AI生成物の「著作権者」は誰になる?
更新日:9月21日
結論からいうと、AIそのものが著作権者になるわけではありません。
AI生成物に著作権が認められるかを見るときは、人に創作意図があり、完成した表現に人の創作的な寄与が認められるかを考えます。
つまり、
プロンプトを書いた人
生成結果を選んだ人
加工した人
構成を決めた人
のうち、誰がどのように完成した表現へ関わったのかを見ることになります。
単に「AIを操作した人=著作権者」と決まるわけではありません。
この記事で分かること
AIそのものが著作権者になるのか
プロンプトを書いた人が著作権者になるのか
生成した人と加工した人が違う場合はどうなるのか
複数人・会社・外注でAIを使った場合はどう考えるのか
著作権が発生しないAI生成物もあるのか
映画制作では何を残し、何を契約で決めればよいのか
AIそのものは著作権者にならない
日本の著作権法では、著作物は、人の思想や感情を創作的に表現したものとして考えられています。
そのため、生成AIそのものが、
この画像を作った著作者です。
この曲の著作権者です。
となるわけではありません。
AIを使って作られたものについて問題になるのは、その制作過程に人の創作的な関与があり、完成した表現に人の創作的寄与が認められるかです。
たとえば、AIに簡単な指示を出して自動生成された画像と、人が構図や人物配置、色、光、背景などを具体的に設計しながら何度も修正して完成させた画像では、人の関わり方が違います。
ただし、単に作業量が多ければ著作権が発生する、という話でもありません。
人が完成した表現そのものに、どのように創作的に関わったのかを見ることになります。
プロンプトを書いた人が自動的に著作権者になる?
そうとは限りません。
たとえば、
夜の東京の画像を作って。
と入力しただけなら、人物の配置、構図、色、光、背景など、具体的な表現の多くをAI側が生成することになります。
その場合、プロンプトを書いたというだけで、その人が完成画像の著作者になるとは限りません。
一方で、
人物をどこに配置するか
どの角度から見せるか
光をどこから当てるか
どんな色を使うか
背景に何を置くか
表情や衣装をどうするか
などを具体的に設計し、生成結果を見ながら創作的な選択や修正を重ねた場合には、完成した表現に人の創作的寄与が認められるかを考える材料になります。
ここで重要なのは、プロンプトの長さや生成回数ではありません。
長いプロンプトを書いたから著作権が発生する、何十回生成したから著作者になる、というものではありません。
プロンプトや修正が、最終的な表現をどのように形づくったのかを見る必要があります。
また、複数の生成結果から好みのものを選ぶだけでは、その生成物への創作的寄与とは評価されません。
選んだ素材を創作的に組み合わせたり、具体的な表現を加えたりした場合は、その制作過程も含めて判断します。
複数人・会社・外注で作った場合は?
映画や動画制作では、一人だけでAI生成物を作るとは限りません。
たとえば、
監督が方向性を決める
デザイナーがAIで画像を生成する
別のデザイナーがPhotoshopで加工する
プロデューサーが最終版を選ぶ
ということもあります。
この場合、誰がAIのボタンを押したかだけで著作権者を決めることはできません。
それぞれが、
どの表現を考えたのか
どの部分を具体的に作ったのか
どの部分を加工したのか
完成物へどのような創作的表現を加えたのか
を見ます。
たとえば、AIで自動生成された部分そのものには著作権が認められなくても、その後に人が創作的な加工やデザインを加えた場合、その人が加えた部分について著作権が生じる可能性があります。
社員が会社の業務として制作した場合は、人による著作物と認められる部分について、通常の著作物と同じように職務著作の要件を満たすかを検討することがあります。
ただし、会社のパソコンでAIを使った=自動的に会社が著作権者というわけではありません。
業務として作られたのか、誰の名義で公表するのか、会社の規程や制作状況はどうなっているのかなど、職務著作の要件を個別に確認する必要があります。
外注の場合も同じです。
外注したデザイナーや作曲家がAIを使って成果物を作ったとしても、依頼者が制作費を払っただけで、自動的にその著作権を持つわけではありません。
そのため外注では、
著作権を制作側へ譲渡するのか
著作権は制作者側に残し、必要な利用許諾を受けるのか
を契約で決めておきます。
著作権がないAI生成物ならどうなる?
人の創作的寄与が認められず、AIがほぼ自動的に生成したものについては、著作物として保護されない可能性があります。
その場合は、「著作権者は誰なのか」よりも、「そもそも著作権が発生しているのか」が先の問題になります。
ただし、著作権が発生しないからといって、その生成物を何にでも自由に使えるとは限りません。
たとえば、
AIサービスの利用規約
既存作品の著作権
実在人物の肖像権
パブリシティ権
商標
元画像や入力素材の権利
などは別に確認する必要があります。
また、AI生成物全体に著作権が認められなくても、人が後から加えた文章、加工、構成、デザインなどの部分には、別に著作権が生じることがあります。
そのため、「AI生成物だから著作権なし」と一括りにしないことが重要です。
映画制作では、制作過程と利用条件を残しておく
映画や動画制作でAI生成物を重要な素材として使うなら、制作過程をある程度残しておくと後から整理しやすくなります。
たとえば、
誰が生成したか
誰がプロンプトを作ったか
誰が構図や内容を決めたか
誰が加工したか
どのような修正を行ったか
誰が最終版を決めたか
どのAIサービスを使ったか
どのプランを利用していたか
などです。
特に、
メインビジュアル
キャラクターデザイン
タイトルロゴ
主題歌
劇伴
脚本
商品化する素材
など、後から権利処理が必要になりやすいものでは、制作経緯を残しておく意味があります。
外注の場合は、それに加えて完成物をどこまで使えるかを契約で決めます。
たとえば、
制作者が生成AIその他のツールを使用して制作した場合を含め、本制作物について、依頼者は映画本編、予告編、映画祭、上映、配信、SNS、Webサイト、広告その他本作品の制作・宣伝に必要な範囲で利用できるものとする。
といった形です。
著作権そのものを制作側へ移したいなら、利用許諾だけでなく、著作権譲渡について別に明確にします。
重要なのは、「AIを使ったから誰の権利か分からない」で終わらせず、完成物を制作側が実際にどう使うのかを契約で整理することです。
まとめ
AI生成物の「著作権者」が誰になるかは、単にAIを操作した人だけでは決まりません。
確認したいのは、
AIそのものは著作権者にならない
人に創作意図があるか
完成した表現に人の創作的寄与が認められるか
プロンプトを書いただけで当然に著作権者になるわけではない
生成後の創作的な加工には別に著作権が生じる可能性がある
複数人で作った場合は、それぞれの創作的関与を見る
会社で作った場合は職務著作の要件を確認する
外注では著作権譲渡か利用許諾かを契約で整理する
そもそも著作権が発生しないAI生成物もあり得る
という点です。
「誰がAIを使ったか」ではなく、「誰が完成した表現をどのように創作したのか」を見る。
そして映画制作では、権利関係が曖昧にならないよう、制作過程を残し、外注なら利用条件まで契約で決めておく。
この二つを分けて考えると整理しやすくなります。
参考
※AI生成物の著作権の帰属や、外注・共同制作時の権利関係について個別にご相談が必要な場合は、お問い合わせページをご利用ください。
