契約書に「著作権譲渡」と書けば十分?
結論からいうと、「著作権を譲渡する」とだけ書くより、どの制作物の、どの権利を、いつ、誰に移すのかまで具体的にした方が安全です。
特に映画・動画制作では、
脚本
音楽
イラスト
デザイン
写真
など、さまざまな制作物を扱います。
そのため、単に、
著作権を譲渡する。
とだけ書くと、何をどこまで譲渡したのか分かりにくくなることがあります。
この記事で分かること
「著作権譲渡」だけでは分かりにくい理由
契約書で何を特定するのか
第27条・第28条の権利はどうするのか
著作者人格権はどう整理するのか
譲渡時期や対価はどう決めるのか
まず「何の著作権か」を書く
たとえば、
制作者は著作権を制作会社へ譲渡する。
だけでは、対象が曖昧です。
そのため、
本契約に基づき制作した脚本の著作権
本件映画のために制作したタイトルロゴの著作権
など、対象となる制作物を特定します。
複数の制作物があるなら分ける
たとえばデザイナーに、
ポスター
タイトルロゴ
SNS画像
をまとめて頼んだ場合です。
全部の著作権を譲渡するのか、タイトルロゴだけ譲渡し、ポスターは利用許諾にするのか、という分け方もできます。
制作物ごとに扱いが違うなら、その違いが分かるようにします。
「全部の著作権」と書けば十分?
ここで注意したいのが、著作権法第27条・第28条です。
著作権法では、著作権を譲渡する契約で、
第27条・第28条の権利が譲渡対象として特に書かれていない場合、それらの権利は譲渡した側に留保されたものと推定される
という規定があります。
そのため、これらまで譲渡したいなら、
著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む。
と明記する方法があります。
第27条は何の権利?
第27条は、
翻訳
編曲
変形
脚色
映画化
など、元の作品をもとに別の作品を作ることに関する権利です。
たとえば脚本なら、その脚本をもとに映画を作ることにも関わります。
映画制作では重要な権利です。
第28条は何の権利?
第28条は、二次的著作物について、元の著作者が持つ権利に関する規定です。
たとえば、ある作品を原作として別の作品を作った場合に関係します。
第27条とセットで契約書に書かれることが多いです。
なぜわざわざ書く必要がある?
普通に考えると、
著作権を全部譲渡する
と書けば全部入りそうに見えます。
ですが、著作権法には第27条・第28条について特別な推定規定があります。
そのため、二次利用まで制作側にまとめたいなら、ここを明記しておく方が分かりやすいです。
著作者人格権も一緒に譲渡できる?
できません。
著作者人格権は、著作者本人に専属する権利です。
そのため、
著作者人格権を譲渡する。
と書いても、著作権と同じように移るわけではありません。
映画制作で必要なら、別に、著作者人格権を行使しないという形で整理します。
加工・改変もできるようにする
著作権譲渡を受ける場合でも、映画制作では、
改稿
編集
トリミング
尺変更
翻訳
をすることがあります。
そのため、本作品の制作・公開・宣伝に必要な編集や加工を行えることも合わせて整理します。
譲渡時期も決める
著作権がいつ移るのかも決めます。
たとえば、
契約締結時
制作物完成時
納品時
報酬全額支払時
などです。
よくあるのは、
報酬全額の支払いを条件として著作権を譲渡する。
という考え方です。
これなら、制作側が支払いをしないまま権利だけ取得する形を避けられます。
制作側なら納品時に欲しい場合もある
一方、制作会社としては、
映画祭提出
配信契約
配給契約
の前に権利を確定させたいことがあります。
その場合は、納品時に譲渡するなど、案件に合わせて決めます。
譲渡対価も分かるようにする
制作料と著作権譲渡の対価についても整理します。
たとえば、
本契約の報酬には、本条に定める著作権譲渡の対価を含む。
とする方法があります。
そうしておけば、
「制作料はもらったけれど、著作権譲渡分は別料金」
という認識違いを減らせます。
制作者の実績利用はどうする?
著作権を制作会社へ譲渡すると、制作者が自分の判断だけで自由に使えるとは限らなくなります。
ただ、制作者としては、
ポートフォリオ
SNS
Webサイト
で実績紹介したいことがあります。
その場合は、
制作会社の事前承諾を得て、実績紹介の目的で利用できる。
などと別に決めます。
クレジットも別に決める
著作権を譲渡しても、
脚本:〇〇
Music by 〇〇
Design by 〇〇
などのクレジットをどうするかは別問題です。
そのため、
表示する
表示しない
本名
芸名・ペンネーム
を決めます。
典型的にはどんな形?
たとえば、
制作者は、本契約に基づき制作した本制作物に関する著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む。)を、制作会社に譲渡する。
さらに、
本条の著作権譲渡の対価は、本契約に定める報酬に含まれる。
制作者は、制作会社および制作会社から正当に本制作物の利用権を取得した第三者に対し、本制作物について著作者人格権を行使しない。
といった内容を組み合わせる方法があります。
実際には、制作物や契約内容に合わせて調整します。
「著作権譲渡」の一文だけで契約書を作らない
制作側としては、最低限、
対象となる制作物
譲渡する権利
第27条・第28条
譲渡時期
譲渡対価
著作者人格権
クレジット
実績利用
を確認します。
結局、契約書にはどう書けばいい?
1.制作物を特定する
何の著作権か分かるようにします。
2.第27条・第28条を確認する
必要なら明記します。
3.いつ譲渡するか決める
契約時、納品時、支払時などです。
4.対価を決める
制作料に含むならそのことを書きます。
5.著作者人格権は別に整理する
譲渡とは別です。
まとめ
契約書に、
著作権を譲渡する。
と書くだけでは、映画制作で必要な内容が十分に整理できないことがあります。
少なくとも、
何の制作物か
どの権利か
第27条・第28条を含むか
いつ譲渡するか
対価はいくらか
著作者人格権をどうするか
を確認します。
特に重要なのは、著作権法第27条・第28条の権利を譲渡するなら、そのことを明記するという点です。
「著作権譲渡」というタイトルや一文だけで安心せず、映画完成後に制作側が本当に必要な権利を取得できる内容になっているかを見ることが大切です。
参考
※映画・動画制作の契約で著作権譲渡条項の内容を確認したい場合は、こちらからお問い合わせください。
