV・YouTubeなどの作品撮影をする場合は、少人数でも、まず霊園・墓地の管理者へ事前に相談するのが基本です。
墓参りの際に家族のお墓を撮影することと、出演者を立てて作品を撮影することは別に考えます。
また、撮影自体が認められても、個々の墓所へ立ち入る、実在する墓石の名前を大きく映す、墓参者を撮影するといったことまで自由にできるわけではありません。
墓地らしいシーンが必要なだけなら、実際に使用されている墓所を使うより、撮影を受け入れている霊園や、墓石を作り込めるロケ地・セットを探した方が撮りやすい場合もあります。
この記事でわかること
墓地・霊園で作品撮影はできるのか
誰に撮影許可を取るのか
公営霊園・民営霊園・寺院墓地の違い
個々の墓所へ入ってよいのか
墓石に刻まれた名前が映る場合の注意
墓参者がいる中で撮影するときの注意
墓石などの小道具・大道具を置きたい場合
実際の墓地で撮りにくい場合の代替方法
「入れる場所だから自由に撮れる」とは限らない
公営霊園などには、墓参者以外も普通に歩ける場所があります。
そのため、「一般の人も入っているから、撮影しても大丈夫なのでは?」と考えてしまうかもしれません。
しかし、散歩しながら風景を撮ることと、出演者・スタッフが一定の場所を使って作品撮影をすることは同じではありません。
東京都の都立霊園では、条例上、業として写真撮影などの営業行為を行うことは原則禁止され、あらかじめ知事の許可を受けた場合は例外とされています。
つまり、少なくとも「公営霊園だから自由に商業撮影できる」という扱いではありません。
まず誰に相談する?
最初の相談先は、その墓地・霊園の管理者です。
例えば、
公営霊園→ 自治体や指定管理者
民営霊園→ 霊園管理事務所・運営法人
寺院墓地→ お寺・墓地管理者
というように変わります。
都立霊園についても、各霊園に管理事務所があり、東京都公園協会が問い合わせ窓口を案内しています。
「墓地で撮影したい」とだけ聞くより、
作品撮影であること
撮影したい場所
日時
人数
機材
どんなシーンか
まで伝えた方が判断してもらいやすくなります。
小規模撮影でも相談した方がいい
例えば、「出演者2人・カメラマン1人・スタッフ2人・手持ちカメラ1台」という小さな撮影でも、
出演者が墓石の前で芝居をする
何度も同じ場所を往復する
墓地を作品のロケーションとして公開する
となれば、普通の墓参時の撮影とは違います。
そのため、「人数が少ないから許可不要」とは考えず、作品撮影を受け入れているかを先に確認した方がよいでしょう。
逆に、相談した結果、小規模で一般利用に影響しない範囲なら簡単な条件で撮影できる場所もあり得ます。
個々の墓所には勝手に入らない
墓地全体の通路を撮影できる場合でも、個人の墓所へ自由に立ち入ってよいわけではありません。
例えば谷中霊園は、墓参以外で訪れる人に対して、個人墓所への立入りをしないよう案内しています。
また、墓所や園内の写真を無断でSNS等へ掲載しないよう求めています。
そのため、
出演者を墓石のすぐ横へ立たせる
墓石に手を触れる
墓前へ撮影機材を置く
墓所内で芝居をする
といった撮影をしたい場合は、霊園管理者の了承だけでなく、その墓所を使用している家族等への確認が必要になる可能性も考えておいた方がよいでしょう。
一番簡単なのは、他人の墓所を撮影場所として使わないことです。
墓石に刻まれた名前はどうする?
実際の墓地で撮影すると、墓石に、
名字
故人の名前
戒名・法名
建立者名
建立年月
などが刻まれています。
背景に小さく写ることと、特定の墓石をアップで撮り、実在する人物の墓として作品中で使うことでは意味が違います。
特に台本上、「〇〇家之墓」をはっきり見せたい場合に、たまたまそこにある実在の家の墓石を使うのは避けた方がよいでしょう。
必要な文字があるなら、
架空の墓石を用意する
名前部分だけ撮影用に作る
画角で実在する名前を入れない
などの方法を検討した方が作品としても扱いやすくなります。
有名人のお墓だから撮影してよい、でもない
著名人のお墓が観光的に知られている霊園もあります。
しかし、場所が公開されていることと映画や動画のロケに自由に利用できることは別です。
また、その墓を物語上の別人の墓として使ったり、演出の内容によって故人や遺族に関係があるように見えたりする可能性もあります。
作品撮影では、「有名だから撮れる」と考えず、管理者のルールを確認します。
墓参者を画角に入れない
営業中の店舗や公園以上に、墓地では一般利用者への配慮が重要です。
墓参者は、
納骨
法要
命日の墓参
故人へのお参り
など、非常に私的な目的で来ていることがあります。
そのため、背景として人が欲しいからと、実際の墓参者をそのまま撮影するのは避けた方がよいでしょう。
小規模撮影なら、
人が来たら撮影を止める
人の少ない時間を相談する
望遠で墓参者を抜かない
通路を塞がない
といった対応が現実的です。
お墓参りの邪魔をしない
撮影許可を得ても、墓地を貸し切ったとは限りません。
撮影中に墓参者が来たら、「今撮影中なので5分待ってください」ではなく、基本的には撮影側が止まると考えた方がよいでしょう。
特に、
お盆
お彼岸
年末年始
などは墓参者が増えます。
作品撮影を相談する段階で、撮影を避けた方がよい時期や時間帯を聞いておくと安心です。
お墓の前で大声を出す演技はできる?
墓地シーンでは、
泣く
叫ぶ
喧嘩する
走る
倒れ込む
といった芝居が台本に入ることがあります。
ここも、普通の会話シーンとは分けて伝えた方がよいでしょう。
実際、谷中霊園でも、大声や騒ぐ行為、通行を妨げる行為などを控えるよう案内しています。
例えば台本に、「墓前で泣き崩れ、大声で名前を叫ぶ」と書かれていたら、「墓地で5人で撮影します」だけでは撮影内容を正確に伝えたことになりません。
演技内容まで相談します。
ホラーだから撮れない、とは限らないけれど
墓地はホラー作品でも頻繁に使われます。
ただし、
墓石を倒す
墓を荒らす
遺骨を掘り出す
墓所内で暴れる
といった演出を、実際に使用されている墓地で行うことはできない、と考えた方がよいでしょう。
この場合は、ホラーかどうかよりも、そもそもその場所をどう扱う演出なのかが問題です。
単に、「夜の墓地を出演者が歩く」という場面と、「墓を破壊する」という場面では全く違います。
墓石を撮影用に作りたい場合
台本上、
墓石の名前をアップで映したい
出演者が墓石に触れる
墓前へ手紙や写真を置く
土を掘る演出をしたい
などの場合、実在する墓石を利用するより撮影用の墓石を作った方が自由度が高くなります。
ただし、本物の墓地へ撮影用墓石を持ち込んで勝手に設置できるわけではありません。
大型の小道具・大道具を置きたい場合は、
設置できる場所
サイズ
重量
搬入方法
設置時間
原状回復
まで管理者へ伝えます。
ただ、その撮影規模になるなら、そもそも現役の墓地ではなく、セットを組める場所を選ぶ方が現実的でしょう。
「墓地に見えればいい」なら別の撮り方もある
台本には「墓地」としか書かれていないことがあります。
その場合、本当に実際の墓地で撮る必要があるのかを一度考えてみてもよいでしょう。
必要なのが、
墓石
卒塔婆
花立て
砂利道
木々
墓地らしい背景
なのであれば、
撮影用の墓地セットがあるスタジオ
撮影利用を受け入れている寺院・霊園・公園
私有地に撮影用墓石を設置する
一部だけセットを作り、画角を限定する
といった方法もあります。
特に、
墓石に触れる
墓を掘る
倒れる
血のりを使う
煙を使う
夜間に大きな照明を組む
といった演出では、「本物の墓地を借りる」ことにこだわらない方が撮影しやすい場合があります。
夜の墓地シーンでも、実際に夜撮るとは限らない
台本上は夜の墓地でも、夜に撮影ができる場所は多くありません。
さらに夜に撮影を行う場合、「物音が目立つ・照明が必要・安全管理が必要になる」といった問題が出てきます。
そのため、最近の映像制作では、日中や夕方に撮影して、露出・色調・VFXなどの編集によって夜に見せる方法も使われています。
墓地は本来の利用目的がある場所なので、夜間開放されていない霊園で無理に夜間撮影を行うより、日中に撮影できる条件を整え、仕上げで夜に見せる方が現実的な場合があります。
車両を入れたい場合も確認する
墓地は敷地が広いため、「機材車を近くまで入れたい」ということがあります。
しかし、一般来園者向けに車が入れるからといって、撮影車両を好きな場所へ乗り入れられるとは限りません。
東京都霊園条例でも、指定された場所以外への車両乗入れ・留置きは原則禁止され、事前許可を受けた場合に例外とされています。
小規模撮影なら、
駐車可能な場所に停める
必要な機材だけ手で運ぶ
方が撮影計画を簡単にできます。
撮影料金や申請期限は霊園ごとに確認する
墓地・霊園の作品撮影について、全国共通の撮影料金や申請期限はありません。
また、公営霊園でも自治体によって制度が違います。
そのため、「墓地撮影は〇日前まで」「撮影料金は〇〇円」という全国共通の答えはありません。
候補地が決まったら、まず管理者に、「映像作品のロケ撮影を受け入れていますか?」と確認します。
受入れ可能なら、その段階で、
料金
申請期限
必要書類
撮影時間
禁止事項
を聞くのが効率的です。
墓地・霊園で撮影するときの確認順序
1 作品撮影を受け入れているか確認する
まずここです。
2 撮影する範囲を伝える
園路だけなのか、墓石の近くまで使いたいのかを伝えます。
3 どんなシーンか伝える
会話だけなのか、大声・走る・倒れ込むなどの演技があるのかも伝えます。
4 墓石・人名が映るか確認する
実在する墓石を重要な被写体として使わない方が扱いやすくなります。
5 機材・小道具を伝える
三脚、照明、撮影用墓石などがあれば事前に相談します。
6 一般の墓参者を優先する
許可を取った後も、実際のお墓参りを妨げない撮影方法を考えます。
まとめ
墓地や霊園で作品撮影をするときは、少人数でも管理者へ事前に相談するのが基本です。
特に、
個々の墓所へ入る
実在する墓石を大きく映す
墓参者を撮影する
大声や激しい演技をする
撮影用の墓石や大型機材を置く
といった場合は、普通の風景撮影とは大きく違います。
そして台本上「墓地」であっても、必ず本物の墓地で撮らなければならないわけではありません。
静かに墓前で会話する場面なら実際の霊園を相談する。
墓石を自由に使う演出ならセットや撮影用ロケ地を探す。
というように、必要な画に合わせて場所を選ぶ方が現実的です。
参考
※墓地・霊園で予定している撮影について、管理者への確認範囲や実在する墓石の扱いなどで迷った場合は、お問い合わせからご相談ください。
